すぷりんぐぶろぐ

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「アカンヤンカ」で風を

2013年07月16日 | 読書
 佐藤可士和×小山薫堂の対談を見終わって,ふと思い出したことがあった。

 以前,NHKのプロフェッショナル仕事の流儀に登場した高知のデザイナー,梅原真のことだ。
 このブログにも感想を書いている。
 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/s/%C7%DF%B8%B6%BF%BF


 小山の新書とともに何か著書はないかと検索して,手ごろな?一冊を一緒に注文した。

 『梅原デザインはまっすぐだ!』(梅原真×原研哉 はとり文庫)

 原研哉という名前にも見覚えがある。岩波書店の『図書』で読んだときがある。確か建築家かデザイナーだったと思う。

 この本は,『ニッポンの風景をつくりなおせ―一次産業×デザイン=風景』というがっしりとした単行本の「副読本」という位置づけで,対談記録が文庫化されたようである。
 本の題名のように,原が主に聞き役という位置づけであるが,双方ともなかなかいいことを語っている。

 一昨日書いた小山の「もったいない」とほとんど通底している言葉があった。
 それは梅原のトレードマーク?的な一言とされている。

 「アカンヤンカ」

 関西,大阪的なノリで叱りつけるこの一言で,多くの仕事が動かされていく。デザインが始まっていく。
 梅原が手掛けるのは,地方の一次産業に関わるものが多い。
 やはりそこにあるモノが生かしきれていない,眠っている価値に目をつけて,「アカンヤンカ」で目覚めさせるような働きをしていることがわかる。

 漁師が焼いたカツオのタタキ,原材料から商品に昇格させた青のり,間伐材を利用した入浴グッズなど,すべてが当てはまる。まったく「もったいない」の発想と同じである。

 違いがあるとすれば,梅原の方が「地方」にこだわるという点になるかもしれないが,それもこの対談で語られている「東京も,日本もローカル」という視点に立てば大差はない。
 またそういう視点こそが,価値を掘り起こすことに結びつく。

 疲弊した地方…こうした言い方もパターン化されているように思う。
 そういったイメージを押しつけられていないか,慎重に目配せするべきだ。
 それと同時に,淡々と元気な日常を作っていこうとする動きを大事にしたい。本県で言えば,「あきたびじょん」よりは「のんびり」という発想の方がより共感できるなあ。

 さて,梅原のまっすぐで豪快な語りも面白いが,それを受ける原の言葉にも感じ入った。

 みんなデザイナーになって飛ぶ側になろうと思わなくとも,風になればいいと思うわけ。

 「アカンヤンカ」で風を巻き起こす人も大事だが,それを飛ばし続けさせる風の存在はもっと大事だ。