『日米交換船』
ずいぶん長く書架に眠っていたが(購入してまもなく読んだ形跡があったが初めから読み直した)、ようやく読了することができた。著者のひとり鶴見俊輔にもちろん直接の面識はないが、遠に亡くなっている恩師と同世代なので、戦争前後の話に絡んで「思想の科学」関連の話しを聞いたことがある。それはそれとして、本書で繰り返されるのは、アメリカで暮らし日本への帰還を選択した交換船に乗船した人々を鏡とした日本人論、とくには、「転向」というキーワードだろう。くわえて、彼らの存在(あるいは不在)が結果的には戦後日本の、ひいては現代日本を形作ってしまっているということでもある。
本書は日米交換船から60年をへて記述されたものなので(資料との照合が行われたとのことだが)、正確性を云々するというよりも、むしろ、原点を振り返るという意味が大きかったということだろう。
合わせて、黒川創の『鶴見俊輔伝』を読んでいる。