パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

シャボン玉

2007年10月27日 19時00分07秒 | Weblog
「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する
  亀山郁夫著  光文社新書
現在同時進行で読み進めている中の一冊

なるほど単なる空想とはいえないくらいの確実さをもって
論旨を進めていっているが
強く感じたのは、内容うんぬんよりも
一人の人間が一つの事に真剣に取り組むと
それが実生活に役立つ、たたないに関係なく
人を感動させるまでにいたるという事

友達の中にも一つの事をコツコツと続けている人間がいるが
若いときはそんなに大差ない感覚や考え方をしていたのだが
現在では彼が取り組んでいる分野には
洞察力、観察力など大変な差になっている
そして、どこか羨ましい感じを覚えないでもない
(もっともこちらが取り組んでいる分野では
 彼にとっても同じ事かもしれないが)

そこで思い出したのがヘッセの詩

    シャボン玉

長い長い年月の研究と思想の中から
おそくなって一老人が晩年の著作を
蒸留させる。そのもつれたつるの中に
彼は戯れつつ甘い知恵を紡ぎこんだ。

あふれる情熱に駆られて、一人の熱心な学生が
功名心に燃え、図書館や文庫を
しきりとあさりまわって
天才的な深さのこもった青春の著作を編んだ。

ひとりの少年が腰かけて、わらの中に吹き込む。
彼は色美しいシャボンのあわに息を満たす。
あわの一つ一つがきらびやかに賛美歌のようにたたえる。
少年はありたけをこめて吹く。

老人も少年も学生も三人とも、
現世の幻のあわの中から
不思議な夢をつくる。それ自体は無価値だが
その中で、永遠の光がほほえみつつ
みずからを知り、ひとしおたのしげに燃え立つ。

    高橋健二 訳

なぜか昔からこの詩は好きだった
ところで
デミアン、シッダールタ、荒野の狼、ガラス玉演技
ロマンチックな叙情的だけではないヘッセは
そのやさしい深さゆえに、再評価されていい作家だと思うのだが

コメント
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