パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「白い夏の墓標」を読んで思い浮かべたこと

2023年08月26日 09時09分58秒 | 

久しぶりに気持ちのいい朝だった
朝方トイレに起きた時、半分開いていた窓を閉めて
タオルケットを少し掛けた

昨日見た陽の光は間違いなく秋のそれになっている
夏休みの後半、子供の頃はその変化がどこか寂しい気持ちになったものだ

昨日エアコンも使わず寝転がって読んだ本がこれ
「白い夏の墓標」帚木蓬生著

40年ほど前に出版された本だが、最近新聞の書籍広告で見かけ手に入れた
ミステリー仕立てで読みやすい作品で、ウィルスについての科学的な説明も
学術論文を読むよりわかりやすいようだ

読みやすいと思われたのは文体とかリズムが自分の波長にあったのだろうか
読書が血や肉になる時は過ぎた今、その代わりに別の能力が身についた気がする
それは書き手の人格とかポテンシャルがなんとなくわかる気がするということ
ものすごく深い人なのか、ストーリー展開がうまいだけの人か
実は意地が悪い人なのか、言いたいことがいっぱいある人なのか
そういったことが、なんとなく(根拠はないが)わかる気がするのだ

それを思うと、三島由紀夫や太宰治はどこか人間的に合わない気がする

本を読むといつも本質と関係ないことが頭に浮かぶ
よくあるのは次に何を読もうか!と考えること
今回は、主人公の佐伯が出かけているフランスのパリの風景の描写が
妙にリアリティが感じられて、僅かに経験したことのあるその街を
思い浮かべることができたことから
突然パリの街に住んでいた人の書いた本を読もう!という気になった
そして思い出した名前が「森有正」だった

なぜ、読んだこともない人の名前を思い出したのか分からない
多分、パリに滞在していた辻邦生(一時期夢中になった)の何らかの書籍から
思いついたのだろう
そして早速、図書館に行って森有正全集12 と「遥かなノートルダム」を借りてきた

早速読み始めると、自分がこれらの本を選んだ直感は間違っていなかった
と思えた
思索と経験について書かれていたことは
常々自分も考えていたこと(感じていたこと)だった
もちろんその掘り下げかたはレベルが全く違う
だが、同じように感じる人がいるという事実は自分が正当化されたような気さえした

話は戻って「白い夏の墓標」は佐伯の友人、孤独な黒田がウイルス研究に没頭し
思いがけない成果を生み出した結果、アメリカの秘密組織に雇われて
細菌兵器の製造に力を貸すことになったが、そこでの善悪の葛藤の末
自ら生み出した仙台ヴァイルスを破棄してしまう(消滅させてしまう)道を選んだが
その過程で知り合った女性との関係を伏線として物語は展開し
まとまりの良い(後味も良い)作品になっている

時々、人はなぜ物語を作るのだろうと思う
書店に並ぶ書籍は物語が圧倒的に多い
人はなんといろんな物語を思いつくものだと感心するが
ベルクソンの言う「作話」というのは人に備わった
危険防止の装置なのかもしれない(と思ったりする)

ということで、暑い2階での作業はこのくらいにする


 

コメント
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