ひょんなことから、私が少年時代を過ごした町の商店街の近くを通った。
だが、目を覆いたくなるような光景がそこにあった。
かつては、この場所はこの町の中心地で、非常に華やかだったのだ。ウチが新聞を取っていた「上田新聞店」、カセットテープや切れた電球を買いに行った「エイト電器」、ジャイアンツの野球帽を購入した「植田洋品店」、祖父の痔の薬を買いに行った「屯田薬局」、お米を配達してもらった「木田商店」、ときたまお使いにでかけた「たかつフードストアー」、そこの息子さんと野球盤で遊んだ「湯本縫製」、髪を切りに行った時そこに置かれている少年マガジンを読むのが楽しみだった「理容のおかもと」・・・しかしその店たちは、全てシャッターが閉まっている・・・ああ、少年時代の思い出までが否定されてしまうかのような状況に、私は大いなるショックを受けた。
だがしかし、唯一、「中村商店」だけは今も健在だった。
懐かしさからそこに入ってみると、あのオバサンは今も元気そうであった。私はそこで「ベビースターラーメン」や「チュッパチャプス」を知り、プラモデルを購入していたものだ。オバサンに、「オカモト君とは同級生なんですよ」と話しかけてみると、「あ~、なんか見たことある人だな~と思ったんだ!」と屈託無く言ってくれた。
一緒に行った娘は、内部に陳列されている駄菓子は今やスーパーでもよく見かけるものなのに、「なんか、この店って、いいネ!」と感激していた。少量ながらも、未だにプラモデルが置かれているのも、また泣かせる。
この店だけが生き残っているということは、この店はこの地域の子供たちに、30年前と同じように愛されているということなのだろう。少子高齢化が進むこの時代。大変だと思うが、がんばってほしい。私は時々娘達をココに連れてこようと思う。