和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

すっとこめかして、どこ行くの。

2019-05-25 | 本棚並べ
本棚から
梅棹忠夫・鶴見俊輔・河合隼雄の鼎談本
「丁丁発止」(かもがわ出版・1998年)を持ってくる。

鶴見俊輔いわく。

「エッセーというのは
自分のアイデアを置いて、
論争点をつくる方法です。」
(p99)

こんな、言葉がさりげなくあり、
私など、考え込んでしまう(笑)。

それはそうと、この鼎談で柳田国男が
出てくる箇所があり、引用したくなる。
途中からですが、私には気になる箇所。



梅棹】 事実、柳田さんの書いたものは
ほとんど英訳されていないと思いますよ。

鶴見】 そう。それはね、
梅棹さんの問題になるんだけども、
言葉ぐせの問題になるんだね。言葉遣いの問題ね。

柳田国男の文章は、
私はアメリカで教育を受けたから
初めは読むのが非常に困難だった。
というのは、
私が勉強したやり方というのは、
必ず抽象名詞に集約して、
コンデンスして覚えるんです。
抽象名詞として把握して記憶に繰り入れる。

ところが柳田国男は抽象名詞で止めない。
ある状況でこういうことが起こった、という話なんだ。
そこで重大なのは状況であり、動詞であり、形容詞なんだ。

柳田国男に話を聞いたことがあるんだけど、
日本の学問用語をどうするかというと、
動詞と形容詞をもっと活用しなければならないと言うんだ。
たとえば『すっとこめかして、どこに行くのか』の
『すっとこめかして』という語感を
どういうふうにして日本の学術語のなかに生かすか。
そういうことが柳田国男の問題なんだ。

柳田国男を読んでいて重大なのは、
そういうところにある。
あるところで、雨が降ってるのに
急がないで歩いている人がいたから、
『どうしたのか』と言ったら、
『向こうも降っとる』って答えたと言うんだね。
だから、急いでもしょうがないんだ(笑)。
重大なのは、そういうエピソードなんだ。

そういうものによって、柳田国男は記憶していて、
柳田国男の世界が展開するわけですね。
だから、現代ヨーロッパの学術語とちがうんですよ。
そういうところからの話なんだね。
・・・・(p71~72)


さてっと、柳田国男を読んでいない(笑)。
柳田国男の本を前にして、
『こんなん読まな損やで』と言われているような。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こんなん読まな損やで。

2019-05-25 | 本棚並べ
本棚から、取り出したのは、
河合隼雄・長田弘「子どもの本の森へ」(岩波書店)。

まず、はじめのほうに、
ツンドク本の講釈があります(笑)。

長田】 本はほんとうは必要な家具でもある。
ツンドクしてちゃんと時間をかけないとだめで、
葡萄酒みたいに、ちゃんと寝かせておいてこそ、
おいしく熟成するものですね。

河合】 寝かせてなかったらだめです。

長田】 いまはその寝かせ方が、
本に足りないんじゃないかなあって思いますね。

河合】 書棚に入れておくといいんですよ。
・・・スーパー・マーケットなんか上手ですよ。
いろいろ分けて置いてるけど、別に、レジのところに
ちょこちょこおもしろそうなものが置いてある。
あんな風に、本も、家でも図書館でも、
部屋の入り口なんかに、おもしろい本を
さりげなく置いといたらいいですね。

長田】・・・・たとえば図書館へ行けば、
読んでない本、読まないだろう本が圧倒的
なのが当たり前で、読んでない本、知らない本が
いっぱいある図書館が、いい図書館。

河合】 そのとおりですね。ぼくは
『読みなさい』って言わないいんです。
『こんなん読まな損やで、こんなおもしろい本』
と言うことにしてる。

(p6~8)

う~ん。スーパー・マーケットのレジまわり。
本をじっくり読めない私。そう自覚しておりますが、
本をさりげなく置く。これなら私にもできそうです。


ちなみに、『こんなん読まな損やで』という、
この掛け声は、関東標準語じゃないですよね。
けれども、決めゼリフは、こうじゃなければ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする