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航空自衛隊空中給油輸送機KC-767J 日本到着

2008-02-20 15:18:13 | 先端軍事テクノロジー

■KC-767 岐阜基地到着

 近海練習航海部隊舞鶴出港の本日2月20日、中日新聞Web版やFlightaware.comにKC-767の岐阜到着に関する情報が出ていた為、こちらの方を撮影するべく岐阜基地に展開した。マッコーネル基地から岐阜基地にそのまま飛来したようだ。

Img_8911  航空自衛隊が始めて装備する空中給油輸送機となったKC-767,本機は戦闘機や輸送機、将来的には早期警戒管制機に対して空中給油を行い、航続距離や滞空時間の延伸延長を行うとともに、人員や物資などを貨物機と同じように輸送することが可能な航空機である。2001~2005年の中期防衛力整備計画で4機が整備され、最終的には7機程度が整備されるといわれている。

Img_8903  ボーイング社によればKC-767の空中給油能力は、遠隔空中給油操作員が遠隔視野システムによりフライングブームを操作し給油する。機内には自機用の燃料を含め91.62㌧の航空燃料を搭載でき、これはF-15Eで14機強、F-16Cで29機強の燃料を満タンにでき、追加燃料タンクを機内の貨物室に搭載すれば更に18.5㌧を搭載できる。給油速度は燃料がほぼゼロのF-15Eであっても2.34分で燃料を満タン状態にすることができる。

Img_8917  機体後部に伸びているのがフライングブーム。なお、このKC-767は空中給油輸送機と呼ばれているところから判るように元々ボーイング767-200ERを母体としただけあってパレット輸送方式で最大34.97㌧の貨物を輸送できる他、与圧された貨物室をキャビンとした場合、座席パレットを配置して192~200名の人員を輸送することが出来、緊急人道支援任務や邦人輸送任務にも用いる事が出来る。

Img_8921  航続距離は貨物4.7㌧搭載の状態で1400km、31.7㌧の貨物を搭載した場合でも9250kmの航続距離がある。貨物輸送型から人員輸送型への転換は4.3時間、これを戻すのに4.2時間。貨客混合運用も可能である。なお、KC-767は航空自衛隊のほか、イタリア空軍も採用しているが、原型機であるボーイング767は51%をアメリカが生産、日本が29%、イタリアが20%生産に参加している。

Img_8920  KC-767は本日着陸した岐阜基地に隣接する川崎重工岐阜工場で整備を受けた後、中日新聞2月19日朝刊(Web版)によれば29日頃に防衛省に引き渡される見通しとのこと。また、配備先となる小牧基地へは出来るだけ早く行われるとされ、2号機も年度内に日本へ到着する予定。運用開始は2008年度末の見通しで、岐阜基地から約60名の空中給油輸送機実用試験隊が小牧基地に派遣され運用試験を実施、その後、小牧基地に新編される部隊が運用する計画と報じている。

Img_8925  KC-767日本到着は以上。昨日の護衛艦あたご船舶衝突事故について。痛ましい事故ということで哀悼の意を表すとともに、大手マスコミによる報道の偏重には首を傾げざるを得ない。本ブログに報じているように、“あたご”は舞鶴を出港し、正月返上で訓練を行い、帰国している。

Img_8898  事故報告の遅れが海上自衛隊の危機管理云々いわれているが、“あたご”は緊急時ということで海上保安庁への通報とともに、第63護衛隊、第3護衛隊群を飛び越して船越の護衛艦隊司令部に通報しており、衝突回避失敗に問題はあるが、事後、手続き的には問題ないように思う。吉川海上幕僚長の危機管理意識もいわれているが、吉川幕僚長は98年に“はるな”艦上から第3護衛隊群司令として日本初の海上警備行動を指揮したことで知られ、判断した彼は危機管理については第一人者である。マスコミはこの事実を知っているのだろうか。状況の進展状況を把握しなければ、それこそ防衛大臣が常時中央指揮所に詰めていなければならなくなるほどの情報が集中してしまう。あと、イージスシステムのSPY-1Dレーダーと航行に用いるOPS-28C対水上レーダーの相違に関しては、事故後半日ほど触れられていない。これについては、後日、改めて詳述したい。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (8)
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