「郵便料金の大幅な値上げ方針が18日示された。総務省は、現行料金のままでは4年後に日本郵便の郵便事業の赤字が3000億円超に膨らむと見込む。ただ、想定通りの値上げが実現しても2026年度には再び赤字となる見通し。今後も郵便物の増加は見込めず、郵便事業を維持するには抜本的な対策が必要になる。」
決定的な破綻の前には、だいたいその予兆があるものだ。
私見ではあるが、この企業グループは、このままでは破綻に至る可能性が高く、今回の件はその予兆の一つであると思う。
破綻に向かう企業がよくやる「自滅策」は、「有休資産の売却と人員削減によるリストラ策」あるいは「特に理由のない主力製品の値上げ」であり、無能な経営者(特に銀行OB)においては定番の「経営改善策」といってよい。
このやり方だと、顧客がだんだん離れていき、先細り型の破綻となるケースが多い。
これとは対照的に、「一発当ててやろう!」というタイプの経営者が破綻の契機をつくることもある。
いわば「山師」型の経営者である。
「日本郵政は豪州の物流会社トール・ホールディングの資産を洗い直し、4003億円の損失(減損処理)を明らかにした。鳴り物入りの「戦略的買収」は、わずか2年で財務を揺るがす「お荷物」と化し、日本郵政の2017年3月期決算は赤字に転落する。
「疑惑の買収」を主導したのは当時社長だった西室泰三氏。東芝を泥沼に引き込んだ米国の原発メーカー・ウエスティングハウス(WH)の買収を画策した人物だ。
法外な値で海外企業を買い、やがて損失が露呈し、カネを外国に吸い取られる。そんな経営者が財界の顔役となり、老いてなお巨大企業を渡り歩く。日本の産業界は一体どうなっているのか。」
トールの買収失敗で生じた損失(実額)は6000億円以上にのぼるとされており、これは年賀状売上げの4年分に近い。
この問題の根底に「私物化」(「私」による「公」の潜奪(1))があることは明らかだが、それだけでなく、経営者/経営陣の選抜の問題もあると思う。
法人において、委任のロジックにより、経営者/経営陣は「エイジェント」の地位にあるわけだが、この国(の一部)には、「私物化」を極端な形でやってしまうような「山師」型の経営者を、あえて「エイジェント」として担ぎ上げるシステムがあるのかもしれない。
その方が、「私物化」をやり易いという理由があるのかもしれない。
トールの失敗について、意思決定過程を検証することはもちろん重要だが、それ以前の問題として、「山師」型の経営者を「エイジェント」に担いでしまうシステムを解体する必要がありそうだ。