パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「すべての、白いものたちの」を読んで思い浮かべたこと

2025年01月26日 09時36分24秒 | 

久しぶりに小説を読んだ
年令を重ねると作り物はリアリティがなくてしんどい!
と感じる人も多いようだ(友人がそうだった)
確かにその傾向は自分でも見られるかもしれない
その代わりに読むものは現役世代ではないのでハウツウ本とか
自己啓発本ではなく、小難しい本となっている

読んだのは「すべての、白いものたちの」ハン・ガン著

手にした理由は、ノーベル賞レベルの質感を確かめたかったからで
受賞した作品とそうでない作品、その違いはどんな印象をもたらすのか?
に興味があった

この本は不思議な本で、余白が多い
一つの章は一ページちょっと(多いものでも数ページ)
つまり文字が少ない
最近の事細かな描写が多い類とは全く違う
でもそれで情報量が不足しているかと言えば、そんなことはない
余白部分は読み手の想像力にお任せ!という感じで
このような読み手の想像力に任せる方法は結構好きだ

例えばクラシック音楽も、能を楽しむのも受け手側の想像力に依存していて
作品自体は説明的ではない
このように勝手な連想が可能な作品は、説明的なのよりも個人的には好きだ

ただし、短い文で書かれたものがすべて想像力を触発するか?といえば
決してそんなことはなくて、そこにはセンスとか文章の技術が必要
なのだろうと思われる
この作者の書いたものは、その喚起力が相当なものだったので
これがノーベル賞レベルかと一人納得した

過去に読んだ本と比較するような楽しみ方は、本当は良くないかもしれないが
この本を読んでいて思い浮かべたのは西脇順三郎の詩?(禮記)だ
何か似ていると!とすぐに頭に浮かんだのだが
似ているのは短い文で構成されているということだけだ
だが想像の世界を刺激する方法は共通している
(西脇順三郎のこの本を読もうとしたのは外国人に面白いよ!
 と奨められたからなのが少し残念だが)

深い余韻のような静寂とか悲しみ
そうしたものが本全体から感じられる

だが、このような世界観(美意識)の本が現在の殺伐とした社会で
存在意義を持つことができるのだろうかという不安が頭に浮かぶ
〇〇パといわれる効率を求めたり、過剰に勝ち負けに拘る世界
法に抵触していないからと言って、平気で常識のブレーキを無視する世界
そうした世界に、これらは何らかの力を持ちえるのだろうか

それは読んだ人と読んでいない人の判断とか考え方の違いを
比較することで実質的な効果は確認されるかもしれない
何かのCMを引用して、人は読んだものから(体験したものから)できている
とするなら、人はなるべく良質な体験をすべきだと思う







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