新型コロナのせいで長いこと帰省できていなかった埼玉の妹が
久しぶりに我が家に戻ってきた
待ち構えていたかのように近所にいる兄弟は集まって、
母を囲んで昔話を始める
「岐阜に家族旅行に行った時、案内された部屋が間違って
ちょっと残念なことがあったね」
「そうそう」
「え、そんなの知らない」
「信州に旅行にいった時、お姉ちゃんが行程表を作ってくれたよね
あの昔の青いコピーのようなもので」
「そんなことあった?」
「私は白樺湖で馬に乗った時、お姉ちゃんが小さな馬に乗ってしまったので
大きな馬に乗る事になって、ちょっと怖かった記憶がある」
「馬に乗ったのは覚えているけど、一番覚えているのは
馬のお尻がうんちみたいな匂いがしたことかな」
「私は旅行で食べた味噌汁の中にみょうがが入っていて
お母さんが好きじゃないので今まで食べたことがなかったけど
その時初めて食べてぎょっとしたことを覚えてる」
それぞれが勝手に自分の思い出話を披露する
でも、みんな微妙に記憶が違う
それをうなずきながら聞いていたのは家で一番えらい人
記憶が怪しくなっても普通だが、不思議なくらい子どものたちの
友達やそのお母さんのことまで覚えている
人の記憶は、自分だけのもの
その記憶はどのような采配で、いつまでも覚えているようにされているのだろうか
みんながみんな昔話を語るようになってきた
そしてその時間はとても貴い