「※舞台機構設備の工事を実施するため、当初の発表から公演名、公演日程、料金を変更いたしました 」
十一月の歌舞伎座公演は、ふだんと違う”鑑賞教室”風のこじんまりとした公演となった。
舞台機構設備が老朽化し、保守工事が必要になったためとのこと。
そういえば、かつての歌舞伎座では、8月には歌舞伎ではなく「三波春夫ショー」が開催され、メンテ期間となっていたらしいので、今回の十一月公演はこれと似た機能を果たしたのではないかと思われる。
そういうわけで、大掛かりな舞台装置や大道具などは基本的に使用せず、もっぱら役者が動き回ることで芝居を構成することになる。
具体的には、最初の「ようこそ歌舞伎座へ」では、スクリーンで幸四郎が歌舞伎座裏側をガイドし、虎之介(若い頃の三波春夫に似ている)が「見えを切る」場面などを解説しながら実演する。
これは初心者や外国の方にとってはありがたいことだろう。
メインの演目は、2本目の「三人吉三巴白波」大川端庚申塚の場である。
「ところで題材の三人吉三とは、三人の吉三郎(きちさぶろう)という意味で、巴白浪の白浪は、既述の白浪五人男と同様、盗人という意味です。
白浪五人男は5人の盗賊、三人吉三は3人の盗賊のお話なんです。
さて、あらすじに入ります。冒頭部分ー2人の男が、何やら刀を巡って争っています。
正直この部分はただ傍観していていただけたらと思います。
というのも、このお話は、もともとお武家さまのお家騒動が軸になった長いお話の一部でした。」
そう、この演目は、本来は「刀」がカギとなる物語であり、これを押さえておかないと本当は訳が分からなくなる。
刀鑑定を業とするイエの当主:安森源次兵衛は、将軍家から鑑定のために預かった宝刀・庚申丸を何者かに盗まれてしまい、その咎により「お家断絶」の処分を受けていた。
要するに、ざっくり言うと、「お家再興」の物語であり、その鍵を握るのが「刀」(庚申丸)ということなのである。