読了・長門守の陰謀

藤沢周平、1983、『長門守の陰謀』、文集文庫
名古屋空港の売店で買った。藤沢周平はすべて読んでいるわけではないのだが、初めて読んだのもこういった感じの一冊だった。これまで読んだのは『暗殺の年輪』、『隠し剣孤影抄』、『隠し剣秋風抄』、『三屋清左右衛門残日録』、『夜消える』といったところか(これらは文庫のブックカバーにかかれていたものから覚えているものを抜き出したもの)。
藤沢周平の小説は、読み始めたのもここ数年のことだ。もともと何となくうっとうしく暗いイメージをもっていてあまり手に取ったことのない作者だったのだが、それもなかなかいいような感じになってきた。藤沢の主人公は、たいがい平凡な人生を送っている。しかし、何か光るものを持っていて、自らにいったん危機あればそれを発揮して撃退し、あるいは受け流し、その後も、淡々とした生活を送る。また、身の回りの変化についても激することなく従容と受け入れて行きつつも、ひとつきらりと光る読後感を残すのである。
文庫本の200ページあまりの本書も、機中の二時間ほどで読み終えてしまい、不愉快のことはもちろんなく、かといって思いが深いわけでもないが、重くこころに引っかかるわけでもないという、まことに心地よい読後感なのである。電車のなかで読んでいて思わず笑いこけたり、涙ぐんで鼻を鳴らすようなたぐいの本も、それはそれなりなのだけれど、少し恥ずかしい。その意味で、藤沢周平の本は、淡々としていていいのではないか。
名古屋空港の売店で買った。藤沢周平はすべて読んでいるわけではないのだが、初めて読んだのもこういった感じの一冊だった。これまで読んだのは『暗殺の年輪』、『隠し剣孤影抄』、『隠し剣秋風抄』、『三屋清左右衛門残日録』、『夜消える』といったところか(これらは文庫のブックカバーにかかれていたものから覚えているものを抜き出したもの)。
藤沢周平の小説は、読み始めたのもここ数年のことだ。もともと何となくうっとうしく暗いイメージをもっていてあまり手に取ったことのない作者だったのだが、それもなかなかいいような感じになってきた。藤沢の主人公は、たいがい平凡な人生を送っている。しかし、何か光るものを持っていて、自らにいったん危機あればそれを発揮して撃退し、あるいは受け流し、その後も、淡々とした生活を送る。また、身の回りの変化についても激することなく従容と受け入れて行きつつも、ひとつきらりと光る読後感を残すのである。
文庫本の200ページあまりの本書も、機中の二時間ほどで読み終えてしまい、不愉快のことはもちろんなく、かといって思いが深いわけでもないが、重くこころに引っかかるわけでもないという、まことに心地よい読後感なのである。電車のなかで読んでいて思わず笑いこけたり、涙ぐんで鼻を鳴らすようなたぐいの本も、それはそれなりなのだけれど、少し恥ずかしい。その意味で、藤沢周平の本は、淡々としていていいのではないか。

