■500系新幹線 岐阜羽島通過!
鉄道専門誌“鉄道ファン”、表紙が名鉄7000形だったので、今世紀に入り初めて購入した。前世紀では熱心な読者だったのだが、諸般の事情(予算ともいう)もあり購入を控えて久しい。
名鉄7000形については、いよいよ全車除籍が近付いているとの事で、創刊号の表紙を飾った何かの縁という、撮影記事が数ページ。特集は500系新幹線であった。積雪の京都を撮ろうにも、当日含め出先にて多忙な日々を送っていたが、名古屋駅の近鉄百貨店星野書店で購入した500系特集に触発され、途中下車にて駅からの撮影を決意した次第。
名古屋駅、京都駅、新大阪駅では停車するため良好な写真は難しく、通過駅の米原駅からの撮影を念頭に置いていたが、時間の関係上、岐阜羽島駅からの撮影を行うと、上下線の500系通過と、N700系のぼり線の通過が撮影できるということが判明した。双方とも、姫路駅撮影作戦では速すぎて良好な写真が撮影出来なかったということもありカメラに力が入る。
1110時、のぞみ号東京行きのN700系が岐阜羽島駅を通過する。岐阜羽島駅では通過時にも安全確認のため駅員さんがホームに出てきて確認を行うようで、これが通過列車の接近を知らせてくれる。また、岐阜羽島駅は直線区間上にあるため、比較的遠方から接近する様子が判る。その分通過速度は速いのだが、そこはEOS 40Dの性能と培った技量を信じる他無い。
N700系は、新幹線がトンネルへ高速進入時に生じさせる微気圧波という、爆発音のような騒音に対処するべく、遺伝的アルゴリズム方式での数万通りの設計試行の果てに生み出された先頭車の形状となった。500系では先頭車のノーズを15㍍とすることで対応したが、これでは乗客定員に響き、扉も先頭部分には設置できないことから、N700系はこうした形状を採用することでノーズを10.7㍍に抑える事が出来たと、鉄道ファン誌に説明されていた。
真横から眺めると、まあ、新幹線なんだなあ、というデザイン。しかし、真横を高速で通過する新幹線の撮影は難しい。N700系は最高速度こそ500系と同じ300km/hであるが、2500㍍勾配の通過速度は500系の250km/hに対してN700系は270km/h、加速速度も500系が毎秒最大で1.92km/h(通常は1.6km/h)に対してN700系は2.6km/h。
N700系は3分で270km/hに達するが、500系では5分程度必要となる。定員乗車時の重量は500系が702㌧に対してN700系が715㌧と、軽量化では500系が勝っているが、編成出力は500系で18240kwに対してN700系は17080kwと省エネである。ううむ、十年間の技術進歩というべきか。
1137時、京都方面から名古屋に向かう、のぞみ10号500系新幹線が長良川の鉄橋を渡り岐阜羽島に接近する。名古屋発は1147時ということで、停車時間を考えればほんの数分で名古屋に到着する。EOS 40Dに装着されたIMAGE STABILIZER300㍉望遠が唸りを上げてピント調整完了の電子音にて告げる。毎秒6.5枚の高速撮影機能が青い稲妻をたちまち捉える。
500系は更に接近。6.5枚の高速連写を続けつつ300㍉から70㍉にレンズを手早く調整する。500系は速い、本当に速い。300㍉のままでは一瞬にしてフレームから飛び出してしまうのだ、そうすれば撮影者は負けだ。寒さなどもう気にならない、突風さえ感じない、いや人間の持つ全ての感覚を麻痺させてでも目標の撮影に全力を傾注する。
750km/hで滑走路上を機動飛行する戦闘機を撮るのには慣れている。高速で複雑な機動飛行を展示する戦闘ヘリや対戦車ヘリなどもカメラに収めてきた。
新幹線は300km/hそこそこ、しかも決まった鉄路の上を走るだけの新幹線をカメラに捉えるのはそう難しいことでは、と考えられる方もいるかもしれない。
しかし、試してみると判る。戦闘機は機動飛行でも500㍍以上先を飛んでおり、ヘリもやや近い程度である。しかし、新幹線の通過は、ほんの十数㍍先を一陣の風とともに、駆け抜けるのである。エンジン音を轟々と響かせ、遠方から接近を最大望遠で追える航空機とは対照的に、低騒音技術の限りを尽くし、忍者の如く忍び寄る高速鉄道システム、その撮影は奥が深い。
1143時、ホームから500系が僅かに姿を現した。1133時に名古屋駅を発車した、のぞみ17号。500系新幹線は、一日5往復のみ、これを撮れなければ、次の博多方面への500系は1533時名古屋発。東京から博多へ、博多から東京へ、毎日ざっと2000kmを走行する500系だが撮ることの出来る時間帯は非常に少ない。
そしてN700系に置き換えられる500系は8連化され、山陽新幹線にて、こだま号となる。疾風の500系が残される時間は限られている。逆光の中を通過するべく接近する500系新幹線。その姿は航空機そのものであり、0系新幹線が陸上攻撃機銀河の系譜になるならば、戦後絶たれたに等しい最先端航空機の姿は今は鉄路の上にあるという印象か。
500系が300系の隣を通過する。270km/hの営業運転を実現した300系は、フランスの高速鉄道TGVの300km/h営業運転開始により一時は世界最速高速鉄道としての地位から転落したが、これを再び取り戻した500系。高コストにより僅か9編成に留まった500系新幹線ではあるが、日本車両史の秀逸無比な異端児として、名前を残すことだけは確かではないかと思う。
高速こそ新幹線の真髄であるのは確かだが、通過の速度は物凄く、やはり撮影は難しい。遠からず500系の東京乗り入れは終了し、N700系に置き換わるのだろうが、それまでにその素早い姿を様々な情景とともにカメラに収めたい、と考える今日この頃。一番撮りたいのは、富士山と500系新幹線なんだけど、遠いよね、富士山。
HARUNA
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