【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

7月参院選で民主党過半数→9月代表選無投票の流れを

2010年06月04日 23時44分43秒 | 第22回参院選(2010年7月11日)反省の夏
 毎年の風物詩となった感がある首相交代劇。民主党もホテルに選対を設けて、赤坂で夜の会合と、自民党時代とあまり変わらないようなイメージになってきて、残念な気がします。

 菅内閣の正式な発足は、皇居での認証式があるのが6月8日(火)ということになります。

 以前、新潟県庁で金曜日に知事が花束をもらって退庁式。次の月曜日に新知事が登庁式をするという、その合間の週末に中越地震が起きたことがありますから、鳩山内閣の仕事はまだ続きます。

 菅直人さんの代表としての記者会見は「政調復活と閣僚兼務の検討」など、良い提案んがありましたが、全体的には、具体論が少ない感じがしました。

 通常国会は延長され、第22回参院選は、7月11日ではなく、7月25日とかその辺になりそうで、なかなか落ち着いた国政が担保されないような印象があります。

 また菅代表の任期は、9月末日まで。民主党の規約では、その前に代表選をしないといけないので、9月中に代表選があるということになります。

 民主党は既に100人以上の公認候補を立てていますから、その半分が当選すると、参院での民主党単独過半数が可能ということになってきます。

 野党時代なら、代表選にいろいろな人が出てくるのは党の活性化になるでしょうが、現時点では代表選とはすなわち首相選挙です。首相になる実績が現時点ではまだない候補を擁立してくる議員たちには、政権与党としての自覚がないのでしょう。というか、政治にかける志が根本的にずれているのかもしれない。で、その人たちの崩れ方というのは、すごいですね。

 参院選で民主党をそこそこ勝たせ、菅首相が9月無投票再選という流れを作っていくことが、政権運営の安定につなげる国民の知恵と言えるかもしれません。もちろん、私たち国民が判断するのは1ヶ月以上先となります。が、そろそろ腰を落ち着けた官邸・行政を見たい気がします。

 参院選が終わったら、もう税制改正論議も、来年度予算編成もあっという間です。

岡田外相が不出馬の理由を語る

2010年06月04日 15時59分48秒 | 岡田克也、旅の途中
[画像]岡田克也外相の記者会見=2010年6月4日、ニコニコ動画の画面から

 岡田克也外相の記者会見が4日午後(首班指名後)、開かれました。

 この中で、ニコニコ動画の視聴者からの質問が代読され、「記者会見のオープン化や、その後の記者会見を見ていて、総理大臣には岡田さんがいいと思っていました。できれば出馬してほしかったのですが、なぜ今回の代表選に自ら出馬しなかったのですか?」という質問が出ました。

 「新しい政治をやっていこうというなかで、(民主党の)中で候補者が何人も出るというのは望ましくない」、「菅直人さんが出るという決断をしてくれるのなら、サポートしようと前から決めていたところです」と述べました。

 そのうえで、「外務大臣を8ヶ月やってきて、まあ、やっぱり自分自身いろんな経験をしたい、と。いうふうに思いました。やはり閣僚としての蓄積が何年かあって、初めて総理大臣としてのリーダーシップが発揮できる、のではないかと実感したところであります」

 「それと、外務大臣忙しくて、外交以外のことについて、しばらく関心が行っていなかったというのもあります」と語りました。

 岡田さんは2004年に代表に就任する時、「まだ総理大臣になる準備が出来ていない」として固辞したとされています。しかし、2009年5月には、「民主党の代表になり、(政見交代して)ニッポンのリーダーになる」と初めて公の場で発言していました。

 しかし、岡田さんは与党経験は当選1回生(自民党)、当選2回生(新生党)の4年間だけで、政務三役の経験もありませんでした。

 昨年9月16日に初入閣し、実際に内閣の一員として、外務省のトップとして仕事をする中で、自分自身の中にある「宰相の器」としてのハードルが高くなったのかもしれません。また、外務省の外でも、藤井裕久財務大臣が辞任したり、官邸内の情報伝達体制が滞ったりすることがありました。

 商家の次男坊の岡田さんは、数年後には、また数年修行したいというかもしれません。岡田さんののんびりさと、民主党政権の長さと、そして、ニッポンの「待ったなし」。この3つが融合する日まで、まだまだ、岡田克也の旅(人生)は続きます。

菅直人さんを内閣総理大臣に指名

2010年06月04日 14時57分26秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導

【衆参本会議 2010-6-4】

 鳩山内閣総辞職にともなう、首班指名選挙が行われました。

 衆議院では、

 投票総数 477票
 菅直人   313票 
 谷垣禎一 116票
 山口那津男 21票
 志位和夫   9票
 福島瑞穂   7票
 渡辺喜実   5票
 平沼赳夫   5票
 舛添要一   1票

 で、菅直人さんが内閣総理大臣に選ばれました。

 参議院では、

 投票総数 237票

 菅直人 123票
 谷垣禎一 71票
 山口奈津男 21票
 志位和夫   7票
 福島瑞穂   6票
 舛添要一   6票
 平沼赳夫   2票
 渡辺喜実   1票

 で、「菅直人さんを内閣総理大臣に指名することに決まりました」と江田五月議長が宣言しました。

 なお、NHKによると、官房長官には仙谷由人さんが起用されるようです。 

 菅直人さんは、東証1部上場企業の「セントラル硝子」の社長・会長をサラリーマンとして務めた父を持ち、主な生育地は山口県。出生地・本籍地は別として、主な生育地が東京以外の首相は、小泉純一郎さん(神奈川・横須賀)以来4年ぶり。主な生育地が首都圏以外の首相は森喜朗さん(石川県)以来9年ぶりで、二世政治家が幅を利かせてきたことが感じられます。

 逆に菅さんは東京選出(東京18区)です。東京選出の国会議員が首相になるのは、鳩山一郎さん以来55年ぶりになります。東京の選挙区は、選挙地盤が不安定で、国会議事堂内では出世しにくい環境があります。菅さんは初当選までは苦労しましたが、第36回衆院選以来、連続当選10回。郵政選挙では都内で唯一、民主党の小選挙区議席を守りました。

 衆議院要覧(衆議院事務局)によると、

 菅直人さんは、昭和21年(1946年)10月、山口県宇部市生まれ。東京工業大学理学部卒業。弁理士(特許申請の代理をする国家資格)。

 衆議院では、今の言い方で言うと、財務金融、厚生労働、文部科学、沖縄北方、予算、決算行政監視、懲罰、国家基本政策、国土交通などの委員会に所属し、衆議院外務委員長を務めました。

 内閣では、厚生大臣、副総理、国家戦略担当大臣、財務大臣。

 政党では、社民連副書記長、政審(政策審議)会長、新党さきがけ政策調査会長、民主党代表、同代表代行、幹事長、政調会長を務めました。


民主党代表に菅直人さん「民主党予算のオープン化」を公約

2010年06月04日 11時58分54秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導

 民主党代表に菅直人さんが選ばれました。

 有権者数(民主党衆参国会議員)は423人。
 投票総数は、422票。
 無効票が2票で、これはおそらく、横路、江田両議長が白票を投じたのだと推測します。

 そして、有効得票数のうち、

 菅直人さんが291票
 樽床伸二さんが129票で

 菅直人さんが民主党代表に選ばれました。

 この後午後2時から衆院本会議、午後2時半から参院本会議が開かれ、内閣総理大臣に選出される運びです。

 ◇

 菅直人さんは、民主党代表選立候補にあたっての政見(http://www.dpj.or.jp/news/files/seiken_kan.pdf)の中で、「国民に開かれたオープンな党風をつくる」として、「民主党予算の手続きをオープンにするなど、ルールを明確にし、民主的で透明性、公平性の高い運営を行っていきます」と公約しました。

 これ以上の具体策には踏み込んでいませんが、党予算(年間200億円)の執行について、代表(総理)-幹事長-財務委員長が連携して、常任幹事会や所属議員に報告するかたちになるものと思われます。できれば、インターネットを活用した党員・サポーター(と国民)への公開にも踏み込んで欲しいと思います。

 現時点では、例えば1月1日の振り込みは、ナント18ヶ月後の、翌年9月末にならないと国民の目にさらされず、かつ政党なので発注に関する規約がない状態でした。民主党の場合は、95%以上、原資は国民の税金(政党助成金・立法事務費)です。

 仮に菅直人さんが首相となった場合、首相官邸が主な仕事場になるので、しっかりとした幹事長を党本部に置くことが必要です。だれからも信頼される清潔な人格者が要件となるでしょう。

 また、これまで「1年生議員は地元を回れ」が合言葉の小沢執行部に対して、菅さんの政見は、「すばらしい人材を使い切る全員参加の体制を」と訴えました。「地味で目立たない分野で地道に活動してきた多くの議員にもしっかり光のあたる体制をつくる」とし、政調復活を約束しました。

 菅直人さんの推薦人(http://www.dpj.or.jp/news/files/suisennin_kan.pdf)には、

 岡田克也さん、玄葉光一郎さん、中野寛成さん、前原誠司さん、枝野幸男さん、鉢呂吉雄さん、牧野聖修さん、古本伸一郎さんの各衆院議員。参院から小川敏夫さん、郡司彰さん、福山哲郎さん、蓮舫さん、喜納昌吉さんらが名を連ねました。 


菅直人さん、「みんなが参加できる政調復活」を明言

2010年06月04日 11時28分40秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導
 民主党の代表を選ぶ両院議員総会が午前11時から開かれ、樽床伸二候補と、菅直人候補の演説が行われました。

 この中で、菅直人さんは、当選したら、

 「みんなが参加できる民主党にする」として、

 政策調査会(政調)を復活させることを表明しました。

 政調は政権交代後、小沢一郎前幹事長によって廃止されました。田中眞紀子、生方幸夫、城島光力、筒井信隆さんらが復活を小沢前幹事長に要望していましたが、「質問等研究会」「議員政策研究会」など衆参常任委員会・党国対の枠組みでの、窮屈な対応が迫られていました。

 鳩山由紀夫前代表(総理)と小沢一郎前幹事長が役員室(現・幹事長室)の仕事で実力を付けたのに対して、菅直人さん、岡田克也さん、枝野幸男さん、仙谷由人さん、長妻昭さん、海江田万里さん、前原誠司さんらは政調および次の内閣(ネクスト・キャビネットNC)の仕事で実力を付けてきました。

 このため、幹事長室支配から政調中心にした方が、「民主党らしさ」を復活できるという意見があります。

 なお、菅さんの演説中に、自己紹介の中で、野党・社民連議員時代に、「今みなさんも活用されている質問主意書を・・・」という発言がありましたが、民主党小沢国対は、政権交代後、質問主意書を原則、禁じてきました。菅さんは首相官邸・内閣府・財務省での仕事が中心でしたから、質問主意書禁止の件は知らなかったのでしょう。場内の新人議員はどう感じたんでしょうか?

岡田克也さんの実弟の政治部長のチョー厳しいコラム掲載される

2010年06月04日 05時00分00秒 | 岡田克也、旅の途中
 個人的には、岡田克也さんに民主党代表選に出て欲しかったのですが、3日早朝、東京新聞を手に取った時にあきらめました。「後継 菅氏が有力」と1面トップに。

 他紙は岡田さんの出馬に含みを持たせていたんですが、地元・三重県で圧倒的な力を持つ、中日新聞(東京新聞)がここまでハッキリ見出しを立てたら、「岡田不出馬」に関して、何か確証めいたものがあったのでしょう。

 さて、同じ1面。「劣化した政治 修復を」というコラムが載っていました。執筆者は、「政治部長・高田昌也」さん。この人は岡田さんの実弟です。岡田さんのお母さんの実家、孫文が泊まったほどの旧家ですが、後継者がいなく、養子縁組しており、苗字は「高田」です。

 
[写真]岡田屋(現イオン)の御曹司と呼ばれながらも質素堅実に育った岡田3兄弟。

 さて、高田論文ですが、実に激しい論調です。

 抜き書きなので、全体の論調は上の画像で読んでいただきたいのですが、書き出しは、

 「ことしも首相が代わることになった。ふさわしくない人間がその座を去るのは当然と言えば当然のことだが、首相交代が年中行事となると異常事態だ」

 つまり、アニキの上司(鳩山さん)は「首相にふさわしくない」と断言しています。

 そして、「首相たちの劣化」が「政治の劣化」を招いており、その要因として「政党の無責任」を挙げています。

 鳩山さんの普天間発言を批判し、そして、「それ以上に問われなければならないのは、政権党になろうとしていた民主党」が「政党として、国の基本政策を決めてこなかったツケが普天間問題で吹き出し、首相退陣につながったといえる」としました。

 アニキが民主党の代表、政調会長を務めたことなどお構いなしの批判炸裂。ショージキ、私も昌也論文に賛同する部分もあります。

 そして、「政権交代を求めて裏切られた人々の信頼を取り戻す第一歩」として、「現実的な政策を実行すること」を要求したうえで、

 結びの言葉は、

民主党はこれが与えられた最後のチャンスと思わなければならない」。

 岡田さんの凛とした厳しさ。お父さんはあまり3兄弟の教育には熱心ではなかったようですが、中学校でも「岡田屋の御曹司」として若干の近寄りがたさもあったそうです。

 
[写真]左から昌也さん、卓也さん、元也さん、克也さん=『私の履歴書 小売り業の繁栄は平和の象徴』より。

 話は少しそれますが、かつて日本を代表していた小売・流通業の創業者の次男が3日、逮捕されました。プロ野球球団を買収し、ハワイでキャンプをしていた時期もありましたが、今はすべてを失いました。一方、岡田さんの方は、球団買収ではなく、「毎年ブログで今年応援するチームを発表する」のが恒例となっています。同じ小売・流通業の(実質的な)創業者の次男でも違うんですね、人生って。

 流通業とは薄利多売、すなわち、体育館でドミノ倒しをやるような世界です。贅沢なんか許されませんよね。

 岡田さんは3日、菅直人さんから応援要請のあいさつを受けた後、「権力の二重構造は好ましくない。政治とカネをはじめ民主党らしさを取り戻すことを実現してもらいたい。この二つが満たされるという理解の上で菅氏を支持する」条件付きながら支持を表明。その後、支持呼びかけの電話がけをしたようです。

 まあ、岡田さん厳しいですよ、兄弟でこんな風にやりあっているんですから。それは合理的な厳しさ。実力のある人はどんどん登用します。ない人はダメです。岡田さんのために汗をかいた人に報いる心配りがあれば、もう総理なんですがね。

 岡田十年政権めざして、僕も勉強の毎日です。