ベクトル解析とか線形代数とか、私は数学に弱いので、徹底的にわかりたいという欲求がある。
だが、その欲求をきちんと満たすという力も努力もたりない。それでベクトル解析についてのテクストを書いてみたいなどという、たいそれた望みをもちながら、それが生きているうちにかないそうにはない。
べクトル解析は数学を専門にしない私たちにとっての数学学習の最後の学習目標でもある。これはいわゆる森ダイアグラムといわれている、ダイアグラムでは大学の共通課程での数学の最後の学習目標は「微分積分学」と『線型代数学」を経て、その集大成としての「ベクトル解析」となっている。
ベクトル解析の目標は「ガウスの定理とストークスの定理」を学ぶことであろう。
しかし、ベクトル解析の学習には、いろいろの学習のレベルがありうる。多くのベクトル代数やベクトル解析の公式をできるだけ簡単に導くというレベルもある。
このレベルではたぶん普通にはテンソル解析の初歩を学んで、Levi-Civitaの記号の縮約をうまく使って多くの公式を導くという、レベルがある。これは物理を学んでテンソル解析を知っている人はこれをベクトル解析に応用すればよい。
私の小著『数学散歩』が、8,000円の高値がついたり、または、その海賊版のpdfが出たりするのは、このことを私の本が書いているために貴重と思う人がいるためであろう。
特に、Levi-Civitaの記号の縮約についてたぶん初めて詳しく書いた本であったろう。いまではもうちょっとわかりやすく書いた本も最近ではあると思うが、そういうことに突っ込んだ、たぶん出版された本のはじめであったろう。
数年前に英語ではそれにあたる本がもっと完璧なものが出ている。
ところが、「ベクトル解析」ではdivやrotの物理的な意味を説明することに焦点をあてたものもあり、これで有名なった書に『物理数学の直観的方法』がある。この本は最近では新書にまでなっている。どこがこの新書を出しているのかはっきりしないが、講談社ブルバックスだったろうか。
もちろん、その前にもよく調べれば、これらの演算の意味を書いた書は皆無ではなかっただろう。だが、『物理数学の直観的方法』の出版後はそのことを意識的に書いた書は多くなった。
ベクトル解析といえば、微分形式でこのベクトル解析を学ぶ形式の書も多い。特にガウスの定理やストークスの定理が、微分積分学の基本定理の一般化した定理だということはやはり微分形式の普及によって知られるようになった。
それについて詳しく言及しているかどうかは問わないとすれば、それについて一言もふれない書は現在では微分形式の書としては不十分といわれてもしかたがなかろう。