宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

岡田克也民主党代表、QTで「石破首相なら解釈改憲で徴兵制」と示唆 きょうの国会

2015年06月17日 17時46分11秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【平成27年2015年6月17日(水) 両院国家基本政策委員会合同審査会】

 今国会2度目、会期末前週のQTは、参院側の小川勝也会長(北海道)がしきりました。

 民主党代表(ネクスト首相)の岡田克也さんは、冒頭「参院の選挙制度改革について」とし、今週、魚住裕一郎・公明党参議院会長がまとめた「魚住プラン」と、民主党がまとめた案がともに、「2倍以内になっている」とし、両案に自民党が賛成するよう求めました。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は、まず、「暴力によって渡辺さんは負傷した」とし、先週金曜日の労働者派遣法改悪法案(189閣法43号)の強行採決情報があるなか、民主党が委員長の入室を物理的に阻止しようとしたことについて、「言論の府なんですから議論しましょうよ」と語りました。参議院選挙制度改革については、この後の松野頼久・維新の党代表からの重ねた問いに対して、「最高裁の判決を真摯に受け止め、立法府が最大限に努力しなければならない。自民党総裁としてとりまとめを指示している」とかわしました。

 安倍首相からの、民主党による委員長入室阻止に関する発言について、岡田さんは「強行採決をしないよう約束してください」と求めましたが、安倍首相は答えませんでした。

 岡田さんは、周辺事態あらため重要影響事態について、「何がプラスアルファされれば、存立危機事態になるのか」と質問。安倍首相は例示として、「米艦を重要影響事態で後方支援していくなかで、某国(北朝鮮)が日本を火の海にするとするなかで、米艦が迎撃ミサイル(イージスシステム)で対応しようとしているとき」は、重要影響事態から存立危機事態になると例示しました。なお、私は、その場合は武力攻撃予測事態になる、とQTを聞きながら思いました。

 この答弁を聞いて、岡田さんは「今の総理の発言を聞いて、やはり憲法違反だと考えた」とし、首相の一存ではなく、法律案に書き込む必要があるとしました。

 徴兵制について安倍首相は「徴兵制は苦役である」とし、憲法18条に違反するとしました。岡田さんは「閣僚の中でも違う意見がある。新しい総理が出てきたら徴兵制は憲法に合致していると閣議決定するのではないか」とし、石破首相になれば、徴兵制が合憲になる可能性を指摘しました。

 岡田代表は最後、「民主党は領域警備法案も(昨秋の臨時国会で)出しているし、周辺事態法の改正案も考えている。それがあれば、集団的自衛権はいらないんです」と締めくくりました。

 松野代表は、会期の延長について問いました。安倍首相は「いま、国会が開いているさいちゅうですから、審議が深まることを政府として期待しています」と答弁しました。

 日本共産党の志位和夫幹部会委員長は「後方支援と武力行使の一体化論は、国際法上有効な議論なのか」と問いました。安倍首相は「一体化論は国際法ではなく憲法との関係に関する概念で申し上げており、国際法上の概念ではない」としました。志位さんは、後方支援と武力行使の一体化論は、国際法上通用しない概念であると締めくくりました。今後の安保特で、後方支援に関する「現に戦闘行為が行われている現場以外」の審議に活用していく考えとみられます。

【同日 衆議院厚生労働委員会】

 渡辺博道委員長が先週金曜日の阻止行動に遺憾の意を表明し、民主党の西村智奈美筆頭理事が謝罪しました。

 一般質疑だけで散会しました。次回は未定。

【同日 法律公布】

 防衛装備庁を新設し、文官統制を廃する「改正防衛省設置法」が平成27年6月17日法律39号(議案番号は189閣法33号)が公布されました。施行は10か月以内の政令で定める日ですが、10月1日に防衛装備庁が発足する予定。

 交通違反者のうち認知症が疑われる者に簡易検査ができる、「改正道路交通法」(189閣法38号)が平成27年6月17日法律40号として公布されました。2年以内の政令で定める日に施行。今国会初の参議院先議の法律(案)の公布となりました。今月、先行した改正道交法が施行されており、累次の改正法のていねいな周知がのぞまれます。

【同日 参議院本会議】

 まず、「特許法改正案」(189閣法44号)と「不正競争防止法改正案」(189閣法45号)が同時に、宮澤経産相から趣旨説明されました。衆院では一つの委員会で、別々に審査されていました。

 この後、外交防衛委員長が「特許法条約の承認を求める件」(189条約5号)と「商標法のシンガポール条約の承認を求める件」(189条約6号)を報告し、全会一致で両院承認されました。今国会の条約両院承認は合計7本となり、提出分の半分に近づきつつあります。

 次に、「18歳19歳に選挙権を付与する改正公職選挙法」(189衆法5号)が全会一致で可決し、成立しました。この法律案は公布の日から起算して1年後に施行するため、「平成28年6月23日(木)施行」となる可能性が極めて高くなりました。第24回参院選も同日に公示され、7月10日(日)投開票の可能性が極めて高くなりました。

 そして「道路運送車両法と自動車検査独立行政法人を改正する法律」(189閣法46号)が投票総数233、賛成221、反対12で可決し、成立しました。

 小学校・中学校統廃合のために、小中一貫教育を推進する義務教育学校を新設できる「改正学校教育法」(189閣法49号)は投票総数233、賛成217、反対16で可決し、成立しました。来年4月1日施行。

 「改正風俗営業法」(189閣法26号)は投票総数231、賛成218、反対13で可決し成立。来週火曜日か金曜日に公布され、その瞬間から「ダンスホール規制の除外」が施行します。15万人の署名が政治を動かしました。

 「電力システム改革プログラム(第3弾・総仕上げ)のために、改正電気事業法および改正ガス事業法」(189閣法29号)は、まず共産党が反対討論。この後、採決。投票総数231、賛成208、反対23で可決し、成立しました。このプログラム法には2020年、東京五輪の年に施行される内容も含まれています。プログラム法の第1弾は2年前の参院選直前の通常国会会期末にハプニング的に廃案になり、テレビ討論などでも百家争鳴の罵り合いになり、参院選前哨戦を混乱させました。2020年施行のプログラムを入れ込む官僚の力を国会が支持したことになります。国会議員の中には、電事法とガス事業法の同時改正を評価する声がありました。そういったパワーバランスが国会というプロセスで可視化して見て取ることができました。 

 この後、2つの調査会の中間報告がありました。山崎力会長が「国の統治機構に関する調査会」について、鴻池会長が「国民生活のためのデフレ脱却および財政再建に関する調査会」。ぜひ、来年の通常国会では、正常な格好で最終報告できるよう、与党は努力してほしいところです。

【同日 参議院地方・消費者問題に関する特別委員会】

 「第5次地方分権一括法案」(189閣法51号)と「地域再生法改正案」(189閣法53号)の審査。質疑の中で、「補助金に全く頼らない地方創生はあるのか」との問いに、政府参考人が「鹿児島県の「やねだん」は、地域のリーダーが芋からオリジナルの焼酎をつくったもので、高齢者に給料まで払っている」とし、補助金をまったく受けない地方創生事例があるとしました。

 採決では、一括法が共反対、自公民維社改の賛成多数で、地域再生法が共社反対、自公民維会改の賛成多数で可決しました。これに先立つ討論では、日本共産党の紙智子さんが「成長戦略による、上から目線の改革であり、税制上の優遇措置と含めて地方を衰退させるものだ。地方のがんばっている企業を底上げする方がよい」としました。社民党の福島みずほさんは「アベノミクスがもたらす中央と地方の格差拡大を覆い隠すものであり、人口減の地方を「やる気がない」と切り捨て、地方中核都市をまち・ひと・しごととしてもてはなす」としました。私は、共産党、社民党の討論は、たいへん聞きごたえのある討論だと感じました。 

 なお、衆議院では一括審査だった「特区法改正案」は他の常任委員会に、今後付託され、極めて丁寧な審査がされる見通し。

【同日 衆議院内閣委員会】

 「内閣官房と内閣府の事務を見直す国家行政組織法改正案」(189閣法54号)が有村治子大臣(行政改革?)から趣旨説明されました。

【同日 衆議院安保特(我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会)】

 来週22日(月)午前9時から参考人質疑をすることだけを議決して、数分で散会しました。議題は「2015ガイドライン国内実施のための安保法制2法案」(189閣法72号、189閣法73号)。

【同日 衆議院経済産業委員会】

 「貿易保険法改正案」(189閣法52号)を審査し、委員長が質疑の終局を宣言して、散会しました。同委に付託される見通しの閣法はまだ2本残っている現況です。

【同日 参議院沖縄および北方領土問題に関する特別委員会】

 沖縄県内の市長ら参考人に対する、時間を区切った自由討議方式での審議がありました。この中でも、民主党参院議員が参考人に集団的自衛権について質疑する場面があり、衆参一体的な議論が定着しています。

【同日 衆議院農林水産委員会】

 まず一般質疑で、山田俊男・自民党参議院議員に対する、JAグループからのパーティー券の格好での多額の資金提供報道でのやりとりがありました。

 この後、「農業法・農地法・農業委員会法改正案」(189閣法71号) と「民主党対案」(189衆法21号)が審査されました。事前に「採決観測」がありましたが、採決はなく、散会しました。自民党・公明党と維新の党の間で、修正協議などでもめ事があったように、報じられています。

【同日 参議院災害対策特別委員会】

 まず一般質疑。この後、「活動火山対策特別措置法改正案」(189閣法74号)が趣旨説明されました。

以上

  

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自民党が「9月施行」の派遣法改悪法案成立を急ぐのは、民自公24年改正法の「10月施行」を阻むため

2015年06月17日 06時00分17秒 | 第189回通常国会2015年安保国会


 極めて技術的なエントリー記事になります。

 政府自民党が「労働者派遣法改悪法案(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部 を改正する法律案 )」(189閣法43号)の成立を急いでいる理由が、「平成24年2012年改正法(衆参ねじれによる3党協議により、民自公が賛成)」の第2条(注・改正法の第2条)に盛り込まれた、違反行為があった派遣労働者を保護するために、無期雇用転換を義務付けた規定(法律第40条の6、第40条の7、第40条の8)の施行が、同改正法の附則第1条第2項により、「平成27年10月1日」に迫っているからだったことが明らかになりました。

 これは日経新聞の2015年6月27日付5面の報道をもとに、筆者(宮崎信行)が、平成24年改正法と、今次改正法案の条文を精査して明らかになったものです。

 今次改正法案は3度目の提出ですが、審議未了廃案になるたびに、「平成26年10月1日施行」「平成27年4月1日施行」と条文を変えてきましたが、今国会提出法案では「平成27年9月1日施行」と、法律として極めて不自然な施行日となっていました。

 これは、改正されないと、10月1日に、平成24年改正の次の条文が施行されることを、派遣元会社が警戒しているからです。

 以下、極めて技術的ですが、とにかく、情報を盛り込みます。

 まず、平成24年改正法では、法律の第40条の6、第40条の7、第40条の8を新設し、違反があった場合の無期雇用転換を「義務付けています」。このプログラム規定が10月1日に施行されます。

[平成24年改正法から引用はじめ]

(前略)

第四十条の六 労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(特定独立行政法人(独立行政

法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人を
いう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人
(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地
方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条
において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点
において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労
働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内
容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を
受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、
かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。
一 第四条第三項の規定に違反して派遣労働者を同条第一項各号のいずれかに該当す
る業務に従事させること。
二 第二十四条の二の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
三 第四十条の二第一項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
四 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請
負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事
項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。
2 前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提
供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から
一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。
3 第一項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の
提供を受ける者が、当該申込みに対して前項に規定する期間内に承諾する旨又は承諾
しない旨の意思表示を受けなかつたときは、当該申込みは、その効力を失う。
4 第一項の規定により申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者に係
る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から求めがあ
つた場合においては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、速やかに、同
項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた時点における当該派遣労働
者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。
第四十条の七 労働者派遣の役務の提供を受ける者が国又は地方公共団体の機関である
場合であつて、前条第一項各号のいずれかに該当する行為を行つた場合(同項ただし
書に規定する場合を除く。)においては、当該行為が終了した日から一年を経過する
日までの間に、当該労働者派遣に係る派遣労働者が、当該国又は地方公共団体の機関
において当該労働者派遣に係る業務と同一の業務に従事することを求めるときは、当
該国又は地方公共団体の機関は、同項の規定の趣旨を踏まえ、当該派遣労働者の雇用
の安定を図る観点から、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号。裁判所職員臨
時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号)において準用する場合を含む。)、国
会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五
号)又は地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)その他関係法令の規定に
基づく採用その他の適切な措置を講じなければならない。
2 前項に規定する求めを行つた派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労
働者派遣に係る国又は地方公共団体の機関から求めがあつた場合においては、当該国
又は地方公共団体の機関に対し、速やかに、当該国又は地方公共団体の機関が前条第
一項各号のいずれかに該当する行為を行つた時点における当該派遣労働者に係る労働
条件の内容を通知しなければならない。
第四十条の八 厚生労働大臣は、労働者派遣の役務の提供を受ける者又は派遣労働者か
らの求めに応じて、労働者派遣の役務の提供を受ける者の行為が、第四十条の六第一
項各号のいずれかに該当するかどうかについて必要な助言をすることができる。
2 厚生労働大臣は、第四十条の六第一項の規定により申し込まれたものとみなされた
労働契約に係る派遣労働者が当該申込みを承諾した場合において、同項の規定により
当該労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が
当該派遣労働者を就労させない場合には、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に
対し、当該派遣労働者の就労に関し必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
3 厚生労働大臣は、前項の規定により、当該派遣労働者を就労させるべき旨の勧告を
した場合において、その勧告を受けた第四十条の六第一項の規定により労働契約の申
込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者がこれに従わなかつ
たときは、その旨を公表することができる

(後略) 

[引用おわり] 

 この現行法(平成24年改正法反映分)に対して、今国会提出法案は次のように書いています。

[今国会提出法案から引用はじめ]

(平成24年改正法の)

(前略)

第二条のうち、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する

法律第二十八条の改正規定中「第四十条の六第一項第四号」を「第四十条の六第一項第
五号」に改め、同法第三十五条の四の改正規定中「第三十五条の四」を「第三十五条の
五」に改め、同法第四十条の六を同法第四十条の九とし、同法第四十条の五の次に三条
を加える改正規定のうち第四十条の六第一項第三号中「こと」の下に「(同条第四項に
規定する意見の聴取の手続のうち厚生労働省令で定めるものが行われないことにより同
条第一項の規定に違反することとなつたときを除く。)」を加え、

(後略) 

[引用おわり]

 「無期転換の義務付け」のプログラム規定が、10月1日に施行される前に、今次改正法案が(仮に成立し、)9月1日に施行されると、「聴取の手続き」をすれば、無期転換の「義務付け」がなくなるようです。

 この背景には、平成24年改正当時の、民自公3党協議にあたった、与党民主党担当者や政務三役が、同年末に落選してしまい、2014年末に国政復帰。現在は衆議院厚生労働委員に復帰しているものの、その間の2度目にわたる今次改正法案の提出に野党現職議員としてかかわっていないこともあり、経緯が不明確となったことがあるのかもしれまsねん。

 政権交代時の極端な振り子がこのような事態を招いたかもしれず、今後歴史的な検証に資する事例かもしれません。

 まあ、何言ってんだかサッパリ訳が分からないエントリー記事を書かせていただきましたが、短期的な思惑は、こういうことだったようです。

以上 

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