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着地の美しさと満足感

2019年09月24日 | 読書
 運動神経はなかったけれど、小学生の頃に水泳と跳び箱は人並にできていた。

 特に跳び箱(当時は台形型だけでなく、長方形型のものもあった)の最高8段を挑み、越した快感は今でも覚えている。

 自分が教える立場になろうと思った頃(大学の授業だと思う)、初めて美しさということを意識し始めた。
 跳び箱であれば、助走、踏み切り、跳躍姿勢、そして着地。
 器械運動の特性ともいえるのだろうが、特に着地が決まると、何より収まりがよく思えた。


Volume.178
 「若い人のように指は動かないし、僕の跳び箱の高さはすごく低いんだけれど、でも着地の美しさにだけは自信があります。」


 ポップスからジャズへと転身したミュージシャン大江千里が、インタビューで答えた言葉である。
 47歳でそれまでの活動を中止し、単身渡米してジャズを学び始めたという。

 もちろんハードルは高く、簡単に成功を収めることはできないわけだが、培ってきたポップスのキャリアが、ジャズを学び表現し始めることに深みや広がりを与えてくれているようだ。


 「着地の美しさ」とはもちろん技術的な要素と言っていい。
 しかし、それ以上に「柔らかさ」の表現であるような気がする。
 また、その動きに対する満足感が強く表れるポイントでもある。

 一連の動作を満足して終えられれば、また次の一歩も自信を持ちながら踏み出せる。