【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

まさに憲政史に残る議会の子 中野寛成・衆院社会保障と税の一体改革に関する特別委員長の名裁きを振り返る

2012年07月14日 14時28分22秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]中野寛成・衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会委員長、2012年6月5日(火)、衆議院インターネット審議中継から。

(このエントリーの初投稿日時は2012年7月14日)


 まさに憲政史に残る名裁きと言えるでしょう。

 第180通常国会延長第2週の2012年6月26日(火)、野田佳彦内閣が提出し、民主党・自民党・公明党の3党合意(6月15日)により衆院修正した「社会保障と税の一体改革法案(消費増税準備法案、年金の最低保障機能強化法案、厚生年金・共済年金一元化法案、幼稚園・保育園一元化(幼保一体化)する認定子ども園法改正法案)」が衆議院で可決し、参院に送付されました。この特別委員会の審議時間は129時間で、第34通常国会の「日米安全保障条約等特別委員会」が153時間(公聴会、参考人質疑含む)以来、憲政史上2番目に長時間の審議だったそうです。

 安保特別委員会の議事録は「小沢左重喜委員長 休憩前に……(発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能)……。午後十時二十七分」(昭和35年5月19日)で終わっています。打ち切り動議が出された、と本会議で小沢委員長が報告しています。

 一体改革特の議事録は「この際、一言御挨拶申し上げます。去る五月十六日に審査を開始して以来、委員各位には、終始真剣なる議論を重ねていただいた結果、本日、ここに審査を終了いたしました。これもひとえに各党理事、委員を初め関係各位の委員会運営に対する御理解と御協力のたまものであり、ここに深く感謝の意を表します。ありがとうございました。(拍手)本日は、これにて散会いたします。午前十一時四十八分散会」と和やかに終わっています。民自公3党談合などという言葉も飛び交っていますが、むしろ国会があるべき姿に近づきつつある証拠です。

 今後の国会運営において、大きな橋頭堡となったこの委員会を委員長として取り仕切ったのは、議会の子、中野寛成(なかの・かんせい、Kansei Nakano,1940-)。


 私も第45期衆議院における中野寛成議員11期目の作り手になったという自負もありますので、万感の思い。ほぼ9割方審議を聞いていましたので、その名裁きを議事録からご紹介します。 


【憲政史上最長の議題?】

 5月16日(水)の第2回委員会。政府からの趣旨説明(いわゆるお経読み)がありました。一体改革だけに計7法案。そのため、議題は次のようなまさにお経に。
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 これより会議を開きます。内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
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 こんなに長い議題は聞いた事がないので、委員会散会後、委員長に「(この時点では100時間審議と言われていたので)長時間になりますね」とお声がけしたら、「大丈夫だよ、座っているだけだから」。後で振り返って、このベテランの頼もしさが3党実務者が大いに羽ばたく礎になったのです。

 議題は6月26日(火)の最後の第22回委員会では、3党修正協議による衆法提出や閣法の衆院修正によって、ここまで長くなります。
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 これより会議を開きます。内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案及びこれに対する長妻昭君外五名提出の修正案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する長妻昭君外五名提出の修正案、子ども・子育て支援法案及びこれに対する和田隆志君外五名提出の修正案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する和田隆志君外五名提出の修正案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及びこれに対する古本伸一郎君外五名提出の修正案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案及びこれに対する古本伸一郎君外五名提出の修正案並びに長妻昭君外五名提出、社会保障制度改革推進法案及び和田隆志君外五名提出、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案の各案及び各修正案を一括して議題といたします。
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 間違いなく憲政史上の最長の議題でしょう。民社党政審会長として20年前からテレビ討論番組にも出ているので、例えば「年金」という言葉だけでも、いろいろな政治シーンで使ってきています。意外にも、寛成さんが、夢舞台、衆議院第一委員室の委員長席に座ったのは今回が初めてなのですが、終始落ち着いていました。
 

【3党協議キーマンにガツンと】

 野田佳彦総理が「今国会での成立に政治生命を懸ける」といった重要法案なのですが、残念ながら自民党をはじめ各党の党首が立つことはなく、新党きづな代表だけで、逃げ腰があったようです。こういうときは、委員長は公正中立ながら、与党として先制パンチも必要です。3党協議のキーマンでありつづける自民党の石原伸晃幹事長には質問が始まるやいなや、資料が理事会に出していなかったと注意しました。

 テレビ入りの5月21日(月)の審議では、自民党トップバッターの石原幹事長に、
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○中野委員長 この際、石原君に申し上げます。

 資料を総理に直接お渡しになりましたが、今後は理事会を通じて御提出をいただきたいと思います。

○石原(伸)委員 中野委員長の御命令に従わせていただきたいと思います
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 さっそく、伸晃さんも「委員長の御命令に従わせていただきたい」と平身低頭。さらに総理にもハッパをかけました。 この後、最終的に修正協議の社会保障分科会長として活躍した委員の鴨下さんから野田総理への質問に対しては、
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○中野委員長 野田内閣総理大臣、熱意のほとばしる御答弁をお願いいたします。

○野田内閣総理大臣 はい。
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 と総理にも「しっかりやれよ」とボールを投げつけました。

【委員会ノンストップ運営の秘訣】

 
今回特筆すべきは、ここ3年ほどの国会で定着しつつある、ノンストップ審議だったことです。昨年の通常国会での衆院予算委員会がノンストップだったという快挙があり、これはインターネット審議中継の視聴者が大幅に増えたことにより監視が高まり、委員長席に理事があつまっての場内協議がほとんど衆議院委員会でされなくなったからだと思われます。今回も昼の理事会が長引いて、午後の再開が遅れた事もありましたが、自民党の伊吹文明筆頭理事(イブキング)の協力もあり、ノンストップでした。その中で、質問時間通りに議事を進める中野流委員会運営術がありました。この法則は他の委員長にも使えるので、ご紹介します。
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○中野委員長 小宮山厚生労働大臣、中島君の持ち時間が少ないものですから、端的にお答えいただきます。

○小宮山国務大臣 はい。

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○中野委員長 野田内閣総理大臣、一言でお願いします

○野田内閣総理大臣 私どものお師匠さんの松下幸之助さんも、中小零細企業からスタートでした。中小零細企業が希望を持って働ける環境をつくることが日本の元気の源だと思いますし、私も、シティーボーイじゃありません、中小企業の皆さんからお支えをいただいてこれまでやってまいりました。

 したがって、日本再生戦略の柱の中に中小企業対策はしっかり位置づけていきたいというふうに思います。

○逢沢委員 質問を終わります

○中野委員長 これにて逢沢君の質疑は終了いたしました。
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○中野委員長 締めくくりの答弁を総理からお願いします

○野田内閣総理大臣 私どもは、給付つき税額控除が低所得者対策として基本的には有効であるという立場でございます。それの前提として、番号制度等の導入と定着ということです。

 今、給付つき税額控除については否定的な御意見があったというふうに思いますが、これはちょっと、時間があれば逆にお尋ねしたかったんですけれども、自公政権のときも中期プログラムで給付つき税額控除を検討することになっていたと思います。

 この給付つき税額控除の路線なのか複数税率かという議論があると思います。私どもは給付つき税額控除であります。違うお立場で御意見があるならば、そこは大事な低所得者対策だと思いますので、十分議論を深めていきたいというふうに思います。

○中野委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。御苦労さまでした。

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○中野委員長 小宮山厚生労働大臣、時間は過ぎておりますが、どうぞ

○小宮山国務大臣 放課後児童クラブの指導員につきましては、これもずっと、御党の関心のある議員の方とともに、青少年特の筆頭理事同士でそういう話をして、特別の審議を、集中審議をした結果、ガイドラインをつくったんですね。そのガイドラインの中で、児童厚生施設の職員と同等の要件を満たすことが望ましいと、現状でもしています。

 現在、この要件を満たす放課後児童クラブの指導員は、およそ七割なんですね。ですから、今度の新システムの中では、放課後児童クラブの指導員の要件について、国が従うべき基準を定めまして、これに基づいて市町村が条例で基準を定めることにしています。こういうことによって、放課後児童クラブの職員の質を上げていきたいと考えています。

○永岡桂子委員 ありがとうございました。

○中野委員長 これにて永岡さんの質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十八日月曜日午後零時四十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

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○中野委員長 菅原君、時間が経過してしまいました。

○菅原一秀委員 はい。最後に答えてください。

○中野委員長 いや、答弁いただく時間が残念ながらございません。

 これにて菅原君の質疑は終了いたしました。
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 このように、野党議員の最後の発言の一つ前の答弁を指名するときに、「短くお願いします」とやって、最終的に質問時間の中に収めています。身内の与党の大臣を注意する格好にした方が収まりがいい。その一方で長広舌になっていた先輩の野田毅議員には、最後の発言を認めずに「これにて野田君の質疑は終了いたしました。御苦労さまでした」とぴしゃり。菅原さんいは「いや、答弁いただく時間がございません」。野党にも厳しいから、与党議員は当然時間内に収める。小気味の良い質の高い議論の中での129時間だったのです。この辺が当選11回、勤続32年の格であり、けっして付き合いが良いタイプではないけれども、寛成さんの人徳なのです。

【クールビズでフランクな議論を演出】 

 申し合わせにより、委員室では5月以降は上着やネクタイをとっていいことになっています。午前9時からの長時間審議、午後になるとかなり暑く、またお昼休みの後で眠たい時間なので、委員長自らクールビズをすすめましたが、やはり3党協議のキーになる公明党議員の時間の前にさっと。話しやすい雰囲気が3党合意につながったと思います。

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○中野委員長 この際、申し上げます。

 この委員会、理事会の申し合わせにより、上着、ネクタイはフリーということにいたしております。どうしても暑い方はどうぞ。(略)

 次に、竹内譲君。

○竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 きょうは、岡田副総理にも初めて質問させていただきますので、岡田副総理のように上着もとらせていただきまして、腕を組んだり足を組んだり、上から目線と言われないように、フランクに厳しく質問させていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

【身内の1期生に国会の作法を伝授】 

 この委員会では民主党の実力ある1期生が多く起用しました。その中で、党内の議論を反映させるために、差し替えで登場した議員が「私は委員ではない」と言ったところ、国会の作法を伝授しました。

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○近藤和也委員 私は委員ではないんですが、この社会保障と税の一体改革の議論がスムーズに進められてきていることを、与野党の、特に野党の皆様が協力されていらっしゃることは、本当にありがたいというふうに思っています。

○中野委員長 この瞬間は委員でございます、れっきとした。

○近藤(和)委員 はい。私も委員です。済みません、失礼いたしました。
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【総務大臣への答弁はいかが、と仲間へ配慮】 

 5月31日(木)の自民党の大野功統さんの税制論議は、租税学者や税理士にも議事録を読んで欲しい格調高いものでした。その中で、同じ民社協会の仲間である川端達夫総務大臣への地方税に関する質問が少ないので、総務大臣への質問はどうですか、と大野さんに水を向けました。さすがに税制通同士、党を越えて会話が通じるものがあると思いました。
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○中野委員長 総務大臣の答弁は要りませんか。(大野委員「はい、お願いします」と呼ぶ)総務大臣、感想をどうぞ。

○川端国務大臣 税制によって家族のあり方を国の意思として応援していこうというお話含めて、大変、私は、ある種の説得力のあるお話であるというふうに伺いました。

 この前の日曜日に孫が生まれる予定がまだ生まれていないんですが、家族というものを含めて、今おじいさんの話が出ましたので、そのことを含めて、私は本当に、そういう部分では、それぞれに対してお互いに果たす役割というのは、社会、家族のきずなという意味では大変大事である、それはもう同感であります。そして、それを税として国がそういうことで応援するということは、私は、真剣に一生懸命考えるべきで、大きなテーマだというふうに受けとめさせていただきました。

○中野委員長 突然、どうもありがとうございました。

○大野委員 総務大臣から大変すばらしい感想を伺いまして、ありがとうございました
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 このほか、一時休憩中の委員長代理には、3席理事の古本伸一郎さんを委員長席に座らせて議事を代理してもらい、民社協会の次世代のエースにさりげなく経験を積ませました。

【最大のキーマン「イブキング」牽制のために、突然委員長がおわびする】  

 今回の委員会はなんといってもイブキングである。伊吹文明元自民党幹事長・元財務大臣の「イブキング」のあだ名が大きく知られました。今回の法案可決と民主党分裂という歴史的局面の演出者であるイブキングを牽制したのか、突然委員長がお詫びをする場面がありました。

 6月1日(金)の委員会は、午後9時6分に開会しました。6分遅れはこの委員会では珍しいことでした。そして、与党委員2人目の質問から、自民党委員の質問に移るときに突然、中野委員長がお詫びをしました。
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平成二十四年六月一日(金曜日)
 午前九時六分開議(略)

○中野委員長 これにて宮島君の質疑は終了いたしました。

 なお、委員長からおわびを申し上げます。

 現在、開会が七分おくれましたので、お手元の日程の七分おくれで進んでおりますこと、おわびを申し上げます

 続きまして、平井たくや君。

○平井委員 自由民主党の平井たくやです。

 委員の先生方も各大臣も、六十時間にも及ぶこの特別委員会の審議、御苦労さまでございます。

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 この突然の委員長のおわびは、イブキングが暴れて理事会が延びて、委員会が6分遅れてしまったのではないか。そう思い、法案可決後に委員長にうかがったところ、「あれ、たしかあのときは、与党の一人目の質問が延びたんじゃなかったのかな?」と煙に巻かれてしまいました。私はイブキングへの牽制球だったんだと思っています。真相は藪の中ですが、ハッキリとした事実が議事録に残りました。

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平成二十四年六月五日(火曜日)

    午前九時開議
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 委員長おわび発言があった次の委員会は、定刻通り午前9時に開会しました。

【やっぱりカンセイはこうでなくっちゃ】 

 6月5日(火)です。
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○中野委員長 講義の間に答弁をいただく時間がなくなりましたので、終わらせていただきます。

 これにて篠原君の質疑は終了いたしました。

 次に、早川久美子さん。

○早川委員 おはようございます。民主党の早川久美子でございます。(略)

○早川委員 ありがとうございます。

 まだまだ日本の女性起業家の育成というのは少ないんですけれども、ある意味そこに伸び代があるということなので、しっかりと御支援をいただきたいと思います。

(略)

○中野委員長 これにて早川さんの質疑は終了いたしました。

 女性への助成措置、頑張ってください。

 次に、赤澤亮正君。

○赤澤委員 委員長におかれましては、女性だけでなく野党にも優しくしていただきたいなと思います。

 自由民主党の赤澤亮正でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

(略)
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 カンセイさん、ダジャレじゃ憲政史に残る議事録が台無しです!

 とはいえ、「女性への助成」というダジャレに対して、自民党2期生の赤沢さんがとっさに「女性だけでなく野党にも優しくして」と切り返す。新聞社デスクの間では、「中野カンセイといえば、(野党第3党の)民社党のダジャレ」ということで低く見る傾向があり、それが与党の若手にも伝播している面があり、まことにけしからんことです。でも同じチルドレンでも、小泉チルドレンで小選挙区で勝ち残り、野党でやっている赤澤さんがとっさに切り返せるところをみると、赤澤さんは東京っ子ですが、国会というヒラバが格段に面白くなってきます。議事録には残っていませんが、カンセイさんが昼休みが終わる前にイブキングに「僕は(委員長で公正中立な立場なので)与党でも野党でもない、ゆとうですよ」とどこかで聞いたようなダジャレを言っているのがインターネット中継に載っていました。カンセイさん「あ、このマイク、(インターネット中継に)流れているかも知れないから気を付けて」と言っていました。しかし、こうやって野党自民党2期生の切り返しで、議事録に残ってしまった唯一の場面が「救われた」と考えます。


 さて、委員会初日には「座っているだけだよ」と言っていたカンセイさん。本会議での採決を終えて、異常な雰囲気の国会。私も大変ショックだったんですが、委員長の下を訪れました。すでに岡田克也副総理・一体改革担当大臣が訪れて、お礼に来ていたようでした。その後、一緒にテレビを見ながら聞きました。「当たり前のことを当たり前にやっただけだよ。自分ではなんとも思っていないよ」。

 今国会の冒頭に、一体改革法案をどうすれば通せるのかということを先生にうかがった際には「衆院段階で法案を修正して、参議院に送るんだろ。(今の衆参ねじれで)他に方法がある?決まっているだろ」と叱られてしまった。そのときは「今国対じゃないから知らないけど」ということでしたが、やはり余人を持って代え難く、委員長にされてしまいました。この間、議会を優先し、民主党常任幹事会議長として常任幹事会を欠席してまで、第1委員室や委員長室に張り付きました。衆議院議員である以上、それは当然のことであり、どのような立場であろうと党の会議より優先することは当然も当然ですが、民主党国会議員の半分はそのことをまったく分かっていません。だからうまくいかないんです。

【中野正剛を超えた中野寛成】

 ホームページの記述によると、中野寛成さんの名前は中野正剛(なかの・せいごう)衆議院議員(1886-1943)にちなんでいるんだそうです。たしかにカンセイさんが生まれた時期は中野正剛が新党「結成で国民的人気が高かった時期と一致しています。中野正剛と小学校からの同級生である緒方竹虎は、『人間中野正剛』で「中野君はどこまでも多情多感」「この点から理性的で常識主義な議会政治は彼の好みに投じなかったかも知れない」(24ページ)、「中野君を批評する者は、よく彼は苦労が足りなかったという」(38ページ)と回想しています。

 「大丈夫だよ、座っているだけだから」「当たり前のことを当たり前にやっただけだよ」というベテランの存在。これだけ大きな法案を仕上げた特別委員長として、国難の中、仕事をやり遂げた。そのやり遂げたという一事において、「中野正剛超え」は間違いないと私は思います。

【14回の起立採決で明日への責任】

 それでは、最後にこれも憲政史に残る14回の採決、2012年6月26日(火)の採決の場面の議事録を転記して、この素晴らしい委員会を思い起こしたいと思います。
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中野委員長 これより採決に入ります。

 初めに、内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、長妻昭君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、長妻昭君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、長妻昭君外五名提出、社会保障制度改革推進法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、子ども・子育て支援法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、和田隆志君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、和田隆志君外五名提出、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、和田隆志君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 したがって、原案は、本修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、古本伸一郎君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○中野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、古本伸一郎君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中野委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。