『オー! ファーザー』(伊坂幸太郎 新潮文庫)
ずいぶん前に新聞連載された作品らしい。
10年に単行本,そして先月文庫化された。
物語は「4人」の父親と一緒に住んでいる高校生が主人公。この設定も,会話のこ洒落た感も,読みだしてすぐ「ああ,伊坂だなあ」と思うが,最初は会話文の連続が多い気がして,正直若干読みにくさを感じた。
新聞連載という関係もあるのだろうか。
それはともかく,いつものようにエンターテイメントとして最後まで楽しめた。
1人の母親に父親4人という,この枠組み自体は似たような話もあるようだが,キャラを立たせる名人の伊坂にまたぴったりという気がした。
またいつものように,惹句,警句の類はたくさんあるが,今回は父親の一人,大学に勤める「悟」の人生論?が面白い。
頭の良さを「発想力」「柔軟な考え」といい,次の台詞が結び付けられる。
「人間っていうのは,抽象的な問題が苦手なんだ。抽象的な問題から逃げたくなる。そこで逃げずに,自分に分かるように問題を受け入れて,大雑把に解読しようとすることは大事だ。」
そのためには「大雑把な数値」を知っていればいいと言う。
この発想はいろいろな場合に当てはまるだろうと予想できる。
さて,物語はまた多くの結末と同様,痛快さを感じさせながら閉じられるが,いつかこの人物たちが,どこかで登場すると思うと,楽しみでたまらない。
新刊に出ているということも解説に書かれてあった。
その文庫版解説を書いているのが島田雅彦。
「最後に…」と記された数行が手痛い現実を知らせてくれる。一部だけ引用する。
教育の場で最も求められることの一つは「世の残酷さ」「現実の理不尽さ」に向き合う勇気を与えることだと思う。
多くの人が理解しているが,現実場面で一番通用しないことでもある。
ずいぶん前に新聞連載された作品らしい。
10年に単行本,そして先月文庫化された。
物語は「4人」の父親と一緒に住んでいる高校生が主人公。この設定も,会話のこ洒落た感も,読みだしてすぐ「ああ,伊坂だなあ」と思うが,最初は会話文の連続が多い気がして,正直若干読みにくさを感じた。
新聞連載という関係もあるのだろうか。
それはともかく,いつものようにエンターテイメントとして最後まで楽しめた。
1人の母親に父親4人という,この枠組み自体は似たような話もあるようだが,キャラを立たせる名人の伊坂にまたぴったりという気がした。
またいつものように,惹句,警句の類はたくさんあるが,今回は父親の一人,大学に勤める「悟」の人生論?が面白い。
頭の良さを「発想力」「柔軟な考え」といい,次の台詞が結び付けられる。
「人間っていうのは,抽象的な問題が苦手なんだ。抽象的な問題から逃げたくなる。そこで逃げずに,自分に分かるように問題を受け入れて,大雑把に解読しようとすることは大事だ。」
そのためには「大雑把な数値」を知っていればいいと言う。
この発想はいろいろな場合に当てはまるだろうと予想できる。
さて,物語はまた多くの結末と同様,痛快さを感じさせながら閉じられるが,いつかこの人物たちが,どこかで登場すると思うと,楽しみでたまらない。
新刊に出ているということも解説に書かれてあった。
その文庫版解説を書いているのが島田雅彦。
「最後に…」と記された数行が手痛い現実を知らせてくれる。一部だけ引用する。
教育の場で最も求められることの一つは「世の残酷さ」「現実の理不尽さ」に向き合う勇気を与えることだと思う。
多くの人が理解しているが,現実場面で一番通用しないことでもある。