堂々たる体躯(全長約70Cm、翼開帳約180Cm)、そして鋭い眼光、アイヌ民族からは「集落の守り神」として崇められたシマフクロウ。開発による生息地の破壊によって今や希少野生動植物種に指定されたシマフクロウの生態を研究者から聴いた。
12月19日(木)午後、札幌大学において「札幌大学・森林研究所合同公開講座」が開催され、二人の研究者から「シマフクロウ」と「コテングコウモリ」の生態について話を聴くことができた。そこで2日間にわたって、二人の話をレポートする。
札幌大学の早矢仕(はやし)有子教授はシマフクロウを知床のフィールドで25年間にわたり観察・研究と保護活動をしているという。その早矢仕教授からシマフクロウの生態を聴いた。
話を伺い、メモすることができたことを羅列的にレポートする。
◆フクロウの仲間では世界最大級であり、長生きの鳥である。(動物園では43年の生存記録があり、野生でも30年くらいは生きる)
◆目が大きくて、その目が顔の前面あるのが特徴。夜行性である。
◆北海道、ロシア(樺太、大陸南東部)、中国北東部などに生息する。
◆北海道では河川や森林の改変により生息数は激減し、現在は道東地方を中心に約140羽の生息を確認するだけの状況。
◆大陸でもこの50年間に1/4まで減少し、樺太では絶滅状態である。
◆営巣するのは太い広葉樹で、繁殖するには大きな洞(うろ)が必要。
◆シマフクロウの繁殖スケジュールは、2月に交尾、3月は抱卵、3~4月に産卵(抱卵35日)、4~6月は巣内育雛(50~60日)、その後巣立ちするというのが繁殖スケジュールである。
◆観察記録では、59日間の巣内育雛期間中、総給餌回数は470回を数えたという。
◆早矢仕教授たちが把握している範囲では、1987~2013年までの間に442羽の雛が巣立っていることが確認されている。
◆シマフクロウの保護、個体数の回復のために、行政とも連携しさまざまな活動に取り組んでいる。
◆給餌池を12カ所設けたり、FRP製の巣箱を延べ283個取付けたりしている。
◆北海道の森林が天然林から人工林に変わったが、この人工林に広葉樹を意図的に植樹して針広混交林を広げていくことがシマフクロウの保護に繋がることを理解してほしい。
※ 講義をされた札幌大学の早矢仕有子教授です。
早矢仕教授のお話はスライドを交えながら概略以上のような内容だった。
開発行為により野生生物の生育環境が悪化していることはさまざまな方面から聞かれる言葉である。
人間(ひと)として開発行為を無下に否定することはできないのかもしれない。
ただ、野生生物にとって生育環境が悪化するということは、生物である人間(ひと)にとっても環境が悪化することに繋がることだという視点は忘れてはならないように思う。