「キッチン」という小説は、「強い父」はいなくとも、「キッチン」(及び冷蔵庫などの家電製品)と「優しさ」があれば、人間は生きていけることを示した。
だが、現実の世界は、小説よりもずっと厳しく、それだけで生きていくのは難しい。
「キッチン」が発行された1988年(昭和63年)、みかげや雄一と同じように、父を失った子供たちの悲劇が起こっていた。
いわゆる「巣鴨子供置き去り事件」であり、この事件をモチーフにして、是枝裕和監督が映画「誰も知らない」をつくったことは余りにも有名である。
巣鴨子ども置き去り事件から30年『誰も知らない』状態で育つ「無戸籍児」の苦悩
「この事件は、父親が蒸発後、4人の子どもたちを育てていた母親が、恋人と暮らすために幼い兄弟の世話を長男に任せ、家を出たことから始まる。
母親は生活費として毎月数万円を送金し、時折様子を見に来ていたが、それも途絶えがちになった中で、子どもたちだけで暮らしていることを知ったアパートの大家が警察に通報。調査の中で、2歳の三女が14歳の長男の友だちに折檻(せっかん)されて死亡。遺体は雑木林に捨てられていたことが発覚し、アパートからはこの妹以外にも生まれて間もなく亡くなった子どもが白骨化して発見された、という心痛ましい事件である。
さらに衝撃だったのは2歳から14歳の兄弟たちは、いずれも出生届が出されていなく「無戸籍」だった、ということだ。」
「無戸籍児」という言葉から、私は、世に生まれ出たものの、宗門改帳に記載される前に亡くなり、あるいは殺された江戸時代の乳幼児のことを思い出した。
現代の日本では、戸籍(+住民登録)のない人間は、殆どあらゆる国・自治体からの給付を受けることが出来ないのだから、存在しない(誰も知らない)も同然である。
だが、現実の世界は、小説よりもずっと厳しく、それだけで生きていくのは難しい。
「キッチン」が発行された1988年(昭和63年)、みかげや雄一と同じように、父を失った子供たちの悲劇が起こっていた。
いわゆる「巣鴨子供置き去り事件」であり、この事件をモチーフにして、是枝裕和監督が映画「誰も知らない」をつくったことは余りにも有名である。
巣鴨子ども置き去り事件から30年『誰も知らない』状態で育つ「無戸籍児」の苦悩
「この事件は、父親が蒸発後、4人の子どもたちを育てていた母親が、恋人と暮らすために幼い兄弟の世話を長男に任せ、家を出たことから始まる。
母親は生活費として毎月数万円を送金し、時折様子を見に来ていたが、それも途絶えがちになった中で、子どもたちだけで暮らしていることを知ったアパートの大家が警察に通報。調査の中で、2歳の三女が14歳の長男の友だちに折檻(せっかん)されて死亡。遺体は雑木林に捨てられていたことが発覚し、アパートからはこの妹以外にも生まれて間もなく亡くなった子どもが白骨化して発見された、という心痛ましい事件である。
さらに衝撃だったのは2歳から14歳の兄弟たちは、いずれも出生届が出されていなく「無戸籍」だった、ということだ。」
「無戸籍児」という言葉から、私は、世に生まれ出たものの、宗門改帳に記載される前に亡くなり、あるいは殺された江戸時代の乳幼児のことを思い出した。
現代の日本では、戸籍(+住民登録)のない人間は、殆どあらゆる国・自治体からの給付を受けることが出来ないのだから、存在しない(誰も知らない)も同然である。