おでん(今日は出汁の材料をどうしようかと思ったのだが、鴨の皮を売っていたのでこれにした。大根と鴨の皮、花椒、出汁昆布を入れて水から煮込む。大根があらかた柔らかくなったところで、味をつける。薄口醤油と日本酒。練り物、ゆで卵、豆腐、こんにゃくを入れて火を通す。和芥子とともに食す)
デボラ・ゴードン、2001、『アリはなぜ、ちゃんと働くのか:管理者なき行動パタンの不思議に迫る』、新潮OH!文庫
社会性昆虫のアリの生態は不思議だ。地中に巣穴を掘り、役割を分業し、女王アリをのぞきその寿命は一年ほどらしいが、それでも、整然と役割をこなす。女王といった名付けによって、女王が階層の頂点に立って支配しているかのようなイメージを描くが、女王自身も、次世代を生むという役割を黙々とはたす個体にすぎない。支配者ではない。
アリゾナの砂漠でアリの生態観察を長年にわたり継続した著者は本書の中で、不思議なアリの生態を示してくれる。研究室にもアリの巣があるらしい。アリたちの行動の秘密を解明するために、一部のアリを取り除いてみたり、索餌にでるアリたちを妨害したり、あるいは、特定のアリの巣を囲って、複数の巣穴間の個体たちの巣間の社会行動を観察する。アリの巣の囲いを取り去って見ると、一定の混乱の後、再びある種の秩序が生まれる。同一種のアリでも、別の女王が生んだ別々の巣穴のアリたちは、お互い出身の違いを判別し、抗争をするのだが、いつも争う戦争状態にある訳ではない。一定の秩序の中にあるのである。
また、巣がつくられてからの年数によって、アリたちの行動や役割を受け持つ個体数も異なる。巣からでたアリたちの行動範囲も異なる。
さまざまな調査に基づき、個々のアリたちが教えられた訳でも命令された訳でもなく、あらかじめ、プログラム化された手順に従って(おそらく!)、状況の変化に対応するのがとても興味深い。女王の役割が変化する訳ではないが、女王以外の役割をもつ個体は、状況に応じて役割を切り替える事が出来る。
訳者の池田清彦は構造生物学者だが、どうしても、社会性昆虫のアリの理解をネオ・ダーウィニズムで理解しようとする著者にたいして、別の見方があるでしょうと解説でのべている。アリの社会についての解明は、複雑系などの理解を通じてのまた別の展開が可能であろうと思われる。
社会的動物である人間も、まあ、アリと似たり寄ったりだと思えてきた。人間はアリと違って、個体としての意識を持ち、自由に生きるといっても、自ずと行動に制約がある。知らず知らずのうちに、一定の行動規範の中に収まっている。規範から外れると排除(法的に、あるいは、社会的に)されるわけだし、突飛な事も、社会から全く無縁で生き抜く事は出来ない。人間も面白い。月並みな結論だけれど。
2008-02-08 07:52:48 |
読書 |
| Trackback ( 0 )
|
|
|