和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

文字が寒々と。

2010-01-12 | 手紙
1月の新聞。その歌壇・俳壇。

読売俳壇1月11日
正木ゆう子選の最初

 逆境を逆さまにして枇杷(びわ)咲きぬ   千葉県 滝沢ゆき子

【評】逆境を逆さにしたら順境になるのか。或いは逆手に取るのか。このちょっと意味不明の言い回しが面白い。俳句というもの、時々は読み解けないところを楽しむのもいい。

ちなみに、読売新聞1月4日「新春を詠む」での正木ゆう子氏の俳句は

  松籟(しょうらい)に風を知りたる初景色

  大樟(おおくす)のこゑ聞きにゆく大旦(おおあした)


1月11日の読売歌壇。
岡野弘彦選のはじまりは

 仕返しをしたき男が一人おったシベリアを語らぬ父の一言
           草加市 斎藤宏遠

【評】シベリアの抑留生活を体験した人達は誰も語ることをしない。作者の亡き父も、この短い一言のほかは語らなかった。この歌の上の句は呪言(じゅげん)の重さで心に残る。


さてっと。
毎日新聞1月10日の毎日歌壇。
その伊藤一彦選が、面白かった。

一筆も手書きのあとのない賀状 住所名前も他人のごとし
            幸手市 川俣英男
【評】手書きのあとの少しもない賀状のよそよそしさを下の句で端的に表現。今週は以下の二首も賀状の歌である。

「手書き派は少ないけれどガンバロ!」と友との賀状手書き同盟
            厚木市 伊藤 慶

数秒で読み捨てられるかも知れぬ年賀葉書を丹念に書く
            能美市 山上秋恵


普通は、見過ごすだろう歌なのですが、
今回はちょっと違いました。思い浮かんぶ文があります。

外山滋比古著「ことばの教養」(中公文庫)。そこに

「せっかく印刷したのだから、手書きの文字などでよごし?たくないという気になるのかもしれない。印刷しただけの文字が寒々と並んだ年賀状を出す。若いときはものを知らない。それはしかたがないが、ものを学ぼうという心のすくないのは困る。気をつけてみると、趣を解するほどの人は多く、印刷した賀状でも何かひとこと手書きの文句を添えてくる。それを見ればいいなと思うだろう。そしたら、自分も一行でも半行でもメッセージを書き添える習慣をつけるのである。
印刷だけの賀状と添え書きのあるものと、もらってどちらがうれしいかわからないような人は心が荒れている。情操教育を受け直さないといけない。それが必要なのが若い人に多いのは当然だが、いい年をした、いわゆるエライ人にもあるのだからおもしろい。」(p69)

コメント
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