| 誓願
マーガレット アトウッド 早川書房 |
マーガレット・アトウッド、2020、『誓願』、早川書房
『侍女の物語』の続編。前作で強面であったリディア小母の秘密が明かされる。
男中心の神権政権(キリスト教の一派で「聖書」の箴言が本書に散りばめられる)であるギレアデ共和国(アメリカ合衆国をクーデタによって崩壊させて成立した)の発足当初から、男中心社会の恐怖政治の中で女性のあり方のシステムづくり(焚書によって文字を追放し、女性を生殖に関わる2つの階級「妻」と「侍女」、関わらない2つの階級「小母」と「マーサ(召使)」、唯一書物など文字に関わることのできる女性で、階級の振り分けに関わり権力に寄り添い男性中心社会に従順な次世代の女性を養成する「小母」。この「小母」がが残る3つの女性階級を支配し、「司令官」たちを頂点とする男性中心システムに忠誠を尽くす)に携わってきた元判事であった彼女の手記が本書の中心となって本書は描かれる。
また、「誓願者」(生殖を拒否した「小母」候補)若いアグネス(ヴィクトリア小母)とジェイド(デイジー、「幼子ニコール」としてギレアデ生まれだが、カナダに育ち、密使としてギレアデに送り込まれた)の手記が、立場の違う女性の考えを象徴して組み合わされる。すでに、ネタバレではあるが、これ以上はふれずに置く。
さて、前作の『侍女の物語』が映画化されたとき(1991年)よりも、インパクトをもってうけ止められたのがリバイバルされてテレビドラマ化されたとき(2017年)が問題である。アメリカ合衆国でトランプ大統領が誕生し、様々なハラスメントの前歴に飾られる最高権力者が誕生し、マスコミや女性団体からの批判を全く無視するかれは、まさに『侍女の物語』の「司令官」のように写った。また、そのような彼を批判する女性もあれば、支持する女性もあった。本作では、ギレアデ共和国成立のクーデタについても描かれるのだが、2021年1月6日のアメリカ合衆国国会議事堂襲撃事件はまさに、本書がフィクションであるにも関わらずリアリティを持つ予言的な物語であったことを示してしまった。
両書を読むべしだな!