Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

11月のポトラッチ・カウント(6)

2024年11月24日 06時30分00秒 | Weblog
 「大川端庚申塚の場」が面白いのは、前半と後半で主役が入れ替わるところだろう。
 前半の主役は、何と言っても「お嬢吉三」である。

 「そこへお嬢吉三が登場。とせに亀戸への道を聞きます。
 とせは、親切に道案内するが、方向が同じだから一緒にいってあげましょうと二人は連れ立って行きます。その時財布が落ちて、大金を持っていることが知れてしまいます。
 お嬢は、人魂が出たといって、怖がるふりをして、とせに近づき、財布を取ってしまい、川へ突き落します。
  太郎衛門が後ろからとびかかるが、それもかわし、太郎衛門の庚申丸も奪います。
 ここで、有名なセリフを。
月も朧に、白魚の かがりも霞む春の空 冷たい風もほろ酔いに 心持よくうかうかと 浮かれ烏のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で 棹のしずくか濡れ手で粟 思いがけなく手にいる百両 ほんに今夜は節分(としこし)か 西の海より川の中 落ちた夜鷹は厄落とし 豆だくさんに一文の 銭と違って金包み
こいつぁ 春から 縁起がいいわぇ』」

 そう、この物語は、基本的に「庚申丸」を持っている人物、そうでなければ百両の金を持っている人物が、その時点における主役なのである。
 では、後半はどうなるだろうか?

 「とそこにお坊吉三が登場。一部始終をみていたお坊。お嬢と百両をよこせ、よこさぬのけんかとなります。
  そこに登場するのが、和尚吉三。二人の仲裁に入り、「百両を自分に渡す代わりに自分の腕を切れ」という和尚に、心意気を感じた二人は和尚と義兄弟の契りを交わすことを申し出、百両は和尚が預かり、3人はかための血盃を交わしてその場を去るのです。

 「自分の腕を切れ」という和尚吉三のポトラッチが成功し、百両は和尚が預かることとなり、結果的にお嬢とお坊の命が救われた。
 ・・・まあ、それは良いとして、本筋のテーマであるはずの「お家再興」はどうなったのだろうか?

 「雪に彩られた本郷火の見櫓。和尚吉三は偽首がばれてすでに召し取られ、木戸はあとの二人を召し取るまで固く閉ざされています。木戸の内と外から人目を忍んでやって来たのはお嬢とお坊ですが、二人が召し取られた時には櫓の太鼓をたたいて木戸を開けるという触書(ふれがき)に気付き、お嬢吉三は櫓に登って太鼓をたたきます。すると木戸が開けられ和尚も捕手から逃れることが出来ました。そこへ八百屋久兵衛が現われ、三人は庚申丸と百両を託してお家再興を願います。さらに追手に迫られた三人は、もはやこれまでと互いに刺し違えて壮絶に果てるのでした。」 

 私の推測では、ラストで三人の吉三が死ぬというくだりで、作者の河竹黙阿弥はすっかり満足してしまい、「お家再興」のテーマはどうでもよくなったのではないかと思われる。
 そうでなければ、こんな雑な終わり方はしない。
 というわけで、「三人吉三巴白波」大川畑庚申塚の場のポトラッチ・ポイントは、和尚吉三による「自分の腕を切れ」による1.0ポイント。
コメント
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