カイシャ人類学（３）

　令和版「悪女（わる）」の「オウミ」は、商社ではなくIT企業なので、おそらく社長は初代（創業者）という設定なのだろう。
　だが、第３話に”社長の息子案件”というセリフが出て来たところからすると、「オウミ」には社長の息子が入社していて、世襲が予定されている可能性がある。
　「カイシャ人類学」においては、この「世襲」あるいは「コニャティーク・ネットワークの拡大志向」という問題は大きな研究テーマであり、私などは、デュルケーム先生やモース先生が生きていたらぜひ分析して欲しいと思っているくらいである。
　そして、私見では、これこそ、日本社会が数百年に亘って抱え込んでいる深刻かつ根の深い問題の一つである。
　この「血」による集団形成がもはや手に負えないくらい進行（むしろ復活？）していることは、ここ数代の総理大臣とその一族の出自や経歴を見れば一目瞭然である。
　例えば、総理大臣は世襲（三代目）の代議士、その義弟は（元）国税庁長官などというのは、政治における「血」の要素を伝統的に排除してきた中国共産党では到底考えられない話だろう（世襲を嫌う中国。北朝鮮の３代世襲で対米関係を強化する）。まあ、太子党というのもあるらしいけど。）。
　さて、諸外国では、一般に「ファミリービジネスは巨大化に向かない」と考えられてきた。
　「血」による集団形成には、どうしても限界があるからである。
　ところが、世界一の売上高を誇る日本の自動車メーカーは、（現在は）世襲体制を採用している。
　このように、日本では、政・官・財の頂点において「血」が重要視されるのはなぜだろうか？
　その大きなヒントが、次の記事に示されている。

会社の目的は永遠に存続することである［インタビュー］「仕組み至上主義」の経営で危機をチャンスに変える　大山 健太郎 ：アイリスオーヤマ 代表取締役会長
　「大山健太郎会長は「会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境に於いても利益の出せる仕組みを確立すること」という理念を掲げ、それを形にしている」