政治の成立 木庭 顕 著
「ジェネアロジクなパラデイクマは一定の意味の軸を持ち、これが社会構造としての枝分節を生ぜしめることは排除されていない。この場合、ジェネアロジーとテリトリーとの関係は極めて不安定である。何故ならば、そうした社会構造は本来的に、外から内への侵入を許しかつそれによって結合関係をつくる、そうした現実の社会組織を支えるからである。このテリトリーの不安定を解消しようとするときに、ジェネアロジーの系統樹上の最上流の部分を神話化する、ということが行われる。例えば、・・・Bの娘とAには3人の息子が居て、Aの部分のテリトリーを三つに分けた、という神話的パラデイクマを作り、区分されたそれぞれのテリトリーをその3人の男系直系子孫しか占拠しえないというパラデイクマを機能させる、ということが行われる。」(p96)
「テリトリー」を(イエ/カイシャの)「職(事業)」に置き換えれば、日本についての記述ではないかと錯覚してしまいそうである。
(ちなみに、「パラデイクマ」というのは、「出来事のイメージ」と理解するとよいそうだ。)
ここから類推すると、職業の世襲は、集団が「職(事業)」との関係の不安定を解消しようとするために生じてくるという仮説が一応成り立ちそうである。
もっとも、テリトリーは生存のために不可欠だから、これを安定的に占有したいというのは理解出来るけれども、ある集団が、特定の「職(事業)」(+「屋号(苗字)」)の存続・永続を至上命題とする理由を、「生存のため」という一言で説明するのは困難である。
なので、問題は、当該集団にとって、特定の「職(事業)」(+「屋号(苗字)」)の存続・永続が必要となるのは一体なぜかというところに戻ってくる。
日本人の死生観 講談社学術文庫 著:五来 重
「日本人の葬制の根底にある霊魂観というものは、仏教以前の民族的な霊魂観がそのまま生きているということができる。キリスト教国などでは、古い宗教、古い霊魂観、古い他界観というものは、異教異端として、ほとんど撲滅されたわけです。」(p164)
かなり乱暴な議論かもしれないが、職業の世襲を、日本の土着宗教=祖霊信仰の表出の一つであると見れば、会社に「イエ」の諸要素が転写・包摂される現象をうまく説明出来るように思う。
また、こういう風に考えると、政治の世界において、世襲議員の比率が、ドイツ:2%未満、アメリカ:6~8%、他の先進国(キリスト教やユダヤ教が一般的)でもおおむね10%未満であるのに対し、わが国では25%という突出した数字をたたき出している(Dynasties and Democracy
The Inherited Incumbency Advantage in Japan DANIEL M. SMITH)理由の一つが分かるような気がする。
つまり、キリスト教などによって土着宗教が廃絶された国(その典型はドイツ)においては、職業の世襲化が進みにくいのではないかと考えるわけである。
補足すると、中国のような共産主義体制も、基本的に宗教を認めない(無神論である)ので、職業の世襲はタブー視されやすいと言えるだろう(その意味で、北朝鮮は極めて特殊である。)。
「ジェネアロジクなパラデイクマは一定の意味の軸を持ち、これが社会構造としての枝分節を生ぜしめることは排除されていない。この場合、ジェネアロジーとテリトリーとの関係は極めて不安定である。何故ならば、そうした社会構造は本来的に、外から内への侵入を許しかつそれによって結合関係をつくる、そうした現実の社会組織を支えるからである。このテリトリーの不安定を解消しようとするときに、ジェネアロジーの系統樹上の最上流の部分を神話化する、ということが行われる。例えば、・・・Bの娘とAには3人の息子が居て、Aの部分のテリトリーを三つに分けた、という神話的パラデイクマを作り、区分されたそれぞれのテリトリーをその3人の男系直系子孫しか占拠しえないというパラデイクマを機能させる、ということが行われる。」(p96)
「テリトリー」を(イエ/カイシャの)「職(事業)」に置き換えれば、日本についての記述ではないかと錯覚してしまいそうである。
(ちなみに、「パラデイクマ」というのは、「出来事のイメージ」と理解するとよいそうだ。)
ここから類推すると、職業の世襲は、集団が「職(事業)」との関係の不安定を解消しようとするために生じてくるという仮説が一応成り立ちそうである。
もっとも、テリトリーは生存のために不可欠だから、これを安定的に占有したいというのは理解出来るけれども、ある集団が、特定の「職(事業)」(+「屋号(苗字)」)の存続・永続を至上命題とする理由を、「生存のため」という一言で説明するのは困難である。
なので、問題は、当該集団にとって、特定の「職(事業)」(+「屋号(苗字)」)の存続・永続が必要となるのは一体なぜかというところに戻ってくる。
日本人の死生観 講談社学術文庫 著:五来 重
「日本人の葬制の根底にある霊魂観というものは、仏教以前の民族的な霊魂観がそのまま生きているということができる。キリスト教国などでは、古い宗教、古い霊魂観、古い他界観というものは、異教異端として、ほとんど撲滅されたわけです。」(p164)
かなり乱暴な議論かもしれないが、職業の世襲を、日本の土着宗教=祖霊信仰の表出の一つであると見れば、会社に「イエ」の諸要素が転写・包摂される現象をうまく説明出来るように思う。
また、こういう風に考えると、政治の世界において、世襲議員の比率が、ドイツ:2%未満、アメリカ:6~8%、他の先進国(キリスト教やユダヤ教が一般的)でもおおむね10%未満であるのに対し、わが国では25%という突出した数字をたたき出している(Dynasties and Democracy
The Inherited Incumbency Advantage in Japan DANIEL M. SMITH)理由の一つが分かるような気がする。
つまり、キリスト教などによって土着宗教が廃絶された国(その典型はドイツ)においては、職業の世襲化が進みにくいのではないかと考えるわけである。
補足すると、中国のような共産主義体制も、基本的に宗教を認めない(無神論である)ので、職業の世襲はタブー視されやすいと言えるだろう(その意味で、北朝鮮は極めて特殊である。)。