パンセ(みたいなものを目指して)

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「交響する経済学」気になったオランダのエピソード

2022年05月02日 09時51分01秒 | 

音楽のアルバムは、その中に2.3曲気に入ったものがあれば
それで良いとされるようだ
確かに自分も聞くのは数曲に限られることは多い
そしてそれで満足しようとしている

ならば読書も実は同じではないか
気になった箇所が2.3あればそれで良しとする
これは自分の読解力不足を慰める意味でも有効な考え方だ

最近読んだのはこの本 「交響する経済学」中村達也著


少し前の中日新聞の書評欄にでていた本で、面白そうなので早速アマゾンで求めた
いつものことだが気になったのは、本質部分とは外れているかもしれない
オランダの労働時間と休暇のエピソードだった

ヨーロッパ人は労働とか仕事に関しては日本人と根本的に捉え方が違う
それはキリスト教とかユダヤ教の伝統からくるものかも知れないが
仕事は苦役、、とまでは行かないにしても、そのくらいの感覚を持っているのではないか

ハンナ・アーレントは「人間の条件」で労働・仕事・活動と区別して
人の行動を考察している
その中では仕事は活動よりは低次なものとされている

だからこそヨーロッパ人は仕事の時間を少なくしようとする努力や社会制度に
日本人以上の熱心さで取り組む
その印象的な例がこの本にあった
以下はその中から抜き出したもの
 
石油危機後の経済停滞と深刻な失業問題を抱えていたオランダで、
1982年、(ワッセナー合意)と呼ばれる政労使間の注目すべき取り決めが成立した。
労働者側は賃上げ要求を断念し、使用者側はその見返りに雇用の保障と労働時間の短縮を進める。
そして政府は、賃金抑制による生活水準の低下を補うための減税を実施する。
3社がそれぞれに痛みを分かち合い、経済の停滞を乗り越え失業問題の解決に協力した。

なんだか近江商人の「三方良し」の世界観のようだ
お互いが利己的にならずに、解決すべき問題に現実的に向かい合っている様子が
少し羨ましく思えてしまう
オランダはもっと面白い制度がある

さらに注目すべきは、2006年からスタートした(ライフサイクル規定)と呼ばれる生涯時間貯蓄制度である。
労使間での合意が前提であるが、働く側がライフステージのそれぞれの時期に、育児、介護ケア、研修、
その他サバティカルの目的等で長期の休暇を取ることが可能となった。
その際に、長期休暇中の生活費を確保するために、毎年の給与所得の中から12%を限度に
さらに生涯全体では210%を限度に貯蓄するための専用の口座を金融機関に開設する。
例えば、2年間にわたって毎年所得の12%、合計24%を貯蓄すれば、
1年の24%に相当する2ヶ月余りの休暇を取得することができる。
最大210%を貯蓄すれば、2年余りの休暇を取得できる計算となる。
その間の生活を支えるための所得がこの口座から毎月支給され、貯蓄残高に対しては非課税、
給付される段階で所得税が課される。
休暇取得回数にに制限はなく、転職しても企業が倒産しても貯蓄残高は維持される。

単純にすごいな!と感心する
そして日本でもこれが実現されたなら、、と羨ましく思う

この羨ましく思うという感覚は、これを知っていないと起きる感情ではない
とすると、何かを知っているということは、不足を感じるきっかけとなる

昨日はメーデー
日本の労働者というより庶民は、自分たちが人間らしく生きらる社会を
他国と比べてみるというのは大事だなと思った次第


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