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「もったいない」と働きかける

2013年07月14日 | 読書
 録りためておいた番組のなかに,NHK「switch インタビュー 達人達」があって,注目している佐藤可士和と小山薫堂が対談する回を興味深く見た。

 佐藤可士和の『超整理術』を読んだ時には,頷きとため息ばかりが出たのを覚えている。番組後半にその仕事場が撮影場所になっていて,写真でみていたその通りであったことにまたため息だった。

 一方の小山薫堂は,正反対とはいわないが,どこかごちゃごちゃしている,物がなかなか捨てられないそうで,一気に親近感が湧いた。

 新書が出ているというので取り寄せて読んでみた。

 『もったいない主義』(小山薫堂  幻冬舎新書)

 番組でも語っていた「もったいない」という考え方を展開したものだ。


 小山が語る「もったいない」は,いわゆる節約とは異なる。
 モノを大事に使うというより,使いこなす,新しい価値を見出すといったことに視点が向いている。
 単純に言えば「発想法」の一つといっていいだろう。

 顕著な例が,この本でも番組でも冒頭に出てきた,事務所の受付でパンを販売していることだ。
 受付にただ人を置いておくことの「もったいなさ」を感じることは,言われてみればもっともなことだけに,凡人には本当に難しいと思う。

 常識ということに安心を感じたり,受動的な仕事に慣れたりしてしまうと,とことん見えなくなってくる。
 かなり意識的に日常の行動習慣や思考習慣を変えて,やっとほんの少し見える程度なのかもしれない。

 実に読みやすい内容だった。
 そして,なんとなくその気にさせられるから,小山の「もったいない」は徹底している。たかだか新書一冊で読み手を満足させられるのだから。

 引用したい,いくつもの文章がある。
 変な話だが,もったいないから載せないのではなくて,みんなに知ってもらわなければ読んだことがもったいないと思う発想を持つことがこの本の核にあったと今思った。

 従って,以下は勝手に選んだ名言集ベスト3。


 過去に失敗したことに再チャレンジしてみて,やっぱり失敗したら納得がいくし,うまくいけば成長の喜びが味わえる。過去の失敗も,そのままにしておくと「もったいない」わけです。

 僕が腹が立つのは,前年比うんぬんという言い方です。これこそ,閾値を挙げていく発想です。(中略)「前年比を下回っちゃいけない」というような考え方を吹き込まれているうちに,どこもかしこもいつの間にか拡大路線をとってしまう。

 ネガティブな感情に時間を奪われているのは「もったいない」。(中略)人生は有限です。ご飯だってあと何回食べられるかわからない。そのことだけ考えても,ネガティブな感情に駆られている暇なんてないと思うのです。



 優れているデザイナーやディレクターと称される人たちは,まず自分の時間や空間をデザインしていることに気づく。