【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

政府、特例公債法案と年金交付国債法案を修正承諾要求 話し合い解散を強行突破

2012年07月31日 19時32分06秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 政府は2012年(平成24年)7月31日(火)の定例閣議で、「平成24年度特例公債法案」(180閣法2号)と「年金交付国債発行を可能とする国民年金法の一部を改正する法案」(180閣法26号)の修正を決め、衆議院に許諾を求めました。􁐔平成24年度特例公債法案の修正承諾要求は同日午後の衆議院本会議で起立表決され、賛成多数で可決しました。この表決では自民党が起立せず、反対したように見えました。

 年金交付国債発行を可能とする国民年金法改正法案は議院運営委員会が付託先の委員会を決めておらず、マイナンバー法案、特例公債法案、国民年金法改正法案、補正予算案が今年度から、2014年4月の消費税率アップにかけた中期的な税財政運営のために、今国会で一体的に成立をめざすという混沌としながらも乱暴に前に進むジェットコースター並みの国会運営となってきました。

 内閣が衆議院に対して提出済み法案を修正承諾要求することは今まではほとんど無く、第177通常国会での民主党の岡田克也幹事長・安住淳国対委員長体制から急増しました。これは、参院で過半数がなく、衆院で3分の2がないという憲法の空白に陥っている、第45期衆議院・第21期第22期参議院(2010年7月から)の民主党が必死にナローパス(狭い道)を前に走りながら考えるうえで生まれた苦肉の策です。ただし、多くの与党議員が提出後の法案のプロセスを理解できない状態に陥っており、そのため6月26日の造反政局、党分裂につながってしまいました。私は国難の折に自分の頭で理解できないから造反した国会議員は、ただ消え去るのみとの強い信念で臨んでいます。

 「平成24年度の特例公債法案」はタイトルを「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案」に修正しました。一見して分かるとおり、「平成24年度」の文字が消えています。6月15日の3党合意の確認書の3つめ「(年金)交付国債の削除」を具体化したもので、年金交付国債にかわり、年金特例公債(新発国債と借換債)を使い、年金特例公債で基礎年金の国庫負担2分の1から36・5%の不足部分である2・6兆円を穴埋めします。その2・6兆円分の年金特例公債は、2014年4月以降の消費税増税分で償還することが明記されています。(財務省ホームページ内の修正案原文(PDF)参照)。

 「年金交付国債発行を可能とする国民年金法改正法案(180閣法26号)」については、平成24年度における年金交付国債による財源措置を削除したかわりに、平成24年度および平成25年度の基礎年金の国庫負担分確保に年金特例公債を使うことを明記しました。(厚生労働省ホームページ内の修正のポイント参照)。

 ただし、今国会(9月8日)中に成立が必要なのは、むしろ、「年金特例公債を発行するための国民年金法改正法案」(180閣法26号内閣修正)であって、私見ですが、「財政運営に必要な新・特例公債法案」(180閣法2号内閣修正)が今国会中に成立しなくても借換債を短い期間の公債で回していけば、キャッシュフローは年度を通して可能なのではないだろうかと考えます。安住淳・財務大臣は10月末の時点で、税収見積額が底をつくとしていますが、実際にはそもそも平成24年度に見積もる税収がその時点で国庫に全額は言っているわけではなく、幸か不幸か、毎年、百数十兆円の国債を償還し、借換債を発行している現状では、それだけの年間のキャッシュフローは枯渇しないんだろうと私は思います。とはいえ、そもそもそれは健全でないし、財政法などに抵触する可能性もあるでしょう。国際的な評価も懸念されます。ですが、9月8日までに必ずしも成立しなくていい場合は、当初自民党が想定していた特例公債法案成立の見返りとしての解散確約戦術がとれない可能性が出てきました。民主党が9月の野田佳彦代表(総理)再選後に、秋の臨時国会を開き、財政運営に必要な新特例公債法案と消費税改正法附則第18条を具体化するための補正予算案を提出した場合は、自民党と公明党は3党合意を破棄するかどうかという匕首を突きつけられます。3党合意を破棄した場合は、自民党と公明党が第46回衆院選に勝利しても政権政党が参院で少数であるねじれ国会が永続化します。

 なお今国会では、「日本郵政民営化見直し法案」と「原子力規制委員会設置法案」の閣法総計5本が内閣による撤回要求が衆議院で承諾されています。このときは、撤回承諾要求をした時点で、3党合意が成立していました。今回の新・特例公債法案については、参院での過半数での可決・成立の確約が3党でとれていないものと推測されます。逆に、3党による話し合い解散を正面突破する狙いが、政府・民主三役の間で共有されている可能性がある、と私は想像しています。

 3党合意をてこに、反転攻勢をする。野田さんは礼儀正しい人ですが、どうやら岡田さん・安住さんのインテリヤクザ国対が、副総理・財務大臣に所を変え、再び地が出てきた気がします。私も逆賊とののしられても、暴漢に刺し殺されても、野田さん、岡田さん、安住さんともに狭い道でも前に進む心構えです。攻撃は最大の防御です。

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川端達夫総務相、地方消費税一般財源化、特例市廃止に含み 国の未来、分権の未来に道を拓く

2012年07月31日 10時19分15秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]川端達夫総務大臣(兼)内閣府特命担当大臣(地域主権、沖縄・北方)、首相官邸ホームページから。

【参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 平成24年(2012年)7月30日(月)】

 参議院で社会保障と税の一体改革8法案の審議が続いていて、民社協会所属でUIゼンセン同盟組織内の川端達夫総務大臣は2012年7月30日の特別委員会で安定した答弁をしました。

 衆院段階では議論が少なかった、消費税の国、地方の配分について、自民党(元新進党)の山崎力参院議員(青森、2016年改選)さんが「地方分権、民主党は地域主権という言うんでしょうか、その地域主権の観点から言えば、何に使うかの自由は地方自治体に与えるべきだ」としました。地方消費税は、社会保障目的に充てることになっています。しかし、公会計上、一般会計の歳入である地方消費税、あるいは、地方交付税交付金を経て譲与される消費税額を特定の歳出に当てる予算を組むことは不可能ですから、川端さんは社会保障(子ども子育て含む)の自治体の歳出総額を計算することによって社会保障の安定した財源確保に限定した地方消費税(譲与分含む)になるとの趣旨の答弁をしています。これは地方財政計画の計算に反映するとも受け取れる答弁ですが、実際には、地方消費税は10%時でも総額で10兆円(譲与分含む)に過ぎないので、実質的に社会保障の特定財源にできるという「フィクション(虚構)」にもとづく答弁であり、縁の下の力持ちとして、民主党政権や国家のために、柔道の「掛け逃げ」をしている格好になります。川端さんは、答弁席でいつも淡々として、ひょうひょうとしていますが、そうなんでしょう。

 川端さんは「国地方通じて安定財源の確保ということでお願いしています。先生おっしゃるとおり、地方団体と話し合う中で、地方消費税の一般財源化の話はずっと出てきています。法案成立後の運用面において、地方財政、地方税制の自律性(自立性?)に配慮していきたい」と答弁しました。

 続いて、民主党国対委員長経験者としては後輩で、やんちゃな安住淳財務大臣が、「あんまり正直に言うと、おおごとになりますが、地方ももっとしっかり自分で税を取る努力をしていほしいですね」と徴税業務の徹底を要求した上で、「課税に関しても頑張ってほしい」と法定内外の普通税・目的税に関する自治体の課税自主権にエールを贈りました。

【衆議院総務委員会 平成24年2012年7月31日(火)】

 川端達夫総務大臣は、特例市(人口20万人以上)について、自民党の橘慶一郎さん(富山3区)から「特例市は現在19万人などに減少している。人口要件を15万人にできないか」との質問に対して、「地方制度調査会(地制調)に大都市制度についてご議論いただいているなかで、特例市も検討課題になっています。そのなかで、一般市への権限移譲がかなり進んでいることから、実は特例市の固有の権限移譲は少なくなってきています。そのため、特例市制度の見直しを地制調にお願いしている」として、特例市制度の将来的な廃止を示唆しました。

 総務委員会では、第180国会閣法60号「地方自治法の一部を改正する法律案」が議題になっています。この法案は通年議会を開きやすくし、首長が副首長の指名を専決処分できなくする一方で、議会に対する再議権は拡充するなどの細かい改正がもられています。副首長指名の専決処分廃止、議会同意人事限定は、鹿児島県阿久根市の前市長の県警職員OBの副市長人事での騒動を踏まえたものと考えられます。法案には、特例市に関する改正は入っていませんが、法案審査に付随して、橘さんが質問したものです。

【UIゼンセン同盟は日本の労働運動のパイオニア】

 川端さんは東レ出身。琵琶湖畔に伝統的な繊維産業ですが、現在ではカーボンファイバー(炭素繊維)で、ボーイング社のジェット機の機体をつくる会社です。とはいえ、東レ労組の組織票だけでは、中選挙区と言えども当選できず、知事選を通じて政治に目覚めた川端さんが1986年に自ら出馬し、最下位で当選したのは本人の資質が大きいとされています。繊維産業は、我が国明治維新における殖産興業の代表的産業であると同時に、労働集約型産業であることから、「女工哀史」「ああ野麦峠」など働く者の環境は劣悪を極めました。その一方で、まさに委員会の議題である「子ども・子育て新システム(幼保一体化・幼保一元化)法案」「認定こども園法改正案」となっている、保育では、鐘淵紡績(カネボウ)が明治33年(1900年)に日本で初めて企業内保育所を設けており、その労使関係はまさに日本における労働運動の礎となっています。現在では、イオン労働組合をはじめとする流通業や武田薬品工業労組など製薬業の働く仲間の組織化により、日本で唯一100万の組員員を有する産別(産業別労働組合)であり、日本でおそらく唯一ここ数年組織員数・組織率ともに増えて続けている産別です。その理由は、非正規労働者の組織化です。

 ホームページによると、2011年9月現在の組合員は111万2115人。2345組合を束ねる産業別労働組合です。

 その一方で、賃金闘争や生活改善闘争に次ぐ扱いである、選挙では、UIゼンセン同盟組織内議員は参院選の民主党比例代表で個人名では十数万票しかとれておらず、組合員6人につき1票しか出ていません。落選したこともあります。このことから、世間知らずで選挙しか興味がない小沢一郎氏はゼンセンがたるんでいて、旧総評系の日教組、自治労はよく頑張っていると評価したとされています。小沢は能なし(脳無し?)ですから、日教組は自治労に春闘がないということを知らないのでしょう。そんな小沢がいなくなったので、UIゼンセン同盟の働く仲間のみなさん、もちろん正規・非正規問わずですが、今後はより政策要望が届きやすい風通しの良い政党システムになっていくと思いますよo(^-^)o 与党であれ野党であれ。

 UIゼンセン同盟ホームページによると、7月~10月まで「労働時間短縮キャンペーン」を実施し、「働きすぎ注意報発令中!」としてます。・サービス(不払い)残業は法律違反です!
  しない、させない、許さない!!
・半数以上の人が、月約20時間のサービス(不払い)残業をしています!こんな職場の実態を変えていこう!!
・労使での取り組みと意識改革で時短実現!
・過労死労働(月80時間以上の時間外労働)は危険です!
・休み上手は、仕事上手――年休取得は労働者の当然の権利です

 としています。

 こういった活動の方法に興味のあるすべての働く人は、UIゼンセン同盟を参考にしてみてはいかがでしょうか。

 UIゼンセン同盟のホームページはこちらです。

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