[写真]野田総理、岡田副総理。
首相官邸前では、毎週金曜日夕方に「再稼働反対、ドンドンドドドン」という抗議運動があります。関西電力の大飯原子力発電所の再起動に反対するデモです。昔の革マル派などの組織とは違い、実行委員会をのぞけば、明らかに参加者は個人で、初老の夫婦や、若者など、おそらく1万人以上が首相官邸前で「ドンドンドドドン」とやっています。私がこの抗議運動(デモ)を意識するようになったのは、6月8日(金)で、衆院議員会館でいろいろと話して、総理の午後6時からの記者会見をラジオで聞きながら帰宅の途につくと、総理の演説の音声が外から聞こえてきます。ハンドマイクで総理の演説を拡声し、ひと言ひと言につっこみを入れる参加者。その総理の演説の声が、第2次世界大戦開戦にあたり国民の結集を呼びかけるジョージ6世の演説と重なる面があり、何とも言えぬ重たい気持ちになりました。
岡田克也副総理は、2012年7月13日の定例記者会見でデモに機動隊が動員されていることについて「機動隊の皆さんは、何か事故が起こらないように、けが人が出たりとか、そういうことが起こらないように御努力いただいているというふうに思います。それは当然必要なことであろうというふうに思います」として、若き機動隊員の諸君に経緯を払いました。すばらしい警備ぶりだと思います。例えば、デモ参加者に「こんにちは」と声をかける係。あるいは、上司というよりも金曜デモ警備の先輩が後輩に教えるときに、「首相官邸とか内閣府とかから職員が出てくるけど、地下鉄の駅に行きたいっていう奴が必ずいるから通しちゃって」と初めてのデモ警備に緊張感を隠しきれない警察官。日本の秩序を守るすばらしい若者たちです。
岡田さんは言葉を続けて、「それから、ここでデモに加わる皆さんの気持ちもそれはそれでよく分かりますので、いろんな自らの考え方を何らかの形で表現したいと思っておられる方が国会議事堂周辺、あるいは官邸周辺にお集まりになるということは、これは一つの意思表示ですから、それについて私がいいとか、悪いとかということではないと思います。ある意味では、それは当然の権利だというふうに思います。」と述べ、デモ参加者の気持ちも分かるし、意思表示は当然だとの考えを示しました。
羽田内閣総辞職による下野から18年、新進党結党から17年。やっと昨年9月から、新進党三羽がらす(野田佳彦首相、藤村修官房長官、今年1月から岡田克也副総理)が官邸をやるようになったのに、この苦難の連続はなんでしょう。一体改革の採決を翌週に控えた6月22日(金)には、副総理会見で「宮崎さんいい質問しましたね」とお世辞を言ってもらった後に、「火の用心」のために赤坂議員宿舎に向かい、その途中で首相官邸前を通りました。このとき、「原子力の火を消すな」というプラカードを見て、デモに反対している人をみました。そして、さらにデモ隊は「笑点のテーマ」を流して反対派を妨害。何なんだこれは。しかし、新進党勢が官邸をやっている中での、この我が国の歴史に例を見ない事象に、その後も、「再稼働反対ドンドンドドドオン」という太鼓の音が耳から離れることはありませんでした。
しかし、1年前ならいざしらず、今の私は「こんなに大変なら、官邸は自民党さんにやってもらった方がいいかな」という気がまったくしなくなりましたね。官邸を背負うことの重荷はずっしり感じますが、投げ出して自民党にやってもらおうという気持ちは持たなくなった。それだけでも、私の中での政権交代の成果です。いずれにしろ、1年で選挙ですから。
政権を担うという重荷を分かち合いながら前に進む。それが新進党結党の志です。第1次民主党結党メンバーの中には、後ろから鉄砲を撃つような奴もいますが、所詮は「与党でもない野党でもないゆ党」です。もちろん第1次民主党のメンバーにも、安住淳財務相、玄葉光一郎外相、枝野幸男経産相、古川元久経財相ら優れたメンバーもいます。
「日本の海が荒れている・・・」新進党結党大会冒頭の詩人の句です。どんな苦境でも、野田官邸の正しさは歴史が評価します。前に進むしかありません。新進党結党の志と団結心があれば、どんな苦難でも乗り越えられます。
最後に、総理の大飯原発再稼働についての記者会見をつけますので、歴史法廷の判断材料にしていほしいと考えます。
[野田佳彦首相2012年6月8日(金)記者会見(首相官邸ホームページ)から引用はじめ]
【野田総理冒頭発言】
本日は大飯発電所3、4号機の再起動の問題につきまして、国民の皆様に私自身の考えを直接お話をさせていただきたいと思います。
4月から私を含む4大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を得るべく取り組んでまいりました。夏場の電力需要のピークが近づき、結論を出さなければならない時期が迫りつつあります。国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります。それは国として果たさなければならない最大の責務であると信じています。
その具体的に意味するところは2つあります。国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。
これまで1年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります。勿論、安全基準にこれで絶対というものはございません。最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています。
その上で、原子力安全への国民の信頼回復のためには、新たな体制を一刻も早く発足させ、規制を刷新しなければなりません。速やかに関連法案の成案を得て、実施に移せるよう、国会での議論が進展することを強く期待をしています。
こうした意味では、実質的に安全は確保されているものの、政府の安全判断の基準は暫定的なものであり、新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していくこととなります。その間、専門職員を要する福井県にも御協力を仰ぎ、国の一元的な責任の下で、特別な監視体制を構築いたします。これにより、さきの事故で問題となった指揮命令系統を明確化し、万が一の際にも私自身の指揮の下、政府と関西電力双方が現場で的確な判断ができる責任者を配置いたします。
なお、大飯発電所3、4号機以外の再起動については、大飯同様に引き続き丁寧に個別に安全性を判断してまいります。
国民生活を守ることの第2の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません。
数%程度の節電であれば、みんなの努力で何とかできるかもしれません。しかし、関西での15%もの需給ギャップは、昨年の東日本でも体験しなかった水準であり、現実的には極めて厳しいハードルだと思います。
仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます。仕事が成り立たなくなってしまう人もいます。働く場がなくなってしまう人もいます。東日本の方々は震災直後の日々を鮮明に覚えておられると思います。計画停電がなされ得るという事態になれば、それが実際に行われるか否かにかかわらず、日常生活や経済活動は大きく混乱をしてしまいます。
そうした事態を回避するために最善を尽くさなければなりません。夏場の短期的な電力需給の問題だけではありません。化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます。そのため、夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません。
更に我が国は石油資源の7割を中東に頼っています。仮に中東からの輸入に支障が生じる事態が起これば、かつての石油ショックのような痛みも覚悟しなければなりません。国の重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも、原発は重要な電源であります。
そして、私たちは大都市における豊かで人間らしい暮らしを電力供給地に頼って実現をしてまいりました。関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町であります。これら立地自治体はこれまで40年以上にわたり原子力発電と向き合い、電力消費地に電力の供給を続けてこられました。私たちは立地自治体への敬意と感謝の念を新たにしなければなりません。
以上を申し上げた上で、私の考えを総括的に申し上げたいと思います。国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきというのが私の判断であります。
その上で、特に立地自治体の御理解を改めてお願いを申し上げたいと思います。御理解をいただいたところで再起動のプロセスを進めてまいりたいと思います。
福島で避難を余儀なくされている皆さん、福島に生きる子どもたち。そして、不安を感じる母親の皆さん。東電福島原発の事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが原発の再起動に複雑な気持ちを持たれていることは、よく、よく理解できます。しかし、私は国政を預かるものとして、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできません。
一方、直面している現実の再起動の問題とは別に、3月11日の原発事故を受け、政権として、中長期のエネルギー政策について、原発への依存度を可能な限り減らす方向で検討を行ってまいりました。この間、再生可能エネルギーの拡大や省エネの普及にも全力を挙げてまいりました。
これは国の行く末を左右する大きな課題であります。社会の安全・安心の確保、エネルギー安全保障、産業や雇用への影響、地球温暖化問題への対応、経済成長の促進といった視点を持って、政府として選択肢を示し、国民の皆様との議論の中で、8月をめどに決めていきたいと考えております。国論を二分している状況で1つの結論を出す。これはまさに私の責任であります。
再起動させないことによって、生活の安心が脅かされることがあってはならないと思います。国民の生活を守るための今回の判断に、何とぞ御理解をいただきますようにお願いを申し上げます。
また、原子力に関する安全性を確保し、それを更に高めていく努力をどこまでも不断に追及していくことは、重ねてお約束を申し上げたいと思います。
私からは以上でございます。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、質疑に移ります。
指名された方は、まず所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
それでは、どうぞ。
(記者)
読売新聞の望月です。
総理、今週は4日に引き続いて2度目の会見となり、御苦労様です。
福井県知事の要望に応じられて、今回の会見に至られたのだと思いますけれども、先ほどの会見で、要するに夏場の電力需要を乗り切るためだけでなく、日本の経済、エネルギー安全保障上も原子力が重要な電源であるという認識をお示しになられたのだと思いますが、そうしますと、丁寧に御検討されるとおっしゃいましたが、大飯以降の他の原発の再稼働のスケジュール感について、どのようにお考えになられるのか。
あるいは今、おっしゃられましたが、中長期のエネルギーの割合を政権としてどのように考えられるのか。8月をめどにまとめられるとおっしゃいましたけれども、今現在、2030年の原子力の割合などが議論になっていて、総理の今のお話ですと、これはゼロにはできないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。また、その場合、40年の廃炉ルールなどには齟齬が出てこないのかも含めて教えていただければと思います。
(野田総理)
最初は会見の意義みたいなところだと思いますけれども、福井県知事のみならず、福井県民の思いを重く受け止めつつ、今日は国民の生活を守るという観点から、再起動は必要であるという私の考え方を基本的に御説明したいという意味での会見をさせていただきました。
再起動の安全性、必要性については、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、当面の夏場の需給だけの問題ではなくて、これはエネルギー安全保障であるとか、あるいは国民生活や経済への影響、特に国民生活、経済への影響で言うならば、これは電力価格が高騰することによって国民の負担が増えてはいけないんですが、そういうことを抑制しなければいけない等々の観点、日本の経済、社会全体の安定ということを考えての判断であるということであります。
大飯以外のスケジュールのお話でございますけれども、これは大飯と同様に、スケジュールありきではいかなる再起動も考え得ません。引き続き、丁寧に個別に安全性を判断していくというプロセスをたどっていきたいと思います。
最後に、中長期のエネルギーの割合の話が出ましたけれども、ちょうど今日のエネルギー・環境会議が行われまして、その選択肢についての中間整理を行わせていただきました。こうした中間整理なども踏まえまして、国民的な議論を行いながら、御指摘があったとおり、8月をめどに国民が安心できるエネルギーの構成、ベストミックスというものを打ち出していきたいと考えております。
(内閣広報官)
それでは、次の方どうぞ。
佐藤さん、どうぞ。
(記者)
日本テレビの佐藤です。
原発も非常に重要ですけれども、消費税関連の一体改革、関連法案も大詰めですので、こちらをお伺いしたいのですが、今日、修正協議が始まり、15日までに合意を目指すということで、総理の決意を改めてお伺いしたいというのが1点。
自民党の石原幹事長は、社会保障面の最低保障年金については、国民会議を設置して、そこで議論をしてもよいとおっしゃっております。この国民会議についての総理の御見解をお伺いしたいと思います。
最後にもう一点ですが、法案を成立させるには会期の延長も避けられないと思いますが、総理の頭の中にある会期の延長幅、これは9月の代表選挙を超えるような大幅な会期延長も想定されているのかどうか。その見解を伺いたいと思います。
(野田総理)
まず、今日から本格的な修正協議がスタートをいたしました。この協議については、昨年からの課題でありまして御要請をしてまいりましたけれども、自民党、公明党、やはり国民のために結論を出さなければいけない重要な課題だと御認識をいただき、こうした協議に応じていただいたことに感謝を申し上げたいと思いますし、加えて、この改革の方向について御賛同いただいているその他の会派の皆様にも感謝を申し上げたいと思います。
これは、先送りのできない課題であります。したがいまして、今、会期は6月21日まででございますので、それまでに当然のことながらG20に私は行かせていただきたいと思います。この世界経済が不透明な状況の中で、日本としての立場は明確に打ち出さなければいけません。
そういうことを考えると今日も協議の場で御議論があったと思いますけれども、15日までの間に決着をつけるべく、最大限の努力をされるということでございますので、そうしたスケジュール感の中で真摯な議論が行われること、そして成案を得ることを強く期待したいと思います。
そこで、石原幹事長の話もございましたけれども、要は法案としては7本出しています。その7本について協議に基づいて私どもは成立をさせたいと思います。その上で中長期に関わる問題をどうするかという議論も当然あると思いますが、その道筋をどうつくり出すかということは、先ほど御提起のあった国民会議の問題もそこに含まれると思いますけれども、そういうものも含めて結論が得られるような議論を期待したいと思います。
会期の問題は、これはこの一体改革だけではなくて政治改革の問題とか、この6月21日までの間に、何としてもその他の法案も成立を目指さなければいけないものがたくさんございます。まずはそこでできるだけ多く御提出をしている法案であるとか、あるいは結論を出さなければいけないテーマについて結論を出すことに今はベストを尽くす段階であって、その後の幅の問題を現段階で申し上げる段階ではないと思います。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは、浜田さん、どうぞ。
(記者)
ロイター通信の浜田と申します。
長期的な将来の脱原発依存を実現する上で、原発事業の体制は従来どおり国策民営が望ましいのか、電力会社から原発を切り離して国が事業に関与する体制に移行すべきなのか、原発の事業体制の見直しに関する議論の必要性、検討の必要性について総理のお考えをお聞かせください。
(野田総理)
事業体制について、現時点で今政府として何らかの方向性を持っているわけではございません。その事業体制を考える前に、その前にやるべきことがあると思っております。それが先ほど来御議論というか御指摘もいただいておりますけれども、8月をめどにまとめようとする、まさに中長期の国民が安心できるエネルギー政策の在り方、そこをまず決めていくことが大事ではないかと思いますし、これは国民各層のさまざまな御議論もいただきながらまとめていきたいというふうに思います。
(内閣広報官)
それでは、時間が来ておりますので、最後の質問とさせていただきます。
それでは、七尾さん、どうぞ。
(記者)
ニコニコの七尾です。よろしくお願いします。
本日、先ほど行われた国会事故調で福島第一原発事故の際の政府対応の問題点が幾つか改めて浮き彫りになりました。そこで御質問なのですが、原子力規制組織の法案に関わります、今、国会で審議しており議論が進んでいる中で、原発事故の際の総理の指示権の在り方や必要性について改めてお聞かせください。
(野田総理)
政府事故調、そして、今、御指摘いただいた国会事故調、そういうところから出てくる御指摘というものを真摯に受け止めて、二度と去年のような事故を起こさないための対策を講じていくということが何よりも基本だと思いますし、そこから出てくる御意見は真摯に受け止めたいと思います。
その上で、今、与野党間で議論をしている新たな規制の組織の話の中で、総理大臣の権限のところ、今、議論をやっている最中だと思います。かなり煮詰まってきているのではないかという報告を受けております。ここで折り合うことができれば1つの合意形成が大きく前進できるのではないかと思いますので、その動きを今注視しているところでございます。
(内閣広報官)
それでは、時間がまいりましたので、これで総理会見を終わります。どうもありがとうございました。
(野田総理)
どうもありがとうございました。
[引用おわり]
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