すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

考えちゃえば、いい事ある

2019年05月09日 | 読書
 新潮社のPR誌『波』5月号に【ヨシタケシンスケ『思わず考えちゃう』刊行記念特集】とあり、対談と書評が載っていた。めったにないことだが、そこに目を通す前に発刊された本を読んでおこうと思った。絵本というジャンルではなくエッセイのようだ。『波』表紙にあるヨシタケの筆蹟もよかった。こう書いている。

 日々の生活の中で、
 考えてどうにかなることは
 2割くらい、ある。



2019読了45
 『思わず考えちゃう』(ヨシタケシンスケ  新潮社)


 大事なことは「ある。」だ。考えてもどうにもならない、しようがないではなくて、「2割くらい、ある。」。こういう落とし方が自分は好きなんだろうなと思った。「思わず考えちゃう」は妄想癖を持つ人間の姿だろうけど、その習性は日常の生活に生かせるし「考え方」を学べば、よりましな人生に向かうはずだと信じる。


 そういう「考え方」にあふれた本だと思う。それはきっと、人間(大きすぎるので「自分」と言い換えたほうがいいかもしれないが)をまるごと認める筆者の感性によるものだ。例えば、次のような項目、本当にセンスを感じる。

 よごれて洗って
 よごれて洗って。
 いい感じになりなさい。



 よごれちゃう、きたなくなっちゃうと思って躊躇したり、踏み出せなかったりしたとき、こんな言葉があったら元気をもらえる。そのうえ何度も洗っていくうちに「いい感じの風合いになるじゃない」なんて、ジーンズのCMみたいな感じに思えたら、きっと多少の失敗も挫折も乗り越えていける気がするではないか。


 特に第3章は読み応えありで、冒頭の「できないことを できないままにするのが 仕事」は考えさせる。一般的には逆のことだと承知の上で、著者は「できないことをそのままにするっていう覚悟の決め方」もあるのではないかと言う。同調圧力が強いこの社会の中で、ヨシタケのつぶやきは一つの受け皿になる。