獅子丸のモノローグ

☆気まぐれ不定期コラム☆

私が愛したクルマたち(16) スバル・アルシオーネSVX

2014年06月14日 | カタログ倉庫


 時は1991年9月。私はその年に社会人になったが、バブルは、すでに、崩壊しはじめていた。
 そんなおり、タイミング悪くスバルからリリースされたスペシャリティ・カーが、この「アルシオーネSVX」だった。
 カタログ表紙の凝った紙質が、バブル時代の残り香を感じさせる。


 「私生活の王道を行こう」。
 向って右ページには、篠田桃紅氏作のリトグラフ「道」が掲載され、王道を視覚から表現。



 「90年代グランドツーリングの見識」。
 500マイルをいっきに駆け抜けることのできる快適さ。
 VTD-4WDシステムによる、かつてないスタビリティ。
 じつに大人っぽく、洗練されたイメージの、コピーが続く。


 かのジウジアーロがデザインしたという、グラッシーなキャノピー・キャビン。
 このガラスの曲面を、生産車としてリリースすることが出来た事実に、スバルの航空機メーカーとしての気概を感じる。
 ただし、フロントドアガラスの開口部はかなり小さく、スモーカーが乗った場合、煙を外に逃がすことが難しそうだが・・・




 つるんと面一なボディは、なめらかで、おまけにグラマラス。
 いすゞ・ピアッツァに相通じるイメージの、美しいクルマであった。
 先代にあたる「アルシオーネVX」が、カクカクのペキペキな70年代アニメ調スタイルだったのに対し、このSVXは、まさに目を見張るほどの進化ぶりだった。

 余談だが、高校生の頃の私は、スバルのクルマが大嫌いだった。
 アルシオーネVXとか、当時のレオーネとか、妙に四角くてカッコ悪く思えたのだ。
 30年経った今では、ああいったデザインも、個性として、大いに認めてしまっている私なのだが・・・


 先進的なスタイリングに対し、インパネは意外にオーソドックスである。
 この辺は、デジタルメーターを与えるなど、なにかシトロエン的な遊びゴコロがあってもよかったと思う。
 先代のアルシオーネVXは、結構派手にやってくれていたのだが、もしかしたら、その反省もあったのかもしれない。
 また、与えられている「木目調パネル」は、このクルマにはあまり似合っていないと、私個人は考える。


 ブラックの本革シートが、スペシャリティ感を演出。
 このクルマ。インテリアカラーはブラックしか無かったようだが、アイボリーあたりもきっと似合ったことと思う。


 スバルが説く、5つのグランドツーリング哲学。
 それは、「大人の感性を愉しませる、スポーツの資質」「VTD-4WDによる、スタビリティ&ファンtoドライブ」「500マイルをいっきに走り切る、快適性への見識」「走りへのロマンをかきたてる、豊かさの新表現」「高速グランドツーリングへの、安全性の基準」なのだ。


 低重心・低振動・低騒音の、水平対向6気筒エンジン“BOXER-6”。
 この時代。現代のスバルのキャッチフレーズである「シンメトリカルAWD」の表現は、まだ産まれていなかった。
 ちなみに、カタログ上の10モード燃費は、7.0km/L・・・この頃のスバル車は、燃費においては、あまり芳しくなかった。
 ガソリンタンク容量は70Lだったので、500マイル(≒800km)を走破するには、最低1回の給油が必要だったと思われる。
 だから、「500マイルをいっきに走り切る」ことは、事実上、無理だったのである。

 蛇足ながら、現代のスバル車は、「無給油で500マイルOK」です。


 アクティブセイフティの核としての位置付けである、4WD。
 それは、思いがけなく出会う雪やダート・高速走行中に気になる雨の路面や大きなわだち・アクセルワークに神経をつかう急コーナー・・・に悠然と対処するためのマストアイテムと、スバルは考えていたのである。
 その思想は、現在のスバルにおいても、まったくブレていない。


 「500マイルにおよぶロングツーリングをいっきに走りきるためのクオリティとしてATは不可欠な選択である」
 ・・・この当時は現代よりもMT比率がずっと高かったので、ATが4速しかなくても、コンプレインを述べる方はほとんど居なかったようだ。
 また、ステアリング操作に応じて後輪も舵角を持つ「4WS」も、プレリュード等を筆頭に、当時流行の技術であった。


 脚回りは、ダブルウィッシュボーンを凌駕するレベルまで高められたという、スバル熟成の「ストラットサスペンション」。


 荒々しいスポーツではなく、しなやかさを磨き上げた、サスチューニング。


 全面3次曲面UVガラスで構成される、360°ラウンドキャノピー。
 ルーフのみは、製造上の難しさから鉄板製ではあるが、一見ではそれを感じさせない仕上がり。


 キャビンの内装材にはエクセーヌを使用。
 その他、「8ウェイ電動パワーシート」「フルオートエアコン」「CDオートチェンジャー搭載高性能オーディオ」等、快適装備にもぬかりはない。


 4チャンネルABSは、「Version L」に標準装備だが、「Version E」はメーカーオプション。


 SRSエアバッグは、運転席のみで、しかも全車メーカーオプションだった。
 ここいらあたりに、流れた月日を感じずにはいられない。


 
 そして、装備品の数々。
 電動サンルーフは、魅力的なメーカーオプションだ。


 ステアリングは、チルト&テレスコ付き!
 分割式でないのが惜しいが、トランクスルーも装備。
 4WDであることも相まって、ゲレンデ・エキスプレスとしても活躍できそうだ。



 グレードは、シンプルに、2つ。
 「Version L」は、豪華仕様である。
 本革シートが奢られるのが、最大の相違点でありましょう。




 「Version E」も、装備は充実。
 ABSがメーカーオプションとなるのが惜しい。
 だが、「4WSが付かない」ことは、むしろこのグレードを積極的に選ぶ理由になるかもしれない。
 また、汗っかきの必需品「本革巻ステアリング」も、標準装備である。



 全長×前幅×全高は4625mm×1770mm×1300mm。
 登場した当時は大きいと感じたものだが、現在の水準では、なかなか扱いやすいサイズかもしれない。


 アルシオーネSVX。登場から四半世紀近くが過ぎたが、そのスタイリングは美しく、今なお輝きを失っていない。
 このような孤高のスペシャリティ・カーは、おそらく日本からは、もう二度と出てこないであろう。
 程度のいい中古が存在するうちに、一度は手にすべきクルマなのかもしれない。
 維持費は、かなり掛かりそうだが・・・(^_^;)




 そして、我が家に現存する、「モーターファン別冊 アルシオーネSVXのすべて」。
 これも、今となっては、貴重なお宝である。



 あらためて読んでみて驚いたのが、カーライフエッセイストの吉田由美さんが、この時代からモデルとしてこの本に登場していること!
 いやあ、吉田さん、今もお若いですよね。参りました。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チャロ君写真館 ’08.12.1~’10.11.28

チャロ君写真館 ’10.12.18~’11.12.24

チャロ君写真館 ’12.01.01~’12.12.24

チャロ君写真館 ’13.01.01~’13.12.29

チャロ君写真館 ’14.01.01~’14.12.27

チャロ君写真館 ’15.01.01~’15.12.27

Waterlogueチャロ君

チャロ君写真館 ’16.01.01~’16.06.25

チャロ君写真館 ’16.07.29~’16.12.28

チャロ君写真館 ’17.01.01~’17.12.21

チャロ君写真館 2018

チャロ君写真館 ’19.01.01~’19.09.07

チャロ君写真館 ’19.09.22~’19.12.31

チャロ君写真館 ’20.01.01~’20.04.27

チャロ君写真館 ’20.05.01~’20.08.26

チャロ君写真館 ’20.09.02~’20.12.31

チャロ君写真館 ’21.01.02~’21.07.21

チャロ君写真館 ’21.09.02~’21.12.31

チャロ君写真館 ’22.01.01~’22.04.30