Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

熱情と絶望

2024年11月29日 06時30分00秒 | Weblog
曲目・演目
【オール・ベートーヴェン・プログラム】
ソナタ第1番 ヘ短調 op.2-1
ソナタ第7番 ニ長調 op.10-3
ソナタ第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」(曲順変更)
――――――――――
ソナタ第27番 ホ短調 op.90
(曲順変更)
ソナタ第23番 ヘ短調 op.57「熱情」
<アンコール曲>
ソナタ第8番「悲愴」より第2楽章

 前回(音楽修辞学)から約1年半ぶりとなるベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会の第5回。
 曲順変更の理由は、「ハイリゲンシュタットの遺書」(1802年10月)の前後で分けて、「絶望」→「熱情」という変容を明らかにするというもの。
 確かに、時系列で聴くと、ベートーヴェンの内面の変容が分かるような気がする。 
 1番は、ハイドンに師事していた頃の作品で、ハイドンに献呈されている。
 だが、躍動感あふれる曲想は、ハイドンというよりは、やはりモーツァルトである。
 実は、ハイドンは余りにも多忙であったため、なかなかベートーヴェンを実地指導する時間が取れなかったらしいのである。
 7番で注目されるのは、2楽章の「ラルゴ・エ・メスト」で、「エ・メスト」
(非常に悲し気に)という語は、深い悲しみを表現すべきことを指示しているらしい。
 「絶望」という言葉がピッタリくるが、3楽章では「春」が訪れたように雰囲気が一変する。
 ちなみに、べ―トーヴェンは、気分の浮き沈みが激しい人であったらしい。
 14番「月光」の今回の解説は、これまでの解説:「ゴルゴダの丘を登るキリスト」とは違っていた。
 ベートーヴェンのメモには、「あまりにも早くこの世から引き離されて、自分の思いをなしえなかった人々の魂・・・」と書かれているらしく、この曲にはそうした鎮魂の意味が込められているようだ。
 23番「熱情」は、仲道さんによれば、「絶望」を克服し、「崇高なる使命」を自覚したベートーヴェンの心境を示しているそうで、「運命」のテーマがこれまで以上に明確かつ執拗に出現する。
 27番も同じく「熱情」の系譜に属する。
 作曲された1814年(44歳)はベートーヴェンの名声が最高潮に達した年であり、ウィーン会議では全ヨーロッパのスターとして遇せられたらしい。

 「ところでウィーン会議における音楽のスターはといえば、誰をおいてもルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンだった。彼は会議に際し、カンタータを1曲、合唱曲3曲を新たに作曲。またロシア皇后のために、ピアノのためのポロネーズ作品89も書いた。さらに会議開催中には、交響曲第7番・第8番、「ウェリントンの勝利」(これは当時ベートーヴェン作品の中でももっともポピュラーだった)といった彼の管弦楽曲が取り上げられ、人々の喝采を浴びた。そしてオペラ「フィデリオ」は30回も上演され、大ヒットとなった。

 「絶望」は「熱情」によって克服できるようである。
 
コメント
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