■30万アクセス突破特別企画
2月13日、相模原市では陸上自衛隊次期主力戦車となる新戦車が報道陣に一般公開されたが、同日、岐阜基地では次期哨戒機の試験飛行が行われ、確かな(?)情報をもとに展開した。ようやく撮影できたXP-1を30万アクセス突破記念記事として掲載したい。
2007年9月28日に初飛行を果たした海上自衛隊次期固定翼哨戒機。川崎重工を主契約企業として技術研究本部が開発を実施。輸入したリベットの欠陥などにより初飛行は計画よりもやや遅れたものの、2月13日には今年に入って初の飛行試験を実施した。四回目(五回目か?)の試験飛行ということで、遠からず海上自衛隊に引き渡されるものといわれている。
岐阜基地に着陸するXP-1と随伴機であるP-3C。最大の相違は双方とも四発機であるが、P-3Cがターボプロップ方式のプロペラ機であるのに対して、XP-1は四発ジェット機であるという点。実用四発ジェット機の国産開発は日本航空史上初の快挙であり、これにより海上自衛隊の航空哨戒能力は大幅に向上する。
ジェット化により、巡航高度はP-3Cの8800㍍から11000㍍となる。無人偵察機グローバルホークは高度10000㍍の位置から120km先に遊弋する水上艦を光学情報として探知することができるとされ、レーダー索敵のように逆探知されない光学機器による哨戒などでは、この高高度飛行性能は大きな威力を発揮する。対艦ミサイルの運用も可能とされるので、水上艦が搭載する最大射程の対空ミサイルをもアウトレンジして攻撃することが可能だ。
巡航速度もP-3Cの620km/hに対してXP-1は830km/h。航続距離は8000kmあり(フェリー航続距離ではなく、実用航続距離といわれる)、対艦ミサイルを運用した洋上阻止任務に用いた場合、戦闘行動半径では旧ソ連のTu-22Mバックファイアを凌駕する。実用試験が最近行われていないとの話を聞くが、航空自衛隊の超音速対艦ミサイルXASM-3が将来的に運用できれば、その能力は大きく向上する。
航空自衛隊との統合運用が強化されれば、近隣諸国で空母機動部隊を有する海軍が、わが国に対して脅威を及ぼした場合でも、低空進入能力を有するF-2支援戦闘機が敵航空母艦をミサイルにより無力化し、洋上航空作戦能力を無力化すれば、水上戦闘艦に対してXP-1が無力化任務を遂行することも可能となる。加えて経空脅威が無い状況では、GPS誘導爆弾JDAMを搭載し、イラク戦争において戦略爆撃機B-52が行ったように携帯対空火器の射程外である成層圏から近接航空支援を行うことも技術的には可能となる。
随伴機として飛行するP-3C.P-3C哨戒機の後継として導入されるXP-1は将来的にはOP-3C画像データ収集機、EP-3電子データ収集機、UP-3D電子戦訓練支援機の後継となるのだろうが、増槽を搭載して航続距離をTu-95ベアやRC-135リベットジョイント並の15000kmに伸ばし、偵察機として運用してみては、と思ったりする。E-2Cの後継機としてレーダーを搭載して早期警戒型としたり、機体後部にあるソノブイ格納部とMADまでの延長部を利用して空中給油機型を開発しては、と考えたりする。
岐阜基地上空をフライパスし、着陸のために旋回するXP-1.『平成19年度防衛予算概算要求の概要』によれば、海上自衛隊航空集団は部隊再編により固定翼哨戒機部隊は四個航空群隷下の8個航空隊を4個航空隊に再編する構想があり、XP-1の生産数は100機を揃えたP-3Cの調達数よりも縮小される計画とされる。それでも70機の調達が構想されており、性能向上を踏まえれば作戦遂行能力はむしろ向上すると考える。
XP-1は、主任務を対潜哨戒、そして洋上哨戒とするが、艦隊間のデータ中継や指揮通信支援など、陸海空自衛隊全般の共同交戦能力発揮にも用いられることとなろう。乗員はP-3Cの11名から13名に増加するとされ、これは多用途化の象徴と考えてもいいのではないか。
現在、米国では米海軍の現用P-3C後継機として次期哨戒機P-8Aの開発が行われている。ボーイング737型旅客機を母体とした機体だけに、様々な電子機器を搭載する余裕があるのだが、対潜哨戒を行う為には、低空を低速飛行する必要があり、航空を経済巡航速度で飛行する双発旅客機を流用するには技術的な問題があり、対潜能力では無人機と併用する苦肉の案を模索している。737Multimission Maritime Aircraftというだけあって、多用途性能は高いのは確かであるが、近年、西太平洋において潜水艦脅威が高まる中、このP-8の対潜哨戒機としての性能ではXP-1に劣っているように思えてならない。また、価格も早期警戒機並、もしくはそれ以上となるようで、米軍でも調達数は108機の調達を計画するに留まっており、開発費高騰から開発は大きく遅延している。
XP-1初撮影は、順光という最高の撮影環境でカメラに収めることが出来た。当日、京都は大雪、こんなんで本当に飛ぶのか、と思いきや東海地方は曇り。午後から雪となったが、XP-1が着陸に向かう瞬間に青空と日光が射してきたことは、運に感謝したい。11日には32万アクセスを突破、お昼には325405アクセスを記録していた。たくさんのアクセスに感謝したい。
HARUNA
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