ピアニストの滝澤志野さん「私がウィーン国立バレエで仕事を始めて、最も印象的だったダンサーの一人が、オリガ・エシナです。「こんな美しいダンサーがこの世にいるのか」と感動を覚えました。」(公演パンフレットより)
会場に着くと、掲示があり、「オリガ・エシナは11月21日のリハーサル中の怪我により、本日の公演には出演出来なくなりました」と書かれている。
その直後に上の記述を読むと、彼女の踊りを観れないのがいかにも残念という気がした(もっとも、その後Bプロには出演していたらしい。)。
さて、当然ながら見どころは多いのだが、私が特に注目したのはベテラン勢:アリーナ・コジョカル&ワディム・ムンタギロフ「眠りの森の美女」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ」、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ&エルネスト・ラティポフ「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ」である。
前者は、例によって軽々としたリフトやジャンプ、ソロを踊った後すぐに袖に引っ込まずパートナーのダンス開始を確認してから退場するところなどが印象に残った。
後者は、ヴォロンツォーワの「両手腰」のグランフェッテが圧巻で、片手リフトのラティポフも安定感があり、二人とも軽やかな演技という印象。
ベテラン勢は、ダンスを難しそうに重々しく見せるのではなく、さらりと軽快に見せる技術や、定番の演目は少しひねって新機軸を加える工夫があるようだ。
「新国立劇場バレエ団初の試みとして、若手ダンサーにスポットライトを当てたガラ公演をお届けします。古典バレエ作品のパ・ド・ドゥの他、コンテンポラリー・バレエ界の鬼才ナチョ・ドゥアトによる『ドゥエンデ』を8年ぶりに上演。」
こちらは若手主体のプログラム。
「バレエの美神」の数日後に同じ演目を観ると、さすがに素人でも若手とベテランの腕の差に気づく。
ベテランの演技と比べると、若手は「重く見える」のである。
ジャンプやリフトが重く見えるし、ジャンプやフェッテのときのふとした表情などに、余裕のなさが透けて見える瞬間がある。
おそらくこれは、舞台経験を積むことによって克服していくべきものなのだろう。
おそらくこれは、舞台経験を積むことによって克服していくべきものなのだろう。
今回、芸術監督が敢えて若手ダンサーに古典の定番を踊ってもらうことにした狙いは、そのあたりにあるように感じた。
他方、ナチョ・ドゥアトの「ドゥエンデ」は、ドビュッシーの音楽とパーフェクトにマッチしたコリオで、彼が「鬼才」と呼ばれる理由が分かる。
若手の皆さんは、かなりアクロバティックなところも見事にこなし、息の合った素晴らしいダンスを披露した。
初台駅のプラットフォームで聞える会話からすると、観客も大満足だったようである。