宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民主党幹事長、連合中執で党分裂を謝罪 わが党は組織化で二大政党化を急げ!

2012年07月23日 10時06分34秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

[写真]ならず者の造反・離党による民主党分裂に唇をかみしめる輿石東幹事長、2012年7月17日、民主党本部、筆者撮影。

 報道によると、民主党幹事長の輿石東さんは2012年7月19日(木)、連合会館(6月に総評会館から改称)で開かれた連合の中央執行委員会(中執)に出席し、党分裂を謝罪しました。古賀伸明会長は「離党者が相次いでいることはきわめて遺憾だ。連合の組合員の支援に背を向ける行為だ」と苦言を呈しました。言うまでもなく、三位一体改革以降、教職員の給与の3分の1が国庫負担であり、地方公務員の給与(義務的経費)の多くが地方交付税に依存する現状で、日教組や自治労の働く仲間の給与の安定化のためにも、消費税増税による健全財政は不可欠。日教組、自治労という2つの産別にとっても極めて大きな消費税増税という課題のためには、連合傘下の他の産別も協力するという「連合収斂」という考え方のためには、民主党は一致団結して可決させなければいけないのに、逆に遠心分離器にかけられ大量の造反者・離党者を出してしまいました。連合収斂に参加した、旧同盟系産別にとっては、8月1日に友愛会創立100周年という記念すべきときだったのに、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 
 これは、第45回衆院選の結果を伝える民主党機関紙プレス民主の第216号です。ご覧のように、「308議席」ということで、私は小選挙区の数である300議席を超えた瞬間に与党は壊れるという考え方を持っているだけに嫌な感じがしました。そして、機関紙として1人選んだHEROは福田衣里子さん(当時28)でしたが、ご存じの通り、3度目の通常国会で許されない裏切りをしました。



ところで、この「プレス民主」の2面に載った鳩山由紀夫代表(直後に総理)の挨拶文が大変奇妙なことに気付きました。連合へのお礼がひと言もないのです。鳩山氏は「民主党の圧倒的な議席をいただきました」「民主党代表として、国民のみなさんに心から感謝申し上げます」「本日はまさに歴史的な一日」としながら、連合へのお礼がひと言もありません。さらには「その意味では、民主党や友党各党はもちろん、自民党、公明党に投票なさった皆さんも、誰かに頼まれたから入れるとといったしがらみの一票ではなく、真剣に日本の将来を考えて一票を投じていただいたのではないかと思います」とし、自民党、公明党投票者をも褒め称えました。いわば、民主党代表自ら、「そのつど支持」を当然のこととし、私たち長年の支持者が一生懸命働きかけて票を集めたことなどまったく念頭にない宇宙人ぶり。彼は衆議院本会議場で、第45回衆院選のことを「無血の平成維新」と演説しました。私は聞いていて変だなと思ったのですが、草稿では「無血の民衆革命」となっており、官房副長官らがひっしに直させたけど、「無血の」だけは残ってしまったようです。天皇家も、連合も、憲法も無視する恥知らず。それが鳩山由紀夫。団塊の世代が全員こうだとは言いませんが、村上春樹さんも含めて団塊の世代にはこういう人が多いような気がします。ぜひ、しっかりと根雪のように政治を鍛える役目を傍観者ではなく当事者としてやってほしい。

 これからは、二大政党の時代です。とくに、今の衆議院と参議院の制度であるうちは、我が国で穏健な多党制は無理です。例えば、参議院での過半数を目指して連立工作をしたら、衆議院で8割の構成になってしまい、野党議員が1人3時間ぐらい質問することになりかねません。事実、昨年の通常国会では自民党の茂木敏充さんが一人で2時間半質問しています。あるいは、参議院では少数ながら、衆議院で3分の2の連立となれば、すべてが再議決で参議院の意味がなくなります。そのためには、わが党は、健全なる保守政党、政権交代可能な二大政党の一つとして、向こう100年間やっていくためには、組織化をすすめるべきだと考えます。

 2010年5月6日、労働党は12年ぶりに下野して、5ヶ月間にわたる党首選をしました。この間、党首代行は、ハーマン副党首が務めました。そして、それまでの投票で毎回1位だった本命のミリバンド前外相を決選投票の一騎打ちで破って、ミリバンド前経産相が当選し、党首(シャドウ首相)になりました。兄弟対決で言うと、日本では岸信介・佐藤栄作をはじめとして、兄が弟に先んじますが、英国労働党は弟に将来をかけました。なぜなら、2015年5月までにある次の総選挙に勝たないと、多くの仲間が死ぬからです。自分たちのために勝てる党首を選ぶ。そうなると、外相を務めた兄よりも、将来性のある弟を決選投票で選ぶ。ダイナミズム。それが二大政党政党制の醍醐味です。



[写真]英国労働党のエド・ミリバンド党首(シャドウ首相)。

 そして、こちらをご覧ください。これは、労働党の協力団体の党首選での投票結果です。


 
 日本では、連合は民主党の外の組織です。しかし、英国労働党は労働組合が結成した政党ですから、当然にして、労働組合は労働党の内部の組織になります。

 協力団体の中には、歴史の教科書に出てくる「フェビアン協会」の名前もあり、6605人が投票権を持っています。港湾荷役労働者団体の「ユナイト・ザ・ユニオン」は105万人が選挙権を持っていますが、党首選の投票率は10%にとどまっています。労働党アイルランド人協会は83票ですが、投票率は一番高い(団結の強い)協力団体です。次に「ユダヤ人労働党運動」も投票率が高いです。
 
 音楽家同盟は2万6957票を持っています、有名人もいるんでしょうか。アジア系黒人少数民族労働党員の会、キリスト教社会主義者運動、労働党学生部、労働党員弁護士会、労働党科学者協議会など多彩な組織があります。こういった組織に党首選の参加者になってもらうことで、労働党が国民の声を吸い上げるパイプを持つことができます。パイプの目詰まりがとれて、保守党よりも吸い上げられるようになったとき、その相対化のなかで、有権者の負託により労働党は政権に復帰し、ミリバンド内閣が誕生するでしょう。2年間の保守党キャメロン内閣では、防衛相が友人を外国出張に連れていき、防衛装備品の輸出に関するビジネスに関係した疑惑が出て辞任に追い込まれています。それは恥ずかしいことではありません。人は誰でも罪を犯すのです。それは与党という状況が防衛相の理性を打ち負かしたのです。

 まかり間違っても、支持者が友人・知人に働きかけることを「しがらみ」と呼ぶ鳩山氏の認識はまったく間違っており、民主の敵です。一人一人がしっかりと日本のために必要な候補者を働きかけると、その都度支持が減り、足腰の強い政権をつくれます。あまり乗り気でないときは、友人・知人は長い付き合いだから分かります。1人あたり10票とってくるか、1人あたり5票にとどまるかどうか、という倍数が、総選挙ごとに民主党が政権をやるのか、自民党が政権をやるのかを決めるのです。

 見て見ぬふりをするのは犯罪です。小沢グループ新党「国民の生活が第一」を倒して、民主党を次の次の次の総選挙までしっかりと政権の選択肢を与えることができる政党にするまで。私たちの二大政党制への取り組みはまだ始まったばかりです。

輿石幹事長 党の分裂を陳謝(NHK NEWS WEB)

民主党の輿石幹事長は、党の最大の支持団体である連合の中央執行委員会に出席し、「国民の生活が第一」の小沢代表らが党を離れたことについて陳謝したうえで、党への継続的な支援を要請しました。

この中で、輿石幹事長は、消費税率引き上げ法案に反対し「国民の生活が第一」の小沢代表らが党を離れた経緯について説明したうえで、「こうした事態を招き、大変申し訳ない。野田総理大臣に代わっておわび申し上げたい」と述べ、陳謝しました。
そのうえで、輿石氏は「党の最大の支持団体である連合の協力と支援を引き続きお願いしたい。生まれ変わったつもりでこの難局を乗り越えたい。民主党にラストチャンスを与えてほしい」と述べ、党への継続的な支援を要請しました。
これに対して、連合の古賀会長は「離党者が相次いでいることはきわめて遺憾だ。連合の組合員の支援に背を向ける行為だ」と苦言を呈したうえで、速やかに党を立て直し政策を前に進めるよう求めました。

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[お知らせおわり] 


暴力団対策法改正案が衆院内閣委員会可決 小沢空転国会から24日ぶり

2012年07月23日 09時12分51秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]自民党の平沢勝栄さん、2012年7月20日、衆院内閣委員会、衆議院インターネット審議中継から。

【衆議院内閣委員会 2012年7月20日(金)】

 衆議院内閣委員会(委員長は民主党の荒井聰さん)は7月20日(金)、「暴力団対策法改正法案(180閣法46号)」の趣旨説明を松原仁・国家公安委員長から受け、質疑をし、可決しました。6月22日(金)から始まった延長国会で、法案が衆院委員会を可決するのは、6月26日(火)の衆院一体改革特別委員会(中野寛成委員長)での一体改革関連8法案以来、24日ぶり。

 警察庁官僚出身の自民党・平沢勝栄さんは、身内だからこそ、警察庁に厳しい姿勢を示しました。政府参考人の後輩官僚に対して、「外国には暴力団が存在するのか」と質問。政府参考人によると、外国にはマフィアのような組織もあるが隠然とした秘密組織であり、日本の暴力団(ヤクザ)のように顕然たる犯罪組織は諸外国にはないとのこと。これには私も目から鱗が落ちました。そして、政府参考人が警察庁が暴力団を撲滅させるのは日本国憲法に違反するとの見解を示すと、平沢さんは「本当にそんな説を唱えている学者がいるのか」。政府参考人は「たしかにそういう学者はいない」と答弁。

 平沢さんはイギリス留学中に「日本ほど治安の悪い国はない。警察官は銃を持っているし、ヤクザがいる」と言われたとし、「暴力団をつぶすべきだ!」と絶叫。そのうえで、「なぜ、警察庁は暴対法を何か(ヤクザがらみの事件が)あるごとに小出しに改正するのか。抜本的に改正すべきだ」としました。

 平沢さんは「男はつらいよ」で寅さんが帰ってくる東京17区(葛飾区)選出。小選挙区になってから、新進党公認の山口那津男さん(現公明党代表)に2連勝し、第45回衆院選でも民主党の早川久美子さんに勝ちました。東京都区部で自民党候補が民主党候補に勝ったのは平沢さん一人。先ほどの「なぜ小出しに改正するのか」のなかには、警視庁組織犯罪対策4課などヤクザの相手をすることで自分の仕事を増やしている職員がいるのではないか、という古巣への厳しい視線を感じさせました。

 こういった志のある政治家は、選挙でも強いということになります。

 衆院内閣委員会は、国家公務員関連4法案(177閣法74~77号)とマイナンバー法案(180閣法31~33号)が残っていて渋滞しています。衆参ねじれ前の2010年5月の三宅雪子議員転倒事件に関して、民主党理事が自民党の平井卓也筆頭理事(当時)に謝罪しなかったことがいまだに影響を及ぼしています。やはり衆参ねじれ前の民主党の驕りが国会の停滞につながっており、取り返しのつかない大失態となりました。同じ時間帯の参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(高橋千秋委員長)でも参議院自民党の礒崎陽輔さんが「マイナンバー法案をやらないと採決しない」と宣言するなど参議院自民党がえげつない揺さぶりをかけてきています。

 国家公務員関連4法案の関しては、内閣府公務員庁設置法案は切り離して、労働協約締結権付与法案だけ先行して可決するなどの知恵が必要でしょう。

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[お知らせおわり] 


岡田副総理「機動隊は努力している」「デモに加わる皆さんの気持ち分かるし当然の権利」大飯原発再稼働

2012年07月23日 09時08分27秒 | 岡田克也、旅の途中

[写真]野田総理、岡田副総理。

 首相官邸前では、毎週金曜日夕方に「再稼働反対、ドンドンドドドン」という抗議運動があります。関西電力の大飯原子力発電所の再起動に反対するデモです。昔の革マル派などの組織とは違い、実行委員会をのぞけば、明らかに参加者は個人で、初老の夫婦や、若者など、おそらく1万人以上が首相官邸前で「ドンドンドドドン」とやっています。私がこの抗議運動(デモ)を意識するようになったのは、6月8日(金)で、衆院議員会館でいろいろと話して、総理の午後6時からの記者会見をラジオで聞きながら帰宅の途につくと、総理の演説の音声が外から聞こえてきます。ハンドマイクで総理の演説を拡声し、ひと言ひと言につっこみを入れる参加者。その総理の演説の声が、第2次世界大戦開戦にあたり国民の結集を呼びかけるジョージ6世の演説と重なる面があり、何とも言えぬ重たい気持ちになりました。

 岡田克也副総理は、2012年7月13日の定例記者会見でデモに機動隊が動員されていることについて「機動隊の皆さんは、何か事故が起こらないように、けが人が出たりとか、そういうことが起こらないように御努力いただいているというふうに思います。それは当然必要なことであろうというふうに思います」として、若き機動隊員の諸君に経緯を払いました。すばらしい警備ぶりだと思います。例えば、デモ参加者に「こんにちは」と声をかける係。あるいは、上司というよりも金曜デモ警備の先輩が後輩に教えるときに、「首相官邸とか内閣府とかから職員が出てくるけど、地下鉄の駅に行きたいっていう奴が必ずいるから通しちゃって」と初めてのデモ警備に緊張感を隠しきれない警察官。日本の秩序を守るすばらしい若者たちです。

 岡田さんは言葉を続けて、「それから、ここでデモに加わる皆さんの気持ちもそれはそれでよく分かりますので、いろんな自らの考え方を何らかの形で表現したいと思っておられる方が国会議事堂周辺、あるいは官邸周辺にお集まりになるということは、これは一つの意思表示ですから、それについて私がいいとか、悪いとかということではないと思います。ある意味では、それは当然の権利だというふうに思います。」と述べ、デモ参加者の気持ちも分かるし、意思表示は当然だとの考えを示しました。

 羽田内閣総辞職による下野から18年、新進党結党から17年。やっと昨年9月から、新進党三羽がらす(野田佳彦首相、藤村修官房長官、今年1月から岡田克也副総理)が官邸をやるようになったのに、この苦難の連続はなんでしょう。一体改革の採決を翌週に控えた6月22日(金)には、副総理会見で「宮崎さんいい質問しましたね」とお世辞を言ってもらった後に、「火の用心」のために赤坂議員宿舎に向かい、その途中で首相官邸前を通りました。このとき、「原子力の火を消すな」というプラカードを見て、デモに反対している人をみました。そして、さらにデモ隊は「笑点のテーマ」を流して反対派を妨害。何なんだこれは。しかし、新進党勢が官邸をやっている中での、この我が国の歴史に例を見ない事象に、その後も、「再稼働反対ドンドンドドドオン」という太鼓の音が耳から離れることはありませんでした。

 しかし、1年前ならいざしらず、今の私は「こんなに大変なら、官邸は自民党さんにやってもらった方がいいかな」という気がまったくしなくなりましたね。官邸を背負うことの重荷はずっしり感じますが、投げ出して自民党にやってもらおうという気持ちは持たなくなった。それだけでも、私の中での政権交代の成果です。いずれにしろ、1年で選挙ですから。

 政権を担うという重荷を分かち合いながら前に進む。それが新進党結党の志です。第1次民主党結党メンバーの中には、後ろから鉄砲を撃つような奴もいますが、所詮は「与党でもない野党でもないゆ党」です。もちろん第1次民主党のメンバーにも、安住淳財務相、玄葉光一郎外相、枝野幸男経産相、古川元久経財相ら優れたメンバーもいます。

 「日本の海が荒れている・・・」新進党結党大会冒頭の詩人の句です。どんな苦境でも、野田官邸の正しさは歴史が評価します。前に進むしかありません。新進党結党の志と団結心があれば、どんな苦難でも乗り越えられます。

 最後に、総理の大飯原発再稼働についての記者会見をつけますので、歴史法廷の判断材料にしていほしいと考えます。

野田佳彦首相2012年6月8日(金)記者会見(首相官邸ホームページ)から引用はじめ]

【野田総理冒頭発言】

 本日は大飯発電所3、4号機の再起動の問題につきまして、国民の皆様に私自身の考えを直接お話をさせていただきたいと思います。

 4月から私を含む4大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を得るべく取り組んでまいりました。夏場の電力需要のピークが近づき、結論を出さなければならない時期が迫りつつあります。国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります。それは国として果たさなければならない最大の責務であると信じています。

 その具体的に意味するところは2つあります。国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。

 これまで1年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります。勿論、安全基準にこれで絶対というものはございません。最新の知見に照らして、常に見直していかなければならないというのが東京電力福島原発事故の大きな教訓の一つでございました。そのため、最新の知見に基づく30項目の対策を新たな規制機関の下での法制化を先取りして、期限を区切って実施するよう、電力会社に求めています。

 その上で、原子力安全への国民の信頼回復のためには、新たな体制を一刻も早く発足させ、規制を刷新しなければなりません。速やかに関連法案の成案を得て、実施に移せるよう、国会での議論が進展することを強く期待をしています。

 こうした意味では、実質的に安全は確保されているものの、政府の安全判断の基準は暫定的なものであり、新たな体制が発足した時点で安全規制を見直していくこととなります。その間、専門職員を要する福井県にも御協力を仰ぎ、国の一元的な責任の下で、特別な監視体制を構築いたします。これにより、さきの事故で問題となった指揮命令系統を明確化し、万が一の際にも私自身の指揮の下、政府と関西電力双方が現場で的確な判断ができる責任者を配置いたします。

 なお、大飯発電所3、4号機以外の再起動については、大飯同様に引き続き丁寧に個別に安全性を判断してまいります。

 国民生活を守ることの第2の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません。

 数%程度の節電であれば、みんなの努力で何とかできるかもしれません。しかし、関西での15%もの需給ギャップは、昨年の東日本でも体験しなかった水準であり、現実的には極めて厳しいハードルだと思います。

 仮に計画停電を余儀なくされ、突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人も出ます。仕事が成り立たなくなってしまう人もいます。働く場がなくなってしまう人もいます。東日本の方々は震災直後の日々を鮮明に覚えておられると思います。計画停電がなされ得るという事態になれば、それが実際に行われるか否かにかかわらず、日常生活や経済活動は大きく混乱をしてしまいます。

 そうした事態を回避するために最善を尽くさなければなりません。夏場の短期的な電力需給の問題だけではありません。化石燃料への依存を増やして、電力価格が高騰すれば、ぎりぎりの経営を行っている小売店や中小企業、そして、家庭にも影響が及びます。空洞化を加速して雇用の場が失われてしまいます。そのため、夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません。

 更に我が国は石油資源の7割を中東に頼っています。仮に中東からの輸入に支障が生じる事態が起これば、かつての石油ショックのような痛みも覚悟しなければなりません。国の重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも、原発は重要な電源であります。

 そして、私たちは大都市における豊かで人間らしい暮らしを電力供給地に頼って実現をしてまいりました。関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町であります。これら立地自治体はこれまで40年以上にわたり原子力発電と向き合い、電力消費地に電力の供給を続けてこられました。私たちは立地自治体への敬意と感謝の念を新たにしなければなりません。

 以上を申し上げた上で、私の考えを総括的に申し上げたいと思います。国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきというのが私の判断であります。




その上で、特に立地自治体の御理解を改めてお願いを申し上げたいと思います。御理解をいただいたところで再起動のプロセスを進めてまいりたいと思います。

 福島で避難を余儀なくされている皆さん、福島に生きる子どもたち。そして、不安を感じる母親の皆さん。東電福島原発の事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが原発の再起動に複雑な気持ちを持たれていることは、よく、よく理解できます。しかし、私は国政を預かるものとして、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできません。

 一方、直面している現実の再起動の問題とは別に、3月11日の原発事故を受け、政権として、中長期のエネルギー政策について、原発への依存度を可能な限り減らす方向で検討を行ってまいりました。この間、再生可能エネルギーの拡大や省エネの普及にも全力を挙げてまいりました。

 これは国の行く末を左右する大きな課題であります。社会の安全・安心の確保、エネルギー安全保障、産業や雇用への影響、地球温暖化問題への対応、経済成長の促進といった視点を持って、政府として選択肢を示し、国民の皆様との議論の中で、8月をめどに決めていきたいと考えております。国論を二分している状況で1つの結論を出す。これはまさに私の責任であります。

 再起動させないことによって、生活の安心が脅かされることがあってはならないと思います。国民の生活を守るための今回の判断に、何とぞ御理解をいただきますようにお願いを申し上げます。

 また、原子力に関する安全性を確保し、それを更に高めていく努力をどこまでも不断に追及していくことは、重ねてお約束を申し上げたいと思います。

 私からは以上でございます。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、質疑に移ります。
 指名された方は、まず所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
 それでは、どうぞ。

(記者)
 読売新聞の望月です。
 総理、今週は4日に引き続いて2度目の会見となり、御苦労様です。
 福井県知事の要望に応じられて、今回の会見に至られたのだと思いますけれども、先ほどの会見で、要するに夏場の電力需要を乗り切るためだけでなく、日本の経済、エネルギー安全保障上も原子力が重要な電源であるという認識をお示しになられたのだと思いますが、そうしますと、丁寧に御検討されるとおっしゃいましたが、大飯以降の他の原発の再稼働のスケジュール感について、どのようにお考えになられるのか。
 あるいは今、おっしゃられましたが、中長期のエネルギーの割合を政権としてどのように考えられるのか。8月をめどにまとめられるとおっしゃいましたけれども、今現在、2030年の原子力の割合などが議論になっていて、総理の今のお話ですと、これはゼロにはできないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。また、その場合、40年の廃炉ルールなどには齟齬が出てこないのかも含めて教えていただければと思います。

(野田総理)
 最初は会見の意義みたいなところだと思いますけれども、福井県知事のみならず、福井県民の思いを重く受け止めつつ、今日は国民の生活を守るという観点から、再起動は必要であるという私の考え方を基本的に御説明したいという意味での会見をさせていただきました。
 再起動の安全性、必要性については、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、当面の夏場の需給だけの問題ではなくて、これはエネルギー安全保障であるとか、あるいは国民生活や経済への影響、特に国民生活、経済への影響で言うならば、これは電力価格が高騰することによって国民の負担が増えてはいけないんですが、そういうことを抑制しなければいけない等々の観点、日本の経済、社会全体の安定ということを考えての判断であるということであります。
 大飯以外のスケジュールのお話でございますけれども、これは大飯と同様に、スケジュールありきではいかなる再起動も考え得ません。引き続き、丁寧に個別に安全性を判断していくというプロセスをたどっていきたいと思います。
 最後に、中長期のエネルギーの割合の話が出ましたけれども、ちょうど今日のエネルギー・環境会議が行われまして、その選択肢についての中間整理を行わせていただきました。こうした中間整理なども踏まえまして、国民的な議論を行いながら、御指摘があったとおり、8月をめどに国民が安心できるエネルギーの構成、ベストミックスというものを打ち出していきたいと考えております。

(内閣広報官)
 それでは、次の方どうぞ。
 佐藤さん、どうぞ。

(記者)
 日本テレビの佐藤です。
 原発も非常に重要ですけれども、消費税関連の一体改革、関連法案も大詰めですので、こちらをお伺いしたいのですが、今日、修正協議が始まり、15日までに合意を目指すということで、総理の決意を改めてお伺いしたいというのが1点。
 自民党の石原幹事長は、社会保障面の最低保障年金については、国民会議を設置して、そこで議論をしてもよいとおっしゃっております。この国民会議についての総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 最後にもう一点ですが、法案を成立させるには会期の延長も避けられないと思いますが、総理の頭の中にある会期の延長幅、これは9月の代表選挙を超えるような大幅な会期延長も想定されているのかどうか。その見解を伺いたいと思います。

(野田総理)
 まず、今日から本格的な修正協議がスタートをいたしました。この協議については、昨年からの課題でありまして御要請をしてまいりましたけれども、自民党、公明党、やはり国民のために結論を出さなければいけない重要な課題だと御認識をいただき、こうした協議に応じていただいたことに感謝を申し上げたいと思いますし、加えて、この改革の方向について御賛同いただいているその他の会派の皆様にも感謝を申し上げたいと思います。
 これは、先送りのできない課題であります。したがいまして、今、会期は6月21日まででございますので、それまでに当然のことながらG20に私は行かせていただきたいと思います。この世界経済が不透明な状況の中で、日本としての立場は明確に打ち出さなければいけません。
 そういうことを考えると今日も協議の場で御議論があったと思いますけれども、15日までの間に決着をつけるべく、最大限の努力をされるということでございますので、そうしたスケジュール感の中で真摯な議論が行われること、そして成案を得ることを強く期待したいと思います。
 そこで、石原幹事長の話もございましたけれども、要は法案としては7本出しています。その7本について協議に基づいて私どもは成立をさせたいと思います。その上で中長期に関わる問題をどうするかという議論も当然あると思いますが、その道筋をどうつくり出すかということは、先ほど御提起のあった国民会議の問題もそこに含まれると思いますけれども、そういうものも含めて結論が得られるような議論を期待したいと思います。
 会期の問題は、これはこの一体改革だけではなくて政治改革の問題とか、この6月21日までの間に、何としてもその他の法案も成立を目指さなければいけないものがたくさんございます。まずはそこでできるだけ多く御提出をしている法案であるとか、あるいは結論を出さなければいけないテーマについて結論を出すことに今はベストを尽くす段階であって、その後の幅の問題を現段階で申し上げる段階ではないと思います。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。
 それでは、浜田さん、どうぞ。

(記者)
 ロイター通信の浜田と申します。
 長期的な将来の脱原発依存を実現する上で、原発事業の体制は従来どおり国策民営が望ましいのか、電力会社から原発を切り離して国が事業に関与する体制に移行すべきなのか、原発の事業体制の見直しに関する議論の必要性、検討の必要性について総理のお考えをお聞かせください。

(野田総理)
 事業体制について、現時点で今政府として何らかの方向性を持っているわけではございません。その事業体制を考える前に、その前にやるべきことがあると思っております。それが先ほど来御議論というか御指摘もいただいておりますけれども、8月をめどにまとめようとする、まさに中長期の国民が安心できるエネルギー政策の在り方、そこをまず決めていくことが大事ではないかと思いますし、これは国民各層のさまざまな御議論もいただきながらまとめていきたいというふうに思います。

(内閣広報官)
 それでは、時間が来ておりますので、最後の質問とさせていただきます。
 それでは、七尾さん、どうぞ。

(記者)
 ニコニコの七尾です。よろしくお願いします。
 本日、先ほど行われた国会事故調で福島第一原発事故の際の政府対応の問題点が幾つか改めて浮き彫りになりました。そこで御質問なのですが、原子力規制組織の法案に関わります、今、国会で審議しており議論が進んでいる中で、原発事故の際の総理の指示権の在り方や必要性について改めてお聞かせください。

(野田総理)
 政府事故調、そして、今、御指摘いただいた国会事故調、そういうところから出てくる御指摘というものを真摯に受け止めて、二度と去年のような事故を起こさないための対策を講じていくということが何よりも基本だと思いますし、そこから出てくる御意見は真摯に受け止めたいと思います。
 その上で、今、与野党間で議論をしている新たな規制の組織の話の中で、総理大臣の権限のところ、今、議論をやっている最中だと思います。かなり煮詰まってきているのではないかという報告を受けております。ここで折り合うことができれば1つの合意形成が大きく前進できるのではないかと思いますので、その動きを今注視しているところでございます。

(内閣広報官)
 それでは、時間がまいりましたので、これで総理会見を終わります。どうもありがとうございました。

(野田総理)
 どうもありがとうございました。

[引用おわり] 

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