すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

つまらなさの価値

2019年05月14日 | 読書
2019読了46
 『読書の価値』(森 博嗣  NHK出版新書)


 3月末頃から読書論的な新書に手を出している。いくつか読んだが、この本は読書より前に「価値」とは何かを考えさせてくれた。モノやコトの価値とは、結局のところ主観的である。この著者は独特の思考をする人であることは承知していたが、やはりこの本でも本当にあっと思わせられる。まえがきに結論がある。
 
 「僕が本から得た最大の価値は「僕が面白かった」という部分にある。だから、もし同じ体験をしたいなら、各自が自分で自分を感動させる本を見つけることである。」


 この、一見突き放したような結論を踏まえて展開される「読書の価値」は、結構広く、そして深かった。著者は「本というものは、人とほぼ同じ」という見方をする。ゆえに「本選びは、結局は人選び」とし、方向性は次の二つが求められるとしている。「未知」と「確認」。関係性を築く心理は言われればその通り。


 「本=人=作者」という捉え方も含まれるが、著者はもっと広く考えている。本という存在が個の人間に近く、様々関係を築けると考えている。だから「つまらない本」にも価値があり、例えば本選びに慎重になるとか、つまらない理由を探すことによって身につく技術もあると語る。その発想の客観性にも驚いた。


2019読了47
 『〇〇〇〇』(〇〇〇〇〇  文春文庫)


 久しぶりに「つまらないな」と感じる文庫を読んだ。有名な作家である。かつてはベストセラーもある。エッセイと短編小説が連なっている特殊な構成だが、試みはよいとしても文章がいいと思えない。難しい、馴染めないのではなくその逆だ。陳腐なギャグのように見えるのは「つまらない自分」に近すぎると気づいた。
(ファンに怒られると怖いので伏字にした意気地なしです)