【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【ウナギ偽装】実は169通常国会で議論されていた 石川知裕さん

2008年07月24日 11時28分03秒 | 第169通常会(2008年1月~6月)ガソリン国会

 きょうは7月24日は土用の丑の日ですが、今年はずいぶん騒がしいですね。

 これは6月25日、農水省が「一色産ウナギ」が実は中国産ウナギを原料とする食品偽装だとして、日本農業規格(JAS)法違反で、「改善を指示」したからです。同時に兵庫県警などの強制捜査がはじまったので、あわただしいまま1ヶ月経ってしまいました。

 ウナギの産地偽装に関して、警察が捜査したのはこれが初めてですが、実は169通常国会の4月2日の衆院農水委員会で、このことを問題にしていた民主党議員がいたのをご存じでしょうか?ってご存じないのが当然ですが(^^;)

 当ブログにたびたび登場する石川知裕さん。北海道11区比例で、同地は「日本の食糧基地」とも呼ばれる十勝地方です。その辺から「食の偽装」には昨年4月の繰り上げ初当選前から興味を持って活動しているようです。

第169通常国会・衆院農林水産委員会 議事録第7号・平成20年4月2日

宮腰委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の石川知裕でございます。

(略)

 平成十四年二月一日から、かば焼き等ウナギ加工品についてはウナギの原産地表示が義務づけられているが、その年の十月に「伊藤忠フレッシュ」が台湾産を鹿児島産と偽って販売をしていたことが判明しました。

(略)

 昨年、ウナギの産地偽装にかかわって調査した業者は何件でしょうか、立入検査は何回行いましたでしょうか。答弁をお願いしたいと思います。

佐藤政府参考人(農水省の佐藤正典消費・安全局長)

 御説明を申し上げます。

 昨年八月以来、一連のウナギの産地偽装につきましては、63業者に調査を行いまして、延べ調査回数は162回でございます。

石川委員 調査した業者数は63社、立入検査は162回に上ると今言われましたけれども、今年度の産地偽装に関する調査でも、(略)、ウナギの産地偽装摘発の回数というのは非常に多いんですね。

 (略)ウナギはやはり突出して産地偽装が多いと思いませんでしょうか。局長、どうでしょうか。

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。委員御指摘のように、(略)ウナギの関係につきましては、件数としてかなり多いというふうに感じております。

 (略)

石川委員 摘発されたところは、恐らく今も(廃業せず)きちんと商売しているところがほとんどだと思いますよ。

 このJAS法なんですけれども、三段階で、指示、公表、次が命令、公表、そしてそれに従わなかった場合、懲罰、罰金を適用ということになっていますけれども、(略)過去にこのJAS法の適用によって懲罰または罰金を適用された業者というのはおりますでしょうか。

若林国務大臣(農相) ございません。

石川委員 ということは、大臣、もう一度お答えいただきたいんですけれども、この改正によって、本当に取り締まりが強化されて、まじめにやっている方々が風評被害によって苦しまないように業界の体質が改善されるとお考えでしょうか。

若林国務大臣 食品の加工流通業は、委員御承知のとおり、大企業から零細、個人営業まで非常に幅広くございます。とりわけ中小企業、零細、個人事業者というのは非常に多いということがございますので、このJAS法上の表示義務違反などについて、偽装問題の是正はそれぞれの業者のコンプライアンスを徹底する手法をもってしなければなかなか徹底しない。そういう意味で、食品産業全体について、過日、手引書を作成して、業界諸団体を通じまして、零細な事業者にまで手引書に基づいてきちっとした適用を確保してもらうという指導に入ったところでございます。

 (略)中には、事業者の企業上の死命を制するような打撃を受けた結果、事業廃止をせざるを得ないというようなものもかなり出てきているわけであります。

 しかしながら、繰り返し悪質な事業者が野放しになっているのではないかということでございます。

 そこで、昨年の十一月の六日に、警察庁と農林省との間で食品にかかわる偽装表示事案対策について連携を強化するということを申し合わせをいたしたところでございまして、(略)警察庁の方と十分連携をとって厳しく対処してまいりたい、このように考えております。

石川委員 次に、警察庁の方にお尋ねをします。
 (略)
 警察の方で、昨年、ウナギに限定でいいですけれども、例えばウナギの違反で摘発したということはありましたでしょうか。

井上政府参考人(井上美昭・警察庁長官官房審議官

 昨年から現在まで食品の偽装表示に係る事案は40件、21人を検挙しておりますが、ウナギに関する偽装事件の検挙はございません

石川委員 去年、162回も立入検査をしている、63業者に調査が入っている。これは、やはり(農水省と警察の)連携がまだちょっと足りないんじゃないかと私は思います。(略)

 去年、大臣の前任の遠藤(武彦)大臣が補助金の不正受給にかかわる件で辞任をされました。この補助金の不正受給、本当に、農林水産行政のお金を無駄に使うことは許されないのでありまして、きちんとこれを厳しく追及していかなければいけないところでありますけれども。

 農林水産省の「強い水産業づくり交付金」が、17年度、18年度にわたり、熊本県下益城郡富合町にある「緑川養殖センター」の建設に充てられました。この緑川養殖センターは、これまでばらばらに行われていた県内の養鰻場(ようまんじょう)を1カ所に集約し、大量生産を行い、活性化させていくという目的でつくられました。これは資料の八ページ、九ページ。これは農水省の方から、このセンターはこういうセンターですよということで去年いただいた資料であります。

 まず、熊本県内のウナギ養殖業者ら11名が集まって緑川養殖漁業生産組合を立ち上げて、ここが同予算の中より平成17年度6、666万円、18年度3、035万円、合計すると1億円の補助を受けておりますけれども、これは農水省として事業目的に沿ってきちんと今も運営されているとお考えかどうか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

若林国務大臣

 (略)

 御指摘がありました緑川養殖センターの施設につきましては、熊本県によれば、この養鰻漁業協同組合が事業主体となりまして、ウナギの生産の増加や価格の向上を目標としてその組合の組合員が利用するというものでありまして、17年から18年の2カ年で施設の整備が終わったというふうに承知いたしております。このような趣旨、目的に従って現在施設の運営がなされていると熊本県からは報告を受けておりますが、この緑川養殖センターを利用している11人の中には建設会社の役員などもおられまして、それらの人たちが養殖業をやっていないのではないかというような御指摘もあったようでございますが、それらの方々は現在は漁協に加入をいたしまして、漁協の組合員として緑川養殖センターを利用しているというふうに聞いております。

石川委員 (略)この緑川養殖漁業組合の名簿を熊本県から取り寄せたところ、今大臣もお話しありました、脱退者を除く11名のうち4人は企業役員です。他の7人も建設業やミカン農家。養鰻業者と言える方々は極めて少ないんです、1人と言ってもいいぐらいですね、これは。

 そうすると、これはもともと熊本県内の養鰻業者を1カ所に集めて効率的にという目的で補助金の申請を行って交付になったわけですね。しかし、実態は、養殖センターは鹿児島県から養鰻経営者を呼んで所長として管理させているのが実態です。四人の役員の勤め先は、ある企業グループの会社群です。これはヨーマングループといいまして、代表は熊本県議会議長の村上寅美さんという方です。自民党の県の政調会長も務められた方で、熊本県では大変な実力者。一昨年の総裁選では、安倍総裁誕生に向けて熊本県の票をまとめた立て役者なんてどこかの新聞に載っていましたけれども。

 ただ、この緑川養殖センターでつくられたウナギは加工会社ヨーマンに全量を出荷されることになっています。緑川養殖センターに農林水産省と熊本県からそれぞれ補助金が行って、緑川養殖センターでつくられたウナギは全量ヨーマングループが買い取っているということになっております。(略)


[石川委員がパネルで指摘した何とも複雑なカネ(税金=補助金)の流れ]

 しかし、ヨーマングループの構図を見ますと、「九州生鮮」という会社が、グループの一社でありますけれども、昨年、偽装事件が発覚をいたしました。昨年12月25日に熊本県が厳重注意をいたしました。これは単なる業者間の取引の偽装事件にとどまらないで、一連の流れの中で偽装事件が起きたわけであります。特に、緑川養殖センターというところに国の補助金、県の補助金が行っている。その養殖センターからヨーマンに、すべてヨーマンが買い取っている。ですから、これは考えようによっては、自分の会社に入れるウナギを公金を使ってつくらせている構図も浮かび上がってくるわけであります。

 会計検査院にお尋ねをしたいんですけれども、会計検査院は、一連の、こういう問題が今少しずつ少しずつ起きてきているわけですけれども、この熊本県の緑川養殖センターに調査に入ったということはありますでしょうか。

鵜飼会計検査院当局者(会計検査院の鵜飼誠・第四局長)

 会計検査院といたしましては、現在検査の途中でございまして、個別の検査についての御質問に対しましてはお答えを差し控えさせていただいているところですが、ただいまの先生の御議論を十分念頭に置いてまた検査を実施してまいりたいと考えております。

石川委員 では、通常の検査で熊本県にはことし入りましたでしょうか。

宮腰光寛委員長 もう既に民主党の持ち時間が終わっております。

石川委員 わかりました。最後にこれだけで結構です。

鵜飼会計検査院当局者 この緑川養殖センターに対しましては、先生今お話しのとおり、17年度、18年度で補助金が、交付金が交付されておりますので、検査には入っております。

石川委員 時間が過ぎて申しわけありませんでした。

 最後に、大臣、これは資料の途中でつけているんですけれども、去年、「補助事業等の厳正かつ効率的な実施について」というのを通達されたと思います。これをもとに、まじめに頑張っている業者さんが風評被害等で泣くような社会ではいけないので、これはぜひ正していただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

(以上議事録より抜粋引用)

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