オペラ『連隊の娘』 作曲:ガエターノ・ドニゼッティ
「舞台は、19世紀前半、ナポレオン戦争期のチロル地方。幼い頃に両親と生き別れ、アルプスの山で、フランス軍第21連隊に可愛がられて育った少女マリーは、かつて崖から落ちそうになったところを助けてくれた青年トニオと恋に落ちます。トニオはマリーとずっと一緒にいるため、第21連隊に入隊。しかし、そこにマリーの伯母を名乗るベルケンフィールド侯爵夫人が現れ、マリーは夫人とともにパリで暮らすことに。離れ離れになるマリーとトニオの行く末は……?」
「舞台は、19世紀前半、ナポレオン戦争期のチロル地方。幼い頃に両親と生き別れ、アルプスの山で、フランス軍第21連隊に可愛がられて育った少女マリーは、かつて崖から落ちそうになったところを助けてくれた青年トニオと恋に落ちます。トニオはマリーとずっと一緒にいるため、第21連隊に入隊。しかし、そこにマリーの伯母を名乗るベルケンフィールド侯爵夫人が現れ、マリーは夫人とともにパリで暮らすことに。離れ離れになるマリーとトニオの行く末は……?」
先月の「影のない女」では東京文化会館にブーイングの嵐が吹き荒れ(10月のポトラッチ・カウント(9))、もしかすると「二期会のオペラにはもう行かない!」というオペラファンが続出したかもしれないところだったが、今回の「連隊の娘」は成功作といって良いだろう。
日生劇場で上演される二期会のオペラは、コミカルで新鮮味があるという印象なのだが、やはりこれもそうである。
同じドニゼッティの「愛の妙薬」とタッチが似ていて、コミカルな語りと美しいメロディーという取り合わせなので、「心地よい」感覚に浸ることが出来る。
衣装(衣服の絵が描かれたボードを前に掛けるだけ)やダンスなどにも笑いを誘う仕掛けが施されており、結構”攻めた”演出なのだが、嫌味を感じさせない。
マリー役の砂田さんは、ミラノ在住ということだが、声色・声量・演技力とも抜群で、野性味と可愛らしさを併せ持つ難しい役を演じきった。
トニオ役の澤原さんは、当初配役されていた糸賀さんがアキレス腱断裂のため降板したことによる代役だが、時間不足など全く感じさせないパフォーマンスである。
シュルピス役の山田さんは、ややフランス語にぎこちなさがあるようだが、体格(かなり大柄)で歌も演技も”隊長”にピッタリである。
最も驚いたのは、ベルケンフィールド公爵夫人役の金澤さん。
フランス語の発声がネイティヴ並なのである。
それもそのはず、プロフィ―ルには、「国立パリ地方音楽院コンサーティスト過程修了」とある。
ほとんど歌わず、「語り」だけの役だが、この配役で良いのである。
発音指導という仕事 大庭パスカル(公演パンフレットp26~)
「フランス語の基礎は会話で学んでいましたし、私と2か月かけてディクションレッスンを行っていたので、研修生のフランス語はかなり上達していました。ピアノ稽古に入った時には、すっかり安心して自分の仕事はやり遂げたと思っていた程です。
「気楽だった」と痛感したのはその時です。あれだけきれいに発音できていたフランス語が歌うとフランス語に聞こえないのです。なぜ?どうして?私の頭の中は「?????」でいっぱいになりました。今から考えれば当たり前なのですが、話す時の発声と歌う時の発声の仕方が違うので、正しい発音がわかっていても歌の発声にその発音を当てはめることができなかったのです。」
そう、フランス語の盲点ともいうべきところで、「語り」と「歌」では、発声の仕方がまるで違うのである。
私も、自分の耳がおかしくなったかと思うこともあるほど、ノン・ネイティヴ泣かせの言語なのである。