【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

議員立法はやはり迷惑だった「市町村の計画の策定の努力義務」で自治体負担増し、二階俊博さんの国土強靭化法ですら1割にとどまる

2019年12月16日 09時28分57秒 | 第199第200回臨時国会(2019年8月から12月)

[写真]国会議事堂の中央玄関から2階を経て3階に上がる階段、おととし2017年、宮崎信行撮影。

 若いセンセイ方の張り切り過ぎは、予想通り、迷惑だったようです。

 2010年以降のねじれ国会で、野党・自民党、公明党や超党派などの議員立法に盛り込まれた「市町村の計画策定の努力義務」が地方自治体の仕事を圧迫していることが分かりました。

 これは、先の第200回臨時国会2019年11月25日の参議院行政監視委員会で、西田実仁・公明党参議院議員会長の質疑分かりました。

 西田さんは、野党時代の公明党が2011年の東日本大震災で、「遅い、にぶい、心が無い」と政府・民主党を批判。「防災減災ニューディール基本法案」を出し、復興基本法に「全国防災」といういわくつきの抜け穴をこしらえました。

 西田さんは、野党公明党の同法案と、野党自民党の「国土強靭化基本法案」が政権交代直後に合体して「防災減災等国土強靭化法」(当ブログ内2013年6月記事など参照)となったと説明。県や市町村が「国土強靭化基本計画を定めることができる」とする規定について、策定状況を問いました。

 内閣官房は、47都道府県は策定したが、市町村ではわずか117団体しか策定していないと答弁。その理由として「主に担当する職員の不足ですとか策定のノウハウの不足が課題として挙げられている」と説明しました。

  ことしの台風15号では、罹災証明書の発行が遅れて、生活再建のイのイチバンの責任を果たせない自治体が続出。職員不足は深刻であり、なかなか、国の議員立法に付き合いきれないのが本音だし、それが正しい、と思います。

 西田議員会長は「もちろん、私も含めて議員立法のときにはいろんな思いを込めて法律を作っておりまして、それぞれその法律の趣旨というものはいずれも重要なものであります」と自己正当化しました。

 しかし、地方分権一括法で、紐づけ枠づけの地方移譲を進めてきた内閣府のセクションの政府参考人。答弁では「計画策定などの義務付けによって必要以上に地方公共団体に負担を強いることは、地方公共団体の自主性を強化し自由度を拡大するという地方分権改革の趣旨に鑑み、適当ではないと考えております」とピシャリ。

 ここ数年、超党派の議員立法に消極的な立憲民主党などに対し、自民党、公明党、維新の政府外議員らが毎年6月にSNSで批判するのが風物詩となりつつありました。しかし、それは自分が汗を流したから重要な立法だと錯覚してしまった大局を欠いた視点に過ぎません。21世紀になってからの議員立法ブームにも見直しの機運が出てきました。

 ちなみに、英国庶民院では、議員立法提出権は抽選であり、政府外議員全員にあるわけではありません。米国の上院、下院は、「閣法」はありませんが、年間およそ2万本の議員立法が提出されるため、議院運営委員会から常任委員会に付託される確率はほぼゼロ%。このような実態のようです。


海上自衛隊の中東派遣は今月閣議決定へ 「国会が終わってから決める悪い先例になる」「アメリカに情報筒抜けではないか」

2019年12月16日 08時52分28秒 | 第201回通常国会(2020年1月から6月)「コロナ感染症」
[写真]防衛省、東京都新宿区、ことし2019年2月、宮崎信行撮影。

 政府は、今月2019年12月中に、海上自衛隊の中東派遣を決める見通しです。あす自民党総務会で議論され、公明党でも党議決定するはこび。
 
 海上自衛隊の実質的な海外基地があるアフリカ・アデン湾から、東方向にある、中東近海のシーレーンまで、護衛艦や哨戒機をを展開することになります。

 法定根拠は、防衛省設置法第4条の、

 「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと 」

 になります。2014年の解釈改憲や、2015年の平和安全法制よりも前からある条文です。

 野党重鎮の岡田克也さんは、先々週、2019年12月5日(木)の記者懇談会で、「国会閉会後に自衛隊を出す悪い先例になる」とし「国会でちゃんと議論すべきだ。政府は仮定だとしても議論することが必要だ」と述べました。

 岡田さんは、中東派遣については「平和安全法制ではなく、防衛省設置法の調査だ」として一定の理解を示しながらも、「拡大解釈のきらいがある」とし、その必要性を十分に説明すべきだとしました。

 岡田さんは調査結果について「米軍との情報共有はどの程度なのか確認したい」とし「入手した情報が全部リークされてしまうのではないか」とし、日本海自の情報が、2015年日米防衛協力のための指針ガイドラインによる平時からの軍軍連携により、筒抜けになる状況を懸念。確認を求めました。

 国会での説明については、護衛艦が中東に到着する前だとし、来月20日と予想される通常国会召集を一つのタイムラインにすえました。

 岡田さんは2015年1月に目をいためタブレットでA4判文書を拡大してみる必要が生じ、最大野党党首ながら、党務のペーパーを把握しづらい状況が続きました。お得意の国際情勢についても、「英国のEU離脱で世界経済は混乱」「暴言ばかりのトランプさんが米大統領に当選の異常事態」と、やや細かな分析にかける国際情勢を発信することがありました。2016年7月に党首を追われましたが、その後、快癒。ことし2019年は衆議院外務委員として、政府に詳しい情報を開示させることに専心しました。