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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊岐阜基地飛行開発実験団 F-15J近代化改修形態2型の試験進む

2008-02-28 16:47:29 | 先端軍事テクノロジー

■F-15J近代化改修機

 本日も岐阜基地ではXP-1の試験飛行が行われていたようだ。しかし、岐阜基地はXP-1が最も注目されているとはいえ、明日の防衛力を担う極めて稀有な航空機が日々飛行試験を展開している。

Img_9460  MAD氏の表現を借りれば、日本のエドワーズ空軍基地というべき岐阜基地。ここに着陸するF-15J。航空自衛隊の主力要撃機として任務にあたっている機体だが、この21日はXP-1にEC-1,EH-101などの珍しい機体が次々と着陸していた為、注意力は散漫となっていた。だが、よく機体番号をみれば942号機。そして機体細部の特徴に留意すれば、これが近代化改修型F-15であることがわかる。

Img_2068  航空自衛隊では、千歳基地第2航空団201・203飛行隊、百里基地第7航空団204・305飛行隊、小松基地第6航空団303・306飛行隊、築城基地第8航空団第304飛行隊にF-15を配備し、対領空侵犯対処措置にあたるとともに、新田原基地の飛行教導隊や飛行開発実験団、第1術科学校に配備し、有事の際の日本周辺の絶対航空優勢確保にむけた技術研究、戦術開発を行っている。

Img_9464  F-15Jは常に能力を世界最高の水準に維持する為に、各種装備の近代化を続けている。航空自衛隊ではレーダーの換装、電子戦装備などを一新する近代化改修を2002年に予算承認、抜本的に改修した近代化改修形態2型を2006年に完成させている。2008年度防衛予算に32機分のF-15J近代化改修予算として1123億円を計上している。

Img_9465  空気取入口側面に涙滴型のふくらみがみえるが、これは電子戦(ECM)用アンテナで、このアンテナは垂直・水平尾翼部分にも搭載されている。レーダーはAPG-63V1に換装されるが、これに伴う改装により、将来的にはAESA(アクティヴ電子スキャンドアレイ)方式のAPG-63V3への換装が容易となる。

Img_9468  機体後部の尾翼部分に黒っぽいアンテナハウジングがよくみえる。航空自衛隊のF-15J近代化改修対象機は電子廃線などがデジタル化されたJ-MSIP機(アナログ式の配線を中心としたものは非MSIP機と呼称)で、現在101機が配備されている。近代化改修ではレーダーを改修するとともにセントラルコンピュータをIBM社製AP-1Rからロッキードマーティン社製VHSICに換装して記憶容量などを増加、飛行制御プログラムの新規装備、レーダープログラム記憶容量の四倍への強化している。最終的には、レーダー波を一切出さず、赤外線で目標を探知するIRSTの装備も計画されている。

Img_1860_1  こちらは無改造のMSIP機コックピット部分。近代化改修により、航空自衛隊のF-15はレーダーやコンピュータ換装により索敵能力が向上、ECM装置の強化により電子戦能力が向上し、部隊ごとに補完し合う共同交戦能力の向上が盛り込まれている。外観では一機あたり40億円前後必要な点は理解しにくいが、これは米軍が多段階に分けて行う改修を一度に行った為。能力的には大幅に向上している。

Img_2367  こちらは在来型のF-15J。冒頭の写真と見比べると、アンテナの有無などがよくわかる。細かく分けるとF-15は、J型の基本型であるC1/C2が98機、これにAN/ALE-45チャフフレアディスペンサーを装備したC4/C5が30機、配線のデジタル化によるJMSIP機に移行したC6が14機、J/ALQ-8電子戦アンテナを搭載したC7が12機、レーダー警戒受信機を最新のJ/APR94Aに換装しエンジンを強化したC8/C9/C10/C11が45機、エンジンをF100-IHI-100からF100-IHI-220Eに換装したC12/C13が15機、J型に後方警戒装置J/APQ-1の装備を開始したC14/C15/C16/C17が15(内DJ型が9機)機。ひとくちにF-15J/DJといってもこれだけあるわけだ。

Img_3530  F-15早期退役の可能性として最近衝撃があったニュースがある。米空軍イーグル墜落事故として航空自衛隊でも安全確認のための飛行停止がとられ、注目を浴びたが、破断部分に設計必要強度の43~81%しか厚みが確保されていなかったため、機首部分と胴体を繋ぐロンジロンに構造疲労が蓄積し、首が折れ空中分解したとのこと。1978~1984年の機体に顕著であり、米空軍や州空軍では一部F-15(A~D型)の早期退役を検討していると、事故調査委員会報告書には記されているようだ。該当時期の機体は航空自衛隊にも非MSIP機で17機在籍しており、入念な調査が必要となる。少なくとも、日本の人口密集地上空で空中分解し、墜落、という事態だけは絶対に避けなければならない。

Img_3517  航空自衛隊のF-15Jでは、近代化改修以外にも能力向上への試みが続けられている。写真(上の写真も)のF-15Jには細長いミサイルが搭載されているが、これは新型の先進短射程ミサイルAAM-5で、運用試験が行われている。これは極めて高い機動性を有する空対空ミサイルで、高機動回避能力を有する航空機にも追尾する能力があり、航空戦闘を有利に進めることが可能だ。

Img_7394  写真はアクティヴレーダー追尾方式の99式空対空中射程誘導弾、AAM-4で対航空機能力を高めるとともに、巡航ミサイルなどを筆頭とするミサイル迎撃能力にも重点が置かれている。海外の資料にも50~60km(一説には70km)の射程があるとされ、定期整備の際に近代化改修とは別に運用能力を付与する改装が行われている。

 次期主力戦闘機として筆頭に挙げられるF-22の導入が難航し、ロシア空軍では新型のステルス戦闘機実証型が本年中にも飛行すると目される中、航空自衛隊は主力戦闘機であるF-15の能力を最大限に発揮できるよう、余念無き努力が続けられている。

HARUNA

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