ベルイマン流トラウマ対処法（２）

（以下ネタバレにご注意）

　「夏の遊び」は、ベルイマン監督が小学生のころ書いた小説「マリー」を自身で脚色した映画で、ジャン＝リュック・ゴダール監督は「最も美しい映画」と絶賛している。
　基本的なストーリーは、「恋人との死別」で、表面的な筋立て自体に目新しいところはなく、殆どの人が既視感を抱くのではないかと思われる。
　主人公：マリーは、どこか暗い陰のある２８歳のバレリーナである。
　彼女は、１３年前の発表会で同年代の男性：ヘンリックと出会い、恋に落ちる。
　二人は別荘のある島でひと夏（「宝石のような日々」）を過ごし、夏休み最後の日に、ヘンリックが磯で「飛び込み」（＝「夏の遊び」）をやろうと提案し、自ら実行する。
　ところが、飛び込んだ先が岩だったため、ヘンリックは頭部を負傷し、病院に搬送された後、死んでしまう。
　・・・ここまでは特に変わったところのないストーリーだが、マリーが出会いの日に唐突に「死」について語るところからも明らかなとおり、ストーリーを通じて「死」が通奏低音のように響いているのが特徴的である。
　例えば、「（マリーの母が死んでから）時間は止まってしまった」と嘆く暗鬱な性格の伯父、突然止まる音楽、（恐怖感を与える）フクロウの鳴き声などは、全て「死」の予兆であると考えると分かりやすい。
　ヘンリックの死に直面したマリーは、「神様はいない」、「死ぬまで憎んでやる」と神様（＝運命）に対する恨みの言葉を述べる。
　これを見た伯父は、彼女に、「それが人生」、「壁の作り方を教えてあげよう」と、自分と周囲の世界との間に「壁」を作って遮断する方法を教える。
　さて、マリーは、「壁」を作ることによって、「恋人との死別」という人生最大のトラウマを克服することが出来たのだろうか？