「11月14日、アウトロー系インフルエンサーとして「X」フォロワー数は90万人以上を誇った「Z李」アカウントを運営するグループが警視庁暴力団対策課によって逮捕された。・・・
「保護猫活動したり、ひとり親家庭を支援したり、悪質ホストと女性客の暴行トラブルを示談金で解決する活動をしていたことから、慕われていた一方で“ダークヒーロー気取り”とアンチや同業のチンピラから反感を持たれていた一面もあったと思います。
特に警視庁からはずっと狙われており2年前にもメンバーが逮捕されかけたことも。また、最近では匿名・流動型犯罪グループいわゆる『トクリュウ』にあたるとみて捜査されてたみたいです。まあ『トクリュウ』キャンペーンに上手くハマってしまったのかなという感じです」 」
「ここで言うトクリュウとは、「匿名・流動型犯罪グループ」の略称で、警察庁が近年、「治安上の脅威」と位置付けている。グループの特徴としては、暴力団などの特定の犯罪組織に属しているという訳ではなく、匿名性の高いSNSでつながり、事件ごとに流動的に活動して犯罪行為に及ぶ。」
「トクリュウ」による犯罪のニュースが毎日のように飛び交っている。
犯罪組織ではあるが、暴力団などの従来の犯罪組織とは異なる組成原理に基づく集団である点が特徴とされる。
だが、私見では、この種の集団の組成原理は、2000年代以降の「振り込め詐欺」(特殊詐欺)グループと共通点が多いと思う。
具体的には、
・上位者/下位者の階層構造
・メンバーは基本的に他のメンバーのことを知らない(匿名性)
・事件単位で組成され、離合集散を繰り返す(流動性)
・高齢者など孤立した人を狙う
といった共通点を指摘することが出来る。
要するに、「トクリュウ」という目新しいワードに惑わされてはいけないのである。
従来の特殊詐欺について言えば、これまで警察は、殆どのケースで「下位者」(出し子・下ろし子、受け子など)を検挙するにとどまり、「上位者」の逮捕までは出来なかった(と思う)。
私見ではあるが、これに味をしめた集団が、現在では、詐欺どころか強盗殺人にまで及んでいるように見えるのである。
一見して明らかなとおり、「トクリュウ」においては、”親子”や”兄弟”などいった「イエ」由来の紐帯(人間関係の模倣)による集団組成は行われていない(但し、上位者のメンバー相互間には”兄弟”的な紐帯がある可能性もある。)。
大半は、単なる報酬(金)による集団組成である。
だが、この「非『イエ』型」の金目当ての暴力集団」をどうやって解体するかと言う問題は、ほぼ手つかずの状態にある。
(生徒)---集団だったら、その集団をつぶせばいいのかなと思うんですけど、先生のお話しを聞いて、日本と海外とでは、児童虐待の考え方とか、変わってくるのかなと思って。日本の場合、家族でネグレクトが起きたり、学校の部活で体罰があったりとか、小さいところで人権剥奪がある。それはたぶん、親とか学校をつぶすということでは解決できないと思うんですよ。そういうのってどう考えるんですか。
(木庭先生)そうだね、大事な問題だね。大きなグルみたいなのを叩き潰せばいいかといっても、叩き潰しても叩き潰してもミクロのレベルでそういうのが出てきて、それをぜんぶ根治できないんではないか、という問題ね。これは大事な問題だと私は思う。このへんのことは研究がものすごく遅れていると思う。」(p125)
やや文脈の異なる問題についてのやり取りだが、「グルを叩き潰す」ことが問題の抜本的な解決にはならないことが分かる。
では、いったいどこに根本原因があって、どう対処したらよいのだろうか?
言うまでもないが、これは、容易には答えの見つからない問題である。
特殊詐欺の下位者の刑事弁護を結構な数担当してきた私のひとつの見解は、
「子どもの育て方と中等教育に問題がある」
というもの。
というのは、少なくとも私の経験では、依頼者のプロフィールや性格が余りにも似通っていたからである(他人との距離)。
もちろん、これは一つの答えに過ぎず、ほかにも、若年層の就職難や貧困化の進展、高齢者層における富の蓄積などといった社会的な要因もあることは間違いない。
だが、「徒党に与しない」メンタリティーが確立していれば、「トクリュウ」などは発生しないのではないかと思うのである。