すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

誰しも自作自演の人生

2019年05月10日 | 読書
 楽しく読了した『思わず考えちゃう』(ヨシタケシンスケ)。ではどんなPRが書いてあるのかと『波』5月号をめくってみた。最初の対談は相手が女優寺島しのぶ。圧の強いイメージがある人だからなあ、と読むと案の定。編集上はバランスがいいが、ファンという寺島の「本当に素敵」という一方的攻撃が目立った。


 「この本は、自由っていう事が、隠れテーマじゃないですか」と鋭く切り込む寺島。その読み方はかなり的を射ている。「難しいですよね」と引き気味のヨシタケが、放った言葉もかなり哲学的だ。「自由って何だろう、って大きなテーマですけど、その答えが自分なりに見つかった人が、幸せに近い状態になれるかなと。


 書評は脳科学の専門家である池谷裕二。「人生の応援歌」と題されている。さすが、ヨシタケの視点を心理学用語と重ね、ある事象を別の枠組みでとらえ新しい見方が学べる本だと絶賛している。端的なこの評価が象徴的だ。「この本はリフレーミングに次ぐリフレーミングの連続。もはやリフレーミングの暴風雨です。


 ヨシタケ自身はそのことを「めんどうくさい感じ」と自嘲しているようで、その雰囲気もまた面白い。しかし、それは感情に流されないために必要なことだろうと思う。池谷が取り上げた「このこどく感はきっと何かの役に立つ」のように、俯瞰的な、未来志向的な一言を呟けるためには、やはり考えるしかないのだ。


 「脳は自分の都合のいいように物語をつくりかえる」というような言い方を池谷は自著で示している。そのいい例がヨシタケの本にも載っているとして、独特な言い回しでこのように結んでいる。「(自分に都合のよい)世界が自作自演であることを、当の本人が忘れている。それが人間の本質であり、人生そのものです。