おやじのつぶやき

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読書「象徴天皇という物語」(赤坂憲雄)「国民の天皇」「天皇制国家と宗教」

2012-03-18 21:26:39 | 読書無限
 先日、憲法改正を党是とする自民党政策のたたき台として憲法原案の中に、「天皇を元首と定める」という案が登場した。自民党内、あるいはマスコミも含めて、ではさっそく現憲法の「象徴として」の天皇の位置づけをめぐる議論・論争にも展開していくかと思いきや、今のところ、どうもそうならず、天皇に関する現憲法の規定・意図のうちに収まりそうな気配です。
 たしかに自民党をはじめ、保守、改憲派の主眼・意図は、「自主憲法制定」にありますが、その狙いの中心が、「第1条」及び「第9条」改「正」にあるのは言うまでもありません。「第9条」について、最近も「大阪維新の会」をはじめ、視点が向けられていますが、皇室問題は、小泉首相時代に第2条「皇位継承」問題が大きな話題(皇室典範に関する)になりましたが、男子が生まれるや下火になり、第1条については、自民党内からも今の象徴天皇というあり方でいいのだ、というのが多く出されてきているらしい。
 けれども、現天皇の病気、衰え、皇太子の立場、皇太子妃の病状など、そう先ではない大きな課題として取り上げられることは必至で、その上に立つと、現行の政治体制として、天皇をどう位置づけるかについては、今もなお極めて重大な事柄のはずです。大きな関心がありつつも、あえて? 触れずにいる、スルーさせている言論界。いささかの不満を禁じ得ません。
 特に、明治憲法下において、天皇は絶対的な政治権力を有していたとする立場などから、昭和天皇の戦争責任問題(それも、天皇の生存中は多くは語られず、天皇の死を契機にした、遅ればせの議論にすぎなかった)が持ち出されましたが、いっとき、マスコミ界を賑わしただけでした。
 まして、戦後の民主主義制度・理念とは相反する、国家の制度・機構の根幹をなすものとして「天皇」制をとらえ、これを廃絶すべきだという一部の主張・議論は、敗戦後の一時期を除いて、多くの国民の関心を呼ぶことはありませんでした。さらに、戦争責任論については、当事者である昭和天皇の死をもって、その後はほとんど議論されずに終わってしまっています。
 この著、24、5年前、昭和天皇の病気をきっかけとした自粛ムード、天皇の死、大葬、皇位継承などにまつわる儀式、大嘗祭を始めおびただしい祭祀・・・、めまぐるしく動く中、1990年に刊行されたものの文庫化(ちくま学芸文庫)です。
 「象徴と宗教のはざまにひき裂かれた、天皇という名の古さびた王権はいま、ようやく空虚の中心へと到る道行きを歩みだしたのかもしれない。空虚の中心、それは過去ではなく、未来の風景としてのみ有効性をもちうる、天皇のイメージでなければならない。神から象徴へ、そして空虚へと到る道行きの涯てに、かぎりなくただの人間に近づいてゆく天皇の、わたしたちと変わらぬ等身大の姿が、いま、くっきりと像を結びはじめたところだ。何年先の未来になるのかはしれない。が、それは不可逆にわたしたちが辿る道行きである。あらゆる王権の歴史に、・・・例外はない。」
 末尾の一文である。実に気負った表現ですが、「道行き」という表現が意味深です。当時37歳、少壮の学者である筆者の先見の明を感じずにはいられません。天皇夫妻と皇太子夫妻・子の陳腐な人間模様。それを苦虫を潰してあれこれ論評する識者たち、マスコミ・・・。女性週刊誌などで書いている程度では済まされない、政治的現実が否応なしに再び登場する、23年前を教訓としてそれにどう対応するか、そういう時期に差し掛かっています、今の私たちは。
 こんな時だからこそと、まとめて3冊読み進めています。「象徴天皇という物語」の他の2冊。いずれも「名著」だと思います。

・「天皇制国家と宗教」(村上重良)講談社学術文庫 
・「国民の天皇」(ケネス・ルオフ)岩波現代文庫

日本国憲法
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条【皇位の継承】皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
第三条【天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認】天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条【天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任】1 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第五条【摂政】皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
第六条【天皇の任命権】1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条【天皇の国事行為】天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
第八条【皇室の財産授受】皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
第九条【戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認】1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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