Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

カイシャ人類学(10)

2022年05月09日 06時30分58秒 | Weblog
 平成版ドラマ「悪女」では、商社の一般職OLである麻里鈴の立場から、正社員の間での序列ないし差別が描かれていた。
 それから30年を経て、「一般職」という言葉はあまり聞かれなくなった代わりに、「非正規雇用」の拡大が凄まじい勢いで進んだ。
 もっとも、この種の社内における序列ないし差別は、戦前からあったようである。

 「社員と職工との階級的差別は実に甚い。一例をここに挙げるならば工場には数番の電話が取ってあってそのいずれもが何時も公用で塞がっている訳ではない。社員連はこれによって弁当の注文も出来るし、待合へかけることも自由だ。しかしながら職工はどんな急用の場合でも断じてその使用を許されることがない。」(「女工哀史」)

 当時(大正末期)の「職工」(これが男工と女工(こちらが大多数)とに分かれる)に相当するのが、現在の「非正規雇用」労働者ではないだろうか。
 当時と違うのは、現在の「非正規雇用」労働者の多くは、若年者と女性既婚者で占められており、今や「アンダークラス」という言葉すら生まれているという点である。

もう自助努力だけでは抜け出せない!:ニッポンのアンダークラス
 「しかし1980年代末のバブル経済の頃から、労働者階級の中で分裂が始まる。景気がいいので、企業は人を増やさなければならない。しかし正社員として採用してしまうと、景気が悪くなったときにクビにできなくなってしまう。そこで企業は、学校を出たばかりの若者たちを非正規労働者として雇うようになった。当時こうした若者たちはフリーターと呼ばれた。それまでも多くの既婚女性たちが、非正規労働者として雇われていたが、ここに若い男女の非正規労働者が加わったのである。・・・アンダークラスは2012年に929万人となり、2017年は913万人とわずかに減少したが、それでも全就業人口の14.4%、労働者階級の4分の1近くを占める大勢力である。

 他方、90年代後半以降、上層ホワイトカラー(管理職と専門職)に関して、父親がそうであれば子供も同じ上層ホワイトカラーに就く可能性が高くなる傾向(「階層相続」)が出てきている(「不平等社会日本 さよなら総中流」佐藤俊樹 著)。
 また、世襲者(父親と同じ職業を選ぶ人)は、非正規労働者になりにくく、経営者・自営業者になりやすいことも分かってきた(職業世襲 ―長期無業・失業,人的ネットワーク,幸福度への影響)。
 職業選択、あるいは「カイシャ」内部の序列・差別(二極分化)において、父親の職業が決定的な要因となっているわけである。

 
コメント
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