- ムソルグスキー(ショスタコーヴィチ編曲):オペラ『ホヴァンシチナ』第1幕への前奏曲「モスクワ河の夜明け」
- ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 変ホ長調 作品70
- ドヴォルジャーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
[アンコール曲]
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『我が人生は愛と喜び』op. 263
ヨハン・シュトラウスⅡ世:トリッチ・トラッチ・ポルカ op. 214
ウィーン・フィルによるロシア音楽とドボルジャークという選曲だが、昨年もメインはドボルジャークだった(軽い曲、重い曲)。
「日本のオーケストラは例外なく素晴らしく、レベルがとても高いのに驚いて嬉しい気持ちになりました。とても感情豊かで、音楽への理解が深く、テクニックが安定していて、音楽的なフィーリングが良い。ウィーン・フィルはすごくパワフルでしたが、私にとってはノイジー(騒々しい)と感じる部分が多くてあまり音楽的な気分に浸ることができませんでした。日本のオーケストラは、欧米のオーケストラと肩を並べるところまできています。以前は、日本の団体は欧米より劣るという見方が中心でしたが、今はそういうステレオタイプな価値観をブレイクする時代ですね。」
マーコウさんは「ノイジー」と感じる部分が多いというウィーン・フィルだが、1曲目の「モスクワ河の夜明け」は穏やかでおとなし目の曲なので、”ちょうどいい”感じである。
2曲目のショスタコ9番は、私も初めて聴くが、「これってブラスバンド用の曲なのか?」と思ってしまうような、最初からふざけたタッチの曲である。
「1945年春に赤軍がナチス・ドイツに対して勝利する見通しが立った時、ショスタコーヴィチには、他の作曲家の交響曲第9番に並ぶ9番として、スターリンを音楽で礼賛することが期待された。実際、ショスタコーヴィチは、交響曲第9番を書いたが、期待されたようにではなく、また、彼の評判が高まるように書いたわけではなかった。つまり、演奏時間が22分という異例の短さで、比較的小編成で、スターリンを称揚する合唱もなく、英雄的とはかけ離れたテーマで、要するに無関係であるという立場で、そのために専制君主の期待に対する皮肉とも受け取られかねない曲を書いたのである。」(プログラム・ノートp25)
つまり、スターリンに対するあてつけのような曲なのだ。
後半のドボルジャーク7番は、”鳴らす曲”なので、マーコウさんなら「ノイジー」と言ってしまいそうだが、まあまあ良い曲である。
ただ、9番や8番がさらに良い曲なので、埋もれてしまいそうな感じである。
指揮者のネルソンスは私も初見だが、一番似ているのは「指さし奏法」のプレトニョフである。
つまり、主旋律を担当する楽器の奏者にタクトや指、あるいは目線や身振りで合図するというタイプの奏法である。
ただ、彼の場合、管楽器(特にフルート)への”指さし”の頻度が高く、他方でコントラバスなどは殆ど見ない感じである。
彼の動作を見ていると、何だか懐かしい感覚が蘇ってきた。
そう、
「授業中に生徒を指さしてどんどん当てまくる小学校の先生」
のイメージである。
この感覚はどんどん強くなり、アンコール2曲目の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」が始まると、小学校時代の運動会のリレー競争を思い出した。
体が思わず動き出した人も多いようだ。
・・・というわけで、期せずして童心に帰る一夜であった。