「実は、この『ピーア・ド・トロメイ』の中には、ヴェルディの『椿姫』そっくりのメロディーが出て来るんです。」(プレ・トークでの折江忠道総監督の指摘)
確かに、1幕のピーアのアリアの中には、「椿姫」の「そはかの人か 花から花へ」にかなり似たメロディーが登場する。
それだけではなく、同じくベルディの「アッティラ」1幕のアリア「亡霊め、あの国境を越えてお前を待つぞ」との類似性も指摘されているそうだ。
時代的には、ドニゼッティの方が先なので、ヴェルディが「パクった」ということになりそうだ。
ところが、気の毒にことに、「ピーア・ド・トロメイ」は上演頻度が極めて低いらしいので、このパクリ疑惑はあまり知られていないようである。
他方、このオペラの筋書きも、初っ端から「オテロ」と酷似しているように感じる人が多いだろう。
嫉妬と讒言による三角関係の中でヒロインが犠牲になる点が共通しているからである。
だが、「ピーア」の方は13世紀の実在の人物がモデルとなっているのに対し、「オテロ」の方は1566年にヴェニスで刊行されたツィンツィオの「百物語」第三篇第七話が出典とされている。
なので、「ピーア」の方が時代的に先であって、そのオリジナル性は疑いようがないということになるだろう。
つくづく気の毒な「ピーア」とドニゼッティである。
というわけで、11月のポトラッチ・カウントは、
・「オイディプス王」・・・15.0
・「コロノスのオイディプス」・・・ゼロ
・「アンティゴネ」・・・マイナス(▲)90.0
・「三人吉三巴白波」大川畑庚申塚の場 ・・・1.0
・「ピーア・ド・トロメイ」 ・・・マイナス(▲)95.0
となり、以上を合計すると、マイナス(▲)169.0となる。
何といっても、アンティゴネとピーアという二人の女性の崇高な愛と赦しの偉大さを思い知らされた月であった。