Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

職業バイアス

2021年09月26日 06時30分32秒 | Weblog
日本文学史序説 (下) 加藤 周一 著
 「従来の狭い文学概念を離れ、小説や詩歌はもとより、思想・宗教・歴史・農民一揆の檄文にいたるまでを“文学”として視野に収め、壮大なスケールのもとに日本人の精神活動のダイナミズムをとらえた、卓抜な日本文化・思想史。

 日本文学(というよりは日本人の思想や日本文化)全体を巨視的に捉えた評論で、マルクス主義への評価の点などを除けば、今なお通用するハイレベルな内容と思われる。
 傑作という評価が多いが、全くキズがないかと言えば、必ずしもそうではない。
 私見では、一番目立つのは、「職業バイアス」である。
 例えば、「木下杢太郎と詩人たち」(p424~440)のくだり。
 内容面はともかく、ここに16ページ分を割いておきながら、川端康成に関する記述が、横光利一と井伏鱒二に関する記述を含めてわずか(実質)3ページ分(p468~472)しかないのはどういうことだろうか?
 加藤氏は、自分と同じ医者との「二足の草鞋」を履いた文学者(木下杢太郎や斎藤茂吉など)には好意的で、厚く論じ過ぎる傾向があるようだ。
 これを、「職業バイアス」と呼んでもよいように思うのである。
 
コメント
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