すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

目がショボショボ、秋読書

2019年09月23日 | 読書
 夏終盤あたりから、少し読書ペースが落ちてきたかな。
 目標を持って読書しているわけではないが、体調のバロメーター的な一部になっている気がする。

 目がショボショボというのもあるか。
 しかし、そのせいなのか、見えてくる箇所が以前と違っているのもまた楽しい。


2019読了86
 『架空の球を追う』(森 絵都  文春文庫)


 再読。読んだ後に以前のメモを読み返してみたら、少し印象が違う。今回圧倒的に心に迫ってきたのは最終話「彼らが失ったものと失わなかったもの」。わずか7ページの掌編である。
 
 スペインの空港で買ったばかりのワインが粗悪な箱から落ちてしまった英国人夫婦の様子を描いている。わずか十分間の出来事に人生の大事な要素が詰まっている、とあれこれ書き連ねたい自分の気持ちが陳腐に感じるほどの鮮やかさがある。
「最後まで一言も発することなく」人が向かう場には、煌きがある。


2019読了87
 『悩むことはない』(金子兜太  文春文庫)

 昨年没した俳句界の重鎮。句に馴染みがあるわけではないが、何冊かエッセイは読んでいる。激しさと淡々さが同居している人だなといつも感じる。
 今回、心に残ったのは「『即物的』は東洋的で、欧米的なものの考え方は『対物的』」という箇所。
 かつてはよく言われた考え方だそうだ。俳句はまさしく即物的な文芸だ。それ以上に考え方としてこの二つの比較は興味深い。

 現実世界は、明らかに対物的な思考が拡大しているのではないか。
 どんなふうに生きるかと大きく関わっていると気づく。